ファッション
まだまだ知られていない日本のスモールブランドの話。/NAHYAT
2026年3月29日
受注生産という土壌から育まれる、糸の情緒、服と人との親密な距離。
「糸を嗜む」。これは〈ナヤット〉のデザイナーである依田聖彦さんが、自身のブランドコンセプトを凝縮して表現したフレーズである。どうやら「嗜む」という言葉には、繊細なニュアンスが織り込まれているような気がする。消費するだけではなく、自分なりの距離感と愛着をもって対象に接しているような……。
「嗜む、という言葉には寛容さが含まれているように思います。品質の良い悪いや利便性でモノを判断するのではなくて、言葉にしきれない情緒とか、固有性を面白がる態度を大切にしたいです」
そんな言葉のとおり、依田さんは、糸の個性がありありと伝わってくるような編み地や加工の選定に時間をかける。
「遠くから見て、他とは明らかに違うようなダイナミックなデザイン性よりも、服との親密な距離のなかで捉えられる物質性にこだわっています。糸が生きていると感じられるような状態にするために、試作はたくさんしています」
こうして、時間をかけたものづくりを可能にしているのが、受注生産という方法。卸売りをせず、年に1回、全国で開催するオーダー会で注文を受ける。注文後、到着までにかかるのは約半年。そうして待つ時間も、体験になる。
「土壌を変えると、育つものも変わる。この方法なら、時間のかかるものもじっくりと作れます。まずは原価率や製作にかかる時間などを取っ払ってみてものづくりをしてみたかった。それと僕自身、煽られながら買い物をするのが苦手で。焦らず、自問自答しながら選べる場所があれば、と思ってきました」
依田さんは、そもそも学生時代にはファッションに興味を持っていなかった。けれど、たまたま開いた学校案内で、フィレンツェにサッカーを観に行こうと貯金していた金額と文化服装学院の入学金が同じだったことに運命を感じ、入学。
「そこで、無印良品のアートディレクションをしていたグラフィックデザイナー、原研哉さんの本に出合いました。デザインは身の回りのあらゆるものに介入していて、デザインがないところがない、ということに嬉しくなったんです」
小説家・群ようこのエッセイ『鞄に本だけつめこんで』と3人の社会学者による共著『質的社会調査の方法』は依田さんが何度も読み込んだ本。書き手や、その学問が積み上げてきた社会への「態度」を読書を通じ血肉にしていく。
その後、〈ヨウジヤマモト〉の面接では、依田さんなりのデザイン観を話す。採用されたのはニットとカットソーの部門。企画、パターン、生産をひとりで行うことで一連の経験を積んだ。
「デザインは、態度の表明。どういう態度で世界と接するかを具現化していくことだと現時点では思っています」
インフォメーション
NAHYAT
年に1回、オーダーを受け付けて生産する受注生産。卸売りではなく、ブランド自らユーザーに届けるかたちで運営する。次回は東京で3月6日にスタート。その後、大阪、愛知、福岡などで開催。期間中は誰でも入場可能。
Official Website
https://www.nahyat.com
プロフィール
依田聖彦
よだ・まさひこ|1988年、群馬県生まれ。工業高校を経て、文化服装学院を卒業後、〈ヨウジヤマモト〉でニットとカットソー部門を担当。2017年に独立し〈ナヤット〉を立ち上げる。
関連記事
ファッション
まだまだ知られていない日本のスモールブランドの話。/HELS
2026年3月21日
ファッション
あなたにとってスタンダードって?/アニエス・トゥルブレ
What’s Standard?
2026年1月4日
ファッション
あなたにとってスタンダードって?/桑田悟史
What’s Standard?
2026年1月2日
ファッション
いよいよモカシン。
ワードローブに春を呼び込むアイデア。
2026年3月19日
ファッション
品質が良ければ長持ちするのです。
〈マリメッコ〉クリエイティブディレクター・レベッカ・ベイに聞いた服のこと。
2024年9月24日
ファッション
清潔感と軽やかさを兼ね備えた“無造作ヘア”にこなれたスタンダードな服がよく似合う。
『UNDER THE SUN』/TOKYO HAIR SNAP '26
2026年3月20日
ライフスタイル
“変わらない”というスタイルがある。
僕らの大好きなセンパイたちは、 昔からあまり変わっていなかった!
2021年11月10日
トリップ
小旅行のマイ・ルール。/〈Unlikely〉デザイナー・中田慎介
2023年11月16日
ピックアップ
PROMOTION
カリフォルニアの山と日常をつなぐTシャツとキャップ。
Mountain Hardwear
2026年8月3日
PROMOTION
〈SEIKO〉とポパイが一緒に作った “オレンジボーイ”制作秘話。
SEIKO
2026年7月22日
PROMOTION
〈アディダス〉の「ハイパーブースト エッジ」で、喋って、走って、JOY RUN!
adidas
2026年7月24日
PROMOTION
サマーボーイとグルーミング。
Panasonic
2026年7月9日
PROMOTION
だから、香りが好き。わたしがフレグランスをまとう理由 Created by GINZA
〈ZOZOCOSME〉で「Fragrance Edition」が開催中。
2026年7月23日
PROMOTION
〈KENZO〉のはじまりの地で、NIGO®が叶えたワードローブ。
KENZO
2026年7月8日