VIOLET初の長編ビデオのプレミアに潜入!監督のウィリアム・ストロベックにも話を聞いたよ。
STREET SNAP & INTERVIEW AT SQUEAKY PREMIERE
2026年7月24日
photo: Takeshi Matsumi
text: Shimpei Nakagawa
special thanks: Kunichi Nomura
「今週、〈VIOLET〉の長編ビデオのプレミアがニューヨークである。取材したらいいんじゃない?ビルに連絡しておくよ」。5月の暮れ、野村訓市先輩から『ポパイ』編集部にそんな連絡が入った。
ビルというのは通称で本名はウィリアム・ストロベック。スケートビデオを業界の枠を超えて広く知らしめた作品として語られるブランド初のフルレングス・スケートビデオ『cherry(2014)』から『BLESSED(2018)』、『Play Dead(2022)』、『HEADBANGER(2026)』まで、〈Supreme〉のスケートビデオを手がけてきた映像作家だ。彼の作品で取り上げられて、スターダムを駆け上がったキッズは数え切れない。
そんな現代スケートカルチャーを代表するフィルマーの彼が、2021年に創設したスケートブランド〈VIOLET〉の初の長編ビデオということで、そりゃ行かない手はない。
会場はイーストビレッジにあるビレッジ・イースト・シネマ。到着すると「VIOLET PRESENTS “SQUEAKY”」と書かれたムービー・マーキーの下には、まだかまだかと開場を待つローカルスケーターたちの長い列ができていた。
440席ほどの劇場は満席で、通路に座り見の人たちがいるほどの盛況ぶり。上映前にはビルとチームライダーが登壇し、場内の熱気は最高潮。かと思いきや、上映が始まるとそれまで威勢のいい観客たちが静まり返り、スクリーンに映るライダーたちの一挙手一投足を食い入るように見つめ、トリックが決まるたびに大歓声。何度体験しても、このエネルギーと連帯感は、スケートビデオのプレミアでしか味わえないような気がする。
作品はここで観てもらうとして、上映を終え、ようやく肩の力を抜くことができたビルに少しだけ時間をもらい、3年間の制作を振り返ってもらった。
来場者のスナップも一緒にどうぞ。
――まず、今回は〈VIOLET〉初の長編ということで、制作期間について教えてください。
このビデオには3年くらいかかったよ。ずっと作業していたわけじゃなくて、断続的に進めてたんだ。チームライダーたちもそれぞれ別の仕事や予定もあるし、自分にも仕事がある。同じ場所に同じタイミングで集まれるとは限らない。だから、全員の準備が整ったと感じるまで、ひたすら待ったんだ。でも、その間もチームのみんなは撮影を続けていたし、それぞれの場所で映像を集めていた。いろんなタイミングがあったけど、最終的な作品はすごく自然なものになったと思う。締め切りに追われるような雰囲気じゃなくて、それぞれが「滑りたい」と思ったときに撮っていたからね。だから、その空気感というか、本来の姿がそのまま作品に出た気がする。こんなふうにチーム全体を見せる作品は今まで作ったことがなかったからね。
――まさに待望のビデオですね。
「もうすぐ出るって言ってたじゃん」って言われることもたくさんあったよ(笑)。でも俺のもうすぐは、1年後に出ることだってある(笑)。今はすごくプレッシャーがあるんだ。みんなが作品を待っていることもわかっているし、「良いものを作らなきゃ」というプレッシャーを自分自身にもすごくかけている。それに、これまで本当にたくさんのビデオを作ってきたからね。毎日のように映像コンテンツが世の中に出てくる時代だから、その状況の中で新しい作品を作るのは以前よりずっと難しくなっている。だからこそ、今回の仕上がりには満足しているし、この作品はこの時代、この瞬間をしっかり刻んだ作品になったと思っている。
――撮影で訪れた都市について教えてください。
パリが少しあって、ロサンゼルス、マイアミ、フィラデルフィア、それからニューヨークかな。いろんな場所で、みんながワクワクしながら一緒に過ごしている様子が映っているから。そういう映像って、どこで撮られていても関係ないんだよ。その場にいる人たちの楽しさや幸福感が伝わってくる。作品を見れば、その空気が感じられると思う。
LEFT/Lele Saveri(8-Ball Communityファウンダー)
RIGHT/Todd Jordan(Supreme)
――最も記憶に残っている撮影はどこですか?
