TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】ブルーベリーワイン探しの旅

執筆:松本アタル(ハシリコミーズ)

2026年8月18日

松本アタル


text & illustration: Ataru Matsumoto
edit: Nozomi Hasegawa

僕はお酒が飲めないし、好きでもない。頭の中にスライとジョー・ストラマーが住んでいる僕は、盛り上がるライブをしても二人の存在を意識してしまって打ち上げをする気にもなれない。そんな僕にも初めて飲んでみたいお酒ができた。それがブルーベリーワインだ。

バネットには今では珍しいCDプレーヤーが搭載されていて、僕はその喜びからブックオフのCDをとにかく買い漁った。CDを入れるための可愛いカゴまで買った。車内でCDを聴くために、いきなり友達を迎えに行こうとして断られて落ち込んだりもした。50枚近く買ったアルバムの中に佐野元春の「Sweet 16」があり、8曲目の「ボヘミアン・グレイブヤード」という曲はそれからの日々に大きな影響を与えた。

初めて聴いた時はうまく理解できなかったけれど、何度も聴きたくなって、気がついたときにはとても好きな曲になっていた。本当に好きになるものはいつもこういう出会い方をする。僕の好きな食べ物ランキング第1位に長年輝き続ける”冷麺” との出会いもそうだった。

この曲を初めて聴いたとき、風景画を描く人の姿が頭に浮かんだ。必要な色を足していくように、すごく軽やかにたまにはみ出しながら奏でられるメロディーは、僕が音楽に対して何を求めていて、何に惹かれているのか、メジャーセブンスに片想いしている僕をビンタしてくれた。ブレイクの利いたサビには「冷たいブルーベリーワイン」という歌詞が出てくる。こうしてパンチドランクのように山梨シャトレーゼ・ベルフォーゼ・ワイナリーへと続くブルーベリーワイン探しの旅が始まった。

助手席で居眠りしてたら目的地に着いているときのように、こっちの準備ができていれば勝手に物事が進んでいくこともある。肝心なブルーベリーワインを飲んだところで正直大きな感動はなかったけれど、道中の緑だらけの無駄な時間の中で、新しい曲のアイデアが浮かぶようなこともある。こんな毎日の中で、打ち上げでお互いをそれなりに褒めあう時間の意味を僕はまだ見出せない。

プロフィール

松本アタル

まつもと・あたる|2001年、東京都生まれ。’19年よりバンド「ハシリコミーズ」として活動。楽曲制作からアートワークのディレクションまで、セルフプロデュースで行なっている。8月9日より全国5か所を巡るツアー「Is it Music? Tour」を開催。

Instagram
https://www.instagram.com/europeansexy

Official Website
https://www.hasirikomis.com