フード
FOREIGN RESTAURANT’S OWNER IN TOKYO Vol.12
🇪🇹『de' Afrique』ヨナスさん/インタビュー土井光
2022年11月26日
海外から来た方が日本でオープンした外国料理の店は、味はもちろんだけど、それと同じくらい店主の人柄や考え方が魅力的だったりする。各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の名店の店主を料理家の土井光さんと巡るコラム!

自由が丘でお店を経営している知り合いから、近くに面白いバーレストランがあると聞き、散歩がてらふらっと行ってみたのがきっかけです。外国人の方々が集まり、音楽をかけて歌ったり、そのとき出合ったお客さん同士で話したり。外国の田舎のバーのような雰囲気で、普通のレストランとは違う感覚なのにしっかりとおいしいものを頂ける楽しい空間です。夜に飲みに行くだけでもハートを掴まれること間違いなし! ヨナスさんの子供時代の経験を聞いて、エチオピアの広い自然を想像しながらインジェラを食べたら、世界は広いと実感するはずです! 発酵大国にいる日本人もびっくりなインジェラ、是非予約をして食べてみてください!

今日はよろしくお願いします! 早速ですが、日本にはいつ来られたんですか?

1998年です。19歳で来日して、もう24年も経ちました。

どおりで日本語がお上手なんですね! 来日のきっかけは何だったのでしょうか?

エチオピア大使だったお父さんの来日がきっかけです。若くて未熟な僕が、お父さんがいなくなった家族に迷惑をかけるかもしれないからって、兄弟の中で僕だけ一緒に連れて行かれて(笑)。来日以降は大学進学はしないで、バーとか飲食店で働いてましたね。何度かエチオピアに帰ったり、アメリカに住んだりもしました。

最初日本に来られた時、きっとカルチャーショックがいっぱいあったんじゃないですか?

見るものすべてにビックリしました! 今でこそもう変わってしまったけど、当時のエチオピアに使い捨て容器はなくてすべて瓶だったし、家族で牛を飼ってるところも多いから、牛乳はそこから絞って飲んで、ヨーグルトもバターも搾りたて牛乳から手作り。スーパーすらなかったので、日本のスーパーで紙パックに入った牛乳とか缶に入ったコーラが買えるだけで新鮮で楽しかったですね。

素敵な生活……! 体験してみたいです。でも東京の生活とは大きく違いますよね。日本でずっと生きていこうと、そのときから思えましたか?

言語も食べるものも違ければ、神様にお祈りする習慣や場所もなくて宗教の違いに適応するのも大変だったけど、2年くらい経って徐々に環境に慣れてきて、アルバイト先で知り合いもできてからは楽しくなってきましたね。

すごい適応能力ですね……。アルバイトはエチオピア料理屋さんでされていたんですか?

日本人経営の外国料理レストランとか、六本木や新宿のクラブとかでも働いてたけど、中目黒にあるエチオピア料理店『クイーン・シーバ』でもバイトをしていました。お父さんがオーナーと仲良しで、僕が「もうエチオピアに帰りたい」と思っていた辛い時期にバイトさせてくれたんです。そういう出合いもあって、日本に残ろうと思いましたね。

『クイーン・シーバ』さんにもいらっしゃったことがあったんですね! 有名店ですよね。こちらのお店はいつオープンされたのですか?

自由が丘にあるこのお店は2012年の6月オープンで、今年10周年なのですが、その前に5年ほど、エチオピア人の友達と一緒に赤坂でエチオピア料理店を構えていたんです。でも、自分1人でどこまでできるか試したかったから、赤坂のお店は彼にお願いして、自分のお店を持ちました。





炒め物やサラダなど、どれも美味しいですよね。メニューの最後に載っている「インジェラ料理」もいつも気になっているのですが、まだ食べたことがなくて……。どのようなