カルチャー

「雨が降るなら降ってみろ、俺はこれを読むから」と空に向かって叫びたい3冊。

6月はこんな本を読もうかな。

2025年6月2日

text: Keisuke Kagiwada

『映画夜話』
蓮實重彦(著)

 渋谷の名画座「シネマヴェーラ」における特集上映(アルドリッチ、フォード、ウォルシュ……)の折に、著者が登壇したトークショーの再録集。90歳を目前に控えてなお、切れ味が全く衰えることのない”話芸”を、チケット争奪戦の行列に並ばず味わえるなんて罪深い。これを機に、著者がかつて青山ブックセンターで定期開催していた伝説のイベント「とことん日本映画を語る」も書籍化してくれないものか。¥2,750/リトルモア

『刑事コロンボ研究 上』
菊地成孔(著)

 菊地成孔さんが名作TVドラマシリーズ『刑事コロンボ』を徹底研究すると耳にして、ワクワクしない人がいるだろうか。しかしこれは同時に、他に類例がないほど研究誘発性が高いというTVドラマを相手取り、コロンボ的な推理術で世に蔓延る「考察厨」を根こそぎにした……というか、独自すぎる考察によって誰もが安心できる考察を凌駕せんとする、菊池さんなりの考察カルチャーの脱構築でもあるかもしれない。¥1,650/星海社新書

『両膝を怪我したわたしの聖女』
アンドレア・アブレウ(著)村岡直子、五十嵐絢音(訳)

 著者の故郷でもあるスペインのカナリア諸島を舞台に、2人の少女の純粋無垢さとはほど遠い、荒唐無稽な夏の物語が活写される(よく読めば、現在流通している言葉のイメージとは異なり、意外と不潔な『ロリータ』の少女を思い出した)。そこで打ち出されるある意味新しい女性像は、最近のA24が女性監督と作っている映画(『Love Lies Bleeding』など)におけるそれと、響き合うものがあるかも。¥3,190/国書刊行会