カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.36

標本ケース

2024年6月3日

photo: Akira Yamaguchi
text & edit: Shogo Kawabata
2024年6月 926号初出

貝類研究者が作った特別なケース。

大(6×8×4㎝)¥80、中(4×6×4㎝)¥70、小(4×6×2㎝)¥60、豆(4×3×2㎝)¥50。底の四隅には積み重ねたときに滑らないような薄い脚が付いている。鳥羽水族館オンラインショップ。

 この透明プラスチックケースは、1970年代に鳥羽水族館で貝類の研究を行っていた大山桂博士が貝類標本の整理のために製作したもの。当時、大きなフロアをまるごと使っていた「寺町コレクションホール」は鳥羽水族館の目玉のひとつであり、その展示品のベースとなったのが、画家であり、有名な貝蒐集家であった寺町昭文氏のコレクションだった。鳥羽水族館設立の際、創設者の中村幸昭氏がこのコレクションの譲渡を持ちかけたところ、条件となったのが、寺町氏が師と仰いでいた大山博士にこのコレクションの研究管理を任せることだった。こうして鳥羽水族館に招かれた大山博士が、膨大な寺町コレクションを整理するための特別なケースを開発したのである。豆、小、中、大という4サイズがあり、豆は小の半分、小は中の半分、中は大の半分、という仕様で、積み重ねて収納するのに非常に便利だ。このケースが研究者の間で評判となり、多数の要望があったことから市販することになったという、鳥羽水族館の隠れた名品だ。