俺にとっては、この作品全体がひとつの芸術作品んだ。だから、「ここが一番好き」というより、作品全体が好きなんだよ。ビデオを作るとき、最初から最後まで通して見てほしいと思っている。全体の流れがあるからね。映像のリズムや展開が、観る人の感情を上げたり下げたり、いろんな方向へ連れていってくれる。作品全体がすごく心地いいんだ。いろんな音楽があって、それぞれ違った個性を持ったスケーターがいて、見た目も雰囲気も違う。でも編集やカラーグレーディングの仕方のおかげで、一本の映画みたいにまとまって見える。何かを無理に演出した感じがまったくない。ただ自然で、とても気持ちがいい。これまで作ってきた作品の中でも、一番好きな作品の一つだよ。 しいて挙げるなら、ケイダーのラストパートは特別だと思う。あの最後のパートまでたどり着くと、もう一本の映画を見終えたような感覚になるんだ。なんでなのか自分でもうまく説明できないんだけど、音楽と映像の中で起きる出来事が本当にぴったり合っているんだ。見ていると、映像の中へ吸い込まれていくような感覚になる。
Kader Sylla(VIOLETライダー)
――ビルのビデオは、単なるスケートビデオではなく、都市の記録という印象を受けます。路上でのハプニングを収めていたり、通りかかる歩行者をフレームに入れたり、話しかけたり。どのようなことを意識していますか?
俺はただ、観る人が俺らと一緒に街で過ごしているような感覚をそのまま映像に残したいんだ。そもそも俺がスケートを始めた理由の一つも、「みんなと一緒に過ごすこと」だったから。スケートを始めた頃は、そういう何気ない瞬間はあまり撮っていなかった。他のスケートビデオを見て、「トリックを撮る、また次のトリックを撮る」という感じだったんだけど、気づけばトリックそのものを撮ることよりも、その周りにあるものを撮ることのほうが好きになっていた。自分たちの空気感や、その場にあるものすべてを記録しているんだよ。もちろん、いいトリックが撮れれば最高だ。でも、それ以上に大切なのは、この人たちがどんな人なのか、どんな表情をしているのか、普段どんなふうに過ごしているのか。そういうものなんだ。だからできるだけ多くの瞬間を記録したいと思っている。
LEFT/Alex Corporan(元Supremeストアマネージャー)
LEFT/Matt Jackson(プロダクションデザイン)
MIDDLE/Quinn Batley(フォトグラファー)
RIGHT/Peter Sutherland(フォトグラファー)
――2023年のPOPEYEのスケートボード特集で話を聞いたときは、「〈Violet〉は面白いキッズたちと出会ってスタートし、いつも若い奴らが面白いと思う」と話していました。今回のビデオで新しく出会った面白いキッズはいますか?
