ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.27

社本真里の隔週日記: また春が来た

2023年2月23日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 今年も会社の庭に、福寿草が咲いた。今年も咲いたねーと話題に上がるのは、春が来た合図で、この頃から森の木々たちは水を少しずつ吸い始める。

コンクリート隙間から顔を出していた福寿草。春を待ち望んでいたのかも。

 林業は季節(木々)の移ろいに合わせて仕事の内容が変わるのも大きな特徴で、私が担当する山の素材を販売の仕事(伐採現場から出た丸太を建築に使う板や柱、家具や日用品、ディスプレイとして加工したものを販売する)も季節に大きく左右される。水を吸う時期(3月~9月)の木々は、重たく、また水分量が多いのでカビも生えやすいので、材料として使用するには良いとされていない。

 この時期になる前になるべく材をストックしたり、お客さんの要望を予め把握しておく必要がある。季節や自然の様子を伺いながら働く(過ごす)日々は、集落で過ごす時間と同じ感覚がある。

小屋横の道。先週雪が降ったとは思えない。南斜面なので晴れていれば雪が溶けるのはあっという間。

 この記事でも書いたが、集落で暮らしていると木々が水を吸い上げる時期は、沢水をひいている小屋の蛇口から水が出てこなくなることや、おばあちゃんが腰を丸めながら、背負子に「もったいねえ」と言って小枝をたくさん集める風景は、林業と重なる。山との関係性が近い暮らしを経験したことが、仕事へのモチベーションにつながっているんだろうなーと思う。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり | 1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。