カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.43

三葉虫

2025年1月3日

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机の上のサイエンス。


photo: Akira Yamaguchi
text & edit: Shogo Kawabata
2025年1月 933号初出

三葉虫化石のある種の到達点的な極上見本。

コネプルシア ダーマニー(Koneprusia dahmani)。古生代デボン紀エムシアン階に生息していたと推定されている種。個体数が少なく、欠損のない完全体の標本はなかなか出ない。モロッコのアルニフ地域、オファテン産。世界的な三葉虫のコレクション「立松コレクション」より。

 デボン紀の三葉虫には、非常にユニークな形状の種が多い。この時代、三葉虫を捕食する魚などの生物が現れたため、身を守るためのさまざまな変化がおこったと考えられている。特に化石愛好家たちに人気なのが、全身トゲだらけの姿になったものたち。なかでも特別に魅力的なトゲを持つのが、この「コネプルシア ダーマニー」で、非常に複雑な形状のトゲを無数に身に纏っている。これらのディテールを見事にクリーニングしたのは、モロッコのカリスマ的な職人であるハミー氏だ。通常、繊細な化石はサンドブラスターという石灰岩の粒子を吹き付ける方法で掘り進めていくが、彼はその化石の母岩の性質に合わせて、オリジナルのパウダーをブレンドし、長い時間をかけて丁寧に掘り進めていく独自のスタイル。1点掘り上げるのに100時間かかることもあるそうだ。この標本も、細長いトゲからさらに細かなトゲが無数に出ているディテールまで、完璧に蘇らせている。印象的な姿、稀少性、欠損のない完璧な状態、そして極上のクリーニング。三葉虫のある種の到達点のひとつと言っていい標本だ。