TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#3】沖縄食だより アメリカ由来

執筆:アンダーソン夏代

2026年7月26日

沖縄には、今も食文化に影響を及ぼす複雑な歴史があります。特に第二次世界大戦後の沖縄は、約27年もの間、アメリカの占領・統治下となりました。その時代に根付いた食文化は、今も沖縄の日常に息づいています。

まず、チャンプルーといった炒め物の家庭料理に、内地ではスパムの名前で知られているアメリカ版の「謎肉」と言いたくなる缶詰肉、ランチョンミートをよく使います。沖縄での消費量は、世界有数ともいわれています。
現在主流となっているのは、オリジナルであるアメリカ・ホーメル社の「スパム」ではなく、デンマーク・チューリップ社製のランチョンミート。塩分控えめで価格も手頃なことから広く親しまれ、沖縄では「ポーク」と呼ばれています。

ランチョンミート売り場 スパムの取り扱いはほんの少しだけ

沖縄の食堂に行くと、たくさんのメニューの中に味噌汁の文字を見かけます。値段を見ると900円前後するので「高くないか?」となりますが、これは、内地で一般的な小さなお椀の味噌汁ではなく、どんぶりサイズの具だくさん味噌汁にご飯が付いてくる定食メニューです。落とし卵が入っていることが多く、大振りに崩し入れた島豆腐なども相まってたんぱく質もしっかり摂れるので私は大好きなのですが、これにもランチョンミートが入っています。もう県民にとっては切っても切り離せない食材だと言えるでしょう。

味噌汁は丼で登場し、ごはんはデフォルトで付いてきます

そして、アイスティーとクリームスープ。 この2つもアメリカの影響で、昔ながらの食堂やステーキレストランに残っています。沖縄の飲み物と聞くと、真っ先に中国由来のさんぴん茶を思い浮かべるかと思いますが、通年アイスティーも好まれます。最初に沖縄に移住した2000年頃には、食堂や町中華のお店に行くと、セルフで無糖のアイスティーが普通に置いてありました。最近では見かけることが少なくなりましたが、 先日行った地元民から愛される食堂では、サービスの飲み物としてテーブル備え付けのアイスティーがあり、懐かしく思いながら美味しくいただきました。

グラニュー糖を入れてスプーンでよくかき混ぜるスタイル

愛されすぎて、スーパーではパック入りも売っています

クリームスープは、しばしば旅行者から「何だか分からないけど美味しいスープ」と呼ばれています。これは、刻んだ玉ねぎと水煮のマッシュルーム、小麦粉をバターで炒めて、チキンストックと牛乳で伸ばしたマッシュルームスープです。アメリカ・キャンベル社の濃縮缶スープCream of Mushroomが元になっているようで、アメリカではキャセロールというグラタンのようなオーブン料理にもよく使われます。
沖縄らしいのは、このスープのコク出しにツナ缶を使うお店があることです。このツナ缶もアメリカの影響で、保存も効く上にそうめんチャンプルーなどに使うので、各ご家庭には大量にストックされています。スープだけ飲んでみたい場合は、恩納村にあるシーサイドドライブインの持ち帰りカウンターを利用するのがお勧めです。

コーンスープなどもありますが、マッシュルームスープの遭遇率高め

皆さん普通に箱買いします

デザートも同様です。パイ類は何層にも折り込むフランス風ではなく、アメリカスタイルの練りパイがスタンダード。角煮まんの割包(グアバオ)のような形のハンドパイも一般的で、専門店もありますし、スーパーのパン・焼き菓子コーナーや道の駅でもよく見かけます。クラストは完全なるアメリカスタイルではなく、生地にベーキングパウダーが入っているのか焼きたてのものはサックリした食感です。
フィリングは、これまたアメリカの影響でリンゴを使うことが一番多く、地元の素材を生かした田芋を使ったターンムパイや紅イモパイも知られています。

沖縄県民が大好きなJimmy’s のアップルパイ 1日2回焼き立てが店頭に並びます

気軽に食べれるハンドパイ

と、このように現在の沖縄の料理にはアメリカの影響が色濃くあります。時代の変化や異文化を柔軟に受け入れ、自分たちの暮らしへと昇華してきた沖縄の人々。そのたくましさには、尊敬の念を抱かずにはいられません。だからこそ、私の沖縄愛は、これからも尽きることはないでしょう。

プロフィール

アンダーソン夏代

あんだーそん・なつよ|1974年、福岡県福岡市生まれ。アメリカ南部料理研究家。ノースキャロライナ州出身の夫との結婚を機にアメリカ南部料理に興味を持ち、研究を始める。20年間のアメリカ暮らしを終えて現在は沖縄在住。
著書に『アメリカ南部の家庭料理 』、『アメリカン・アペタイザー』(ともにアノニマスタジオ/グルマン世界料理本大賞準グランプリ) 、『アメリカ南部の野菜料理 』 (誠文堂新光社/グルマン世界料理本大賞グランプリ)がある。最新刊は初のエッセイ『アメリカ南部の台所から』(アノニマスタジオ)

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