カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.50

大型三葉虫

2025年8月3日

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机の上のサイエンス。


photo: Akira Yamaguchi
text&edit: Shogo Kawabata 
2025年8月 940号初出

大型で棘だらけの
「三葉虫の王様」。

Scabrellana aff. pradoana。デボン紀前期・プラギアン期の化石で、モロッコのイハンダル層ジェベル・イシムーアから産出した。世界的な三葉虫コレクションの立松コレクションより。

 写真のScabrellana aff. pradoanaの化石は、デボン紀前期(約4億年前)に現在のモロッコ・イシムーア山地周辺で採集された三葉虫である。全長20㎝を超えることもある驚くほどの大型種で、その最大の特徴は、体表全体に無数の鋭い棘を持つことにある。このような棘は、捕食者から身を守る防御機構として進化したと考えられている。その姿は「ヤマアラシのような三葉虫」とも称される。人間の足ほどもあるサイズ感に、トゲだらけという独特の外見から人気も高く、コレクターや研究者の間でも注目されているが、ニセモノや複数の個体を一つに寄せ集めたものが多く、状態の良い化石がほとんどない。この化石は世界でも数体しか見つかっていない、ほぼ完全な状態のものだ。化石を掘り出す際に割ってできる亀裂の修正も全体の5%以内におさまっており、小さな棘の一部がわずかに修復されているのみだ。サイズも22㎝を超える大型の個体である。まさに三葉虫の王様のような標本だ。