ライフスタイル

私のいえは、東京 山のうえ Vol.31

社本真里の隔週日記: お稽古に通う

2023年5月1日

photo & text: Mari Shamoto
edit: Masaru Tatsuki

 日中は半袖でも過ごせるくらい暖かいけど、油断して薄着で出かけてしまうととても後悔する。この時期は、調整ができるようにベストやダウン、パーカーなどいろんな上着が車に入っている。

 4年程前から、月に3回、週末の午後は隣町にあるお茶室へ茶道のお稽古に通っている。小屋からは車で50分くらい。元々ジローさんが長く通っていたところに、興味があると言って連れて行ってもらったことがきっかけだ。道具もお古を譲ってもらったり、着物だけでなく平服でも参加できるので、気軽にはじめることができた。

5月に入ると花点前(はなてまえ)といって、お茶を入れる前に、お花を生ける。
この日だけは床の間に生徒さんの数分のたくさんのお花が並ぶ。

 10名くらいの生徒さんがいて、当時は私が最年少。4.5畳間と8畳間の2つの部屋があって、そのどちらかでお点前の練習をする。素朴なお茶室には、お茶、お菓子、お道具、お花、お軸という要素があって、どれも毎週違うしつらえになっている。そのベースにあるのが季節で、お菓子はその時に採れる食材を使っていたり、山に咲いている山野草が床の間に生けられていたり。冬の寒い時期は、お釜の湯気みると暖かい気持ちになるし、夏は水をお釜に戻すポタポタという音が涼しげに感じられることにも驚いた。

 普段バタバタしているけど、お茶の時間だけは、季節や景色をたのしむ時間になっている。茶道は日々の暮らしのちょっとした発見や小さな感動みたいなものを、おもてなしとしている。身の回りのものをいかしながら暮らす山の暮らしと、通づるところがあるなーといつも感じている。

檜原で多くみれられるヤマブキ。お茶室では「今の時期檜原ではヤマブキが満開ですよー」なんて話をしたりする。

プロフィール

社本真里

しゃもと・まり |  1990年代生まれ、愛知県出身。土木業を営む両親・祖父母のもとに生まれる。名古屋芸術大学卒業後、都内の木造の注文住宅を中心とした設計事務所に勤め、たまたま檜原村の案件担当になったことがきっかけで、翌年に移住。2018年に、山の上に小さな木の家を建てて住んでいる。現在は村内の林業会社に勤め、山の素材の販売や街と森をつなぐきっかけづくりに奮闘している。