カルチャー

不安な新生活を勇気づけてくれる3冊。

4月はこんな本を読もうかな。

2025年4月1日

text: Keisuke Kagiwada

『ジャン゠リュック・ゴダール 思考するイメージ、行動するイメージ』
ニコル・ブルネーズ(著)、堀潤之、須藤健太郎(訳)

著者のニコル・ブルネーズは、フランスの映画研究者であり、2022年に亡くなった映画の巨星ゴダールの最晩年の協力者の一人。そんな彼女によるゴダールをめぐるテクスト集なのだが、なんといっても注目すべきは、ゴダールから送られてきた電子メールが収録されていること。社会人として真似すべきところはひとつもないが、言葉遊びを多用した本文、添付される画像、さらには件名まで巻き込んで、ゴダール的な宇宙を形作らんとする姿勢には感動するっきゃない。やっぱりゴダールはゴダールであった。メールを書く(描く)ときですらも。¥3,960/フィルムアート社

『映画の隔たり』
ジャック・ランシエール(著)、堀潤之(訳)

現代フランスの哲学者ジャック・ランシエールによる映画論集。かなり手強い一冊ではある。しかし、彼が普通に映画好きであることは、取り上げられる映画監督を見れば明らかで、そこに別に映画好きでもない哲学者が用語説明のために書いた映画論との違いがある。ヒッチコック、ブレッソン、ロッセリーニ、ペドロ・コスタ……。とりわけ、ハリウッドミュージカルの巨匠ヴィンセント・ミネリ論には我が意をえたり。「世界は舞台、舞台はエンターテイメントの世界」という「ザッツ・エンタテイメント」の歌詞から解き明かされるのは、「芸術と娯楽」をはじめ、何かと何かを分けること、あるいはその結合部分を示すことをしない、ミネリ的な方法論。それを念頭に置きつつ、「車が渋滞し現実が停止しないとミュージカルの世界に入れない『ラ・ラ・ランド』ってどうだったの?」と考えてみるのもいいかもね。¥3,740/青土社

『立岩真也を読む』
稲葉振一郎、岸政彦、小泉義之(著)

2023年に亡くなった立岩真也は、生存学や障害学を通して、「生きる意味と何か?」を問い続けた社会学者だ。こちらは、生前の彼を知る3人の学者たちが、改めて立岩の真価を問い直す論考集。興味深いのは、立岩が絶対に解けないタイプの問いを前にすると、エモくなるという指摘。それは彼の弱さであり、倫理なのかもしれない。しかし、エモくなることを辞さずに、難題と格闘するその姿勢には、学ぶべきことが多いはず。¥2,420/青土社