カルチャー

「君たちはどう生きるか?」と問われがちな今こそ読みたい3冊。

3月はこんな本を読もうかな。

2025年3月1日

text: Keisuke Kagiwada

『虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ』
ティム・オブライエン(著)、村上春樹(訳)

2019年、J.C.ペニーの店長ボイド(もとはジャーナリストだったが、ひょんなことからフェイクニュースのでっちあげ屋へと転落した)は、銀行強盗を働き、窓口係の女性を誘拐した上で、逃避行の旅に出る。ティム・オブライエン、20年ぶりにして最後とも言われる長編小説はそのようにして幕を開け、やがて多種多様な人物を巻き込みながら、アメリカを巣食う“虚言症”をめぐる悲喜劇へとドライブしていく。トランプ2.0時代に読むべき一冊。ハーパーコリンズ・ジャパン/¥3,630

『テクノ封建制 デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する
とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。』
ヤニス・バルファキス(著)、関美和(訳)、斎藤幸平 (解説)

資本主義はもう死んでいる。ケンシローのごとくそう宣言する著者はしかし、明るい未来を寿ぐわけではない。資本自体、「クラウド資本」の暴走が死因であり、結果として到来したのもビックテックが牛耳る「テクノ封建制」なんだから。そんな今そこにある危機の中で、「農奴」の役割を押し付けられた僕らは、いかにして自立と自由を取り戻すのか。もはやイーロン・マスクの奇行を笑ってばかりいられなくなった時代のハードコアな処方箋。集英社/¥1,980

『翻訳者の全技術』
山形浩生(著)

ウィリアム・バロウズという変人小説家の翻訳者としてキャリアをスタートさせた人が、なぜ開発援助コンサルタントというめちゃくちゃ真っ当な本職を持っているのか。ずっと謎だったが、翻訳の技術論というよりは、著者の自伝に近い本書を読んでようやくわかった。キーワードは専門家ではなく、知的好奇心旺盛なジェネラリストであること。こんな生き方があったのか! 星海社/¥1,430