ジャックスや ルーカスかな。とにかく彼らは本当にクールで、一緒にいると楽しいんだ。そのエネルギーが、みんなと一緒にいる時にすごく伝ってくる。チームのみんなも、彼らがいると一緒に遊びたがるんだよ。まだ小さい子供みたいな感じでさ(笑)。でも、みんなをいじったり、冗談を言ったりして、周りはいつも笑っている。そういう良い雰囲気って映像にもそのまま伝わるんだ。俺は「この人は本当に魅力がある」と思える人たちに出会ったとき、「もっと多くの人に知ってほしい」と思うんだ。だから、その人たちと一緒に作品を作る。みんなに映画の俳優になったような感覚を味わってほしい。それぞれが自分自身の物語を持ちながら、同時にチームとして互いを支え合える。そういうものを作りたいんだ。
LEFT/Jax Effs(VIOLETライダー)
RIGHT/Lucas Desmarescaux((VIOLETライダー)
――これまでビルが手がけた作品に比べて、さまざまな曲調、ジャンルの曲がミックスされている印象でした。理由はありますか? また、編集作業をしながらどのように曲を決めていくのでしょうか。
映像を見ながら、それぞれがどういう人物なのかを考えるんだ。それで、ある曲に合わせて一度編集してみる。「うーん、これが本当に正解の曲かな?」と思いながらも、とりあえずその曲で形を作る。その後、その曲を外して別の曲を入れてみる。すると、もう編集の流れ自体はできているから、こっちの雰囲気の方がいいかもしれないと判断できる。それにみんな、自分が好きな音楽を普段から送ってくれるから、それに近い雰囲気や、同じ世界観の別の曲を探してみようとなったり。そういう積み重ねだね。これまで作ってきたすべてのビデオの音楽は、自分が本当に好きなものばかりだよ。「これはこの場所にあるべき曲だ」って思えるものを選んできた。でも今回の作品では特に、音楽を完璧にハメたいという気持ちが強かった。それぞれのパートがちゃんと気持ちよく感じられるものにしたかったんだ。目を閉じて音楽だけを聴いたとしても、それが好きだと思えるようにね。少しアンダーグラウンドな方向にも寄せてみたり、でも最後のケイダーのパートでもっと広く知られている曲も入れてみたり、音楽で何か違うことをやりたかったんだ。
Kris Brown(VIOLETライダー)
Troy Gipson(VIOLETライダー)とご両親
――日本はストリートスケートがしづらい環境なので、夜の撮影がほとんどです。一方でこのビデオはすべてデイライトでの撮影でした。特にエフロンのパートは、逆光が美しかったです。日中の撮影で気にかけていることはありますか?
もちろん光のことは考えるよ。外が明るすぎると、太陽が当たっている場所は映像が白く飛んでしまう。でもゴールデンアワー(夕暮れ前後の光)は本当に美しい時間だと思う。カラーグレーディングすると、まるで映画みたいに見える。エフロンのあのショットも、たまたまゴールデンアワーの少し前くらいの時間だった。夕陽が彼女の後ろにあって、僕はただ何回かカメラに向かって歩いてもらった。あとは自分の感覚で撮っただけ。あのショットは本当に大好きなんだ。夜の撮影もすごく楽しいんだけど、ただ難しいのは、夜にスケートしようと誘うことなんだ。他の場所なら、夜は特に予定もないし、外に出ようとなるかもしれない。でもニューヨークではそう簡単じゃない。夜に滑るには、みんなの“強い意志”が必要なんだ。わかるだろ?
2ND FROM THE RIGHT/Efron Danzig
LEFT/Razy Faouri(フォトグラファー)
RIGHT/Seven Strong(VIOLETライダー)
――この記事を読んでいるのは、スケーター以外も多いはず。そんな人たちには、この作品をどのように楽しんでもらいたいですか?
もちろん、これはスケートビデオだから、本来の目的は、若い子たちに「スケートしたい」と思わせたり、刺激を与えることでもあるんだけど、スケーターじゃない人でも、まずは映像として楽しめると思う。この作品に出ている人たちは、みんな本当に個性的だと思うし、自然と目が離せなくなる。プレミアにも、スケートをしない人がたくさん来てくれている。出ている人たちが本当に魅力的だから、たとえば「この人は何を着ているんだろう」とか、「この瞬間に何が起きているんだろう」とか、そういうところにも興味を持って見てもらえると思うよ。
LEFT/Cléo Le-Tan (Pillow Cat Books)
RIGHT/Olympia Le-Tan (Olympia Le-Tan)
LEFT/Manon Macasaet(アーティスト)
2ND FROM THE LEFT/Sabrina Fuentes (Pretty Sick)
RIGHT/Lucas Bin (スケーター)
LEFT/David “Shadi” Perez (ディレクター・フォトグラファー)
RIGHT/Theophilos Constantinou(Psyche ファウンダー)
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