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遠ざけるほど怖くなる。 だから、いざ懐へダイブ!

大井洋一/あの人の失敗と教訓

2026年9月12日

これが僕の仕事。


illustration: Minoru Tanibata
text: Shun Koda
2026年9月 953号初出

仕事と失敗は二人三脚。転んだあとに、どう飛び起きるかが大切だ。あの先輩は、失敗をいかにして次へ生かしているんだろう。放送作家の大井洋一さんに話を聞いた。

 数多くの人気番組を手掛ける、売れっ子作家の大井さん。失敗する姿なんて、これっぽっちも想像できないけど、果たして、そんなことがあるのだろうか。

「基本、間に合わない系が多いですね。締め切りに遅れても、催促が来るまではいいだろうって放っておく。電話も1回出ない、2回出ない。そうすると3回目はもっと出にくくなる。最初に謝っておけばよかったのに、もうバックレるしかないじゃん、みたいな(笑)。それで死ぬほど怒られたことはあります」

 若い頃は仕事を抱えすぎ、自分のキャパシティも優先順位も把握できていなかった。

「フリーランスだから、来る仕事は全部欲しかったんです。お笑い以外の仕事も受けていると、いざ本当にやりたい仕事が入ったとき、そこに注ぐ時間がない。締め切りにも間に合わないし、クオリティも下がる。『もっと向き合えたらよかった』って反省する、その繰り返しでした。作家のオークラさんに、『仕事は才能より、どれだけ時間を尽くしたかが作品に表れる』って言われて。時間のバッファがないと、大事な仕事に打ち込めない。でも僕は気が小さいから仕事を捨てきれず、未だにパンパンなんですけどね(笑)」

 若手時代には、会議で発言できないという壁もあった。

「とんちんかんなことを言って、『大井ってピントがズレていて、面白くないよね』と思われるのが怖かった。でも今は、アイデアを出してもらえるほうがありがたいってわかるんです。せっかく呼んでもらったのに、黙って帰ったら、いなくてもいい人になってしまう。そこで、とにかく発言することを目標に、会議での働きを自分なりに点数化したんです。ネタが採用されたら10点。自分の案をきっかけに企画が成立したら5点。誰かの案に意見して、それが採用されたら3点、みたいな感じで。若いときって、一撃で決めてやろうと思うんですよ。そのほうが、かっこいいし。でも会議って、『こんなのは?』『じゃあ、こっちは?』と積み上げていくもの。最初の一言を発すれば、二言目、三言目はどんどん言いやすくなる。自分の案が通らなくても、別のところでリカバリーしようと、前のめりに参加できるようになりました」

 そして、締め切りを守らず、「もう来なくていい」と言われた経験から得た教訓がある。

「ヘマしたときは、相手が思っている一個先まで飛び込む。ヤバいと思ったら、行くしかないんです。一度、演出家さんの元へ丸ボウズにして収録現場まで直接謝りに行ったこともあります。100%悪いのは自分ですから。メールや電話じゃなく、もう行くしかない。相手も『ここまで来たの?』って驚く。まずければまずいほど、飛び込んだほうが意外となんとかなる。今でもずっとそう思っています」

 この“飛び込む”という姿勢は、失敗したときだけではない。仕事で苦手な相手や、周囲から恐れられている人にも、あえて懐へ飛び込んでいくという戦法にも応用できる。そう、まさしくインファイト!

「腫れ物みたいに扱われている人っているじゃないですか。僕はもう、友達みたいに話します。『あれ見ましたよ!』『あれ、なんなんすか!』って。こっちがディフェンスばかりしていると、向こうもずっと攻めてくるから手を出す隙を与えないんです。飛び込まれることに慣れていない人は、びっくりするんですよ。失敗も苦手な相手も、遠ざけるほど恐怖心がどんどん大きくなっていく。だから、結局は自分から行くしかないんですよね。ヘマしたときは、相手の想像する一歩先まで飛び込む。驚かせるっていうのが、結構大事なんだと思います」

プロフィール

大井洋一

おおい・よういち|放送作家、総合格闘家。1977年、東京都生まれ。TBS『水曜日のダウンタウン』や、ABEMA『チャンスの時間』など数多くの人気バラエティ番組を手掛ける。

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