カルチャー
2025年を終える前に読んでおきたい3冊。
12月はこんな本を読もうかな。
2025年12月1日
text: Keisuke Kagiwada
『スプラッター映画と資本主義: 血しぶきホラーの政治経済学』
マーク・スティーヴン(著) 風間賢二(訳)
スプラッター映画は、人間をグロテスクに虐げるという点において、資本主義と同じ穴のムジナだ。しかしだからこそ同時に、このゴアな資本主義世界をサバイブする術も教えてくれるだろう。そんな視点に立ってスプラッター映画にマルクス主義的な光を当てるのが本書。ちなみに、著者がこの低俗なジャンル映画に興味を抱いたのは、中坊の頃にレンタルショップでとある作品を借りたのがきっかけだという。そのラストを今思い返していわく、「我がスプラッターへの開眼は、強奪者が完膚なきまでに略奪されるのを病的な熱狂を持って応援することを意味していた」ってシビれちゃうね。¥3,300/青土社
『ヒップホップ名盤100』
小林雅明(著)
よくある「歴史を動かした名盤100選」ではなく、「2025年の気分で聴ける名盤100選」であることを目指したっていうコンセプトがまずいい。どんなアルバムが紹介されているかはその目で確かめていただくとして、リリックへの言及が多いのも喜ばしい。また幕間に挿入される時代ごとのコラムも非常に興味深く、とりわけ「1990年代と陰謀論」は目からウロコ。Goodie Mobの「Cell Therapy」やProdigyの「illuminati」などを俎上に上げつつ、アフリカ系アメリカ人と陰謀論の一筋縄ではいかない関係を綴ったそのコラムは、まさに2025年のラッパーの動向(特にYe)を考える上でも示唆に富む。¥1,980/イースト・プレス
『ネクロポリティクス 死の政治学』
アシル・ンベンベ(著) 岩崎稔、小田原琳(訳)
平和の象徴と目されもする民主主義は、同時に分断を生み、虐げられた者たちを死に至らしめる暴力装置として、要するにネクロポリティクスとしても機能してきたし、今もしている。黒人差別やガザの現状を鑑みれば自ずと明らかだ。カメルーン出身の哲学者である著者が、そんな旧来の民主主義の超克を思考したのがこの一冊。「世界の終わりはすでに生起している。問題はもはや、その終わりを待ちながらいかに生きるかではない。そうではなくむしろそれは、終わりのあとの日々において生きることはいかに可能になるのか、すなわち喪失や分断とともにいかに生きるかということである」。¥4,950/人文書院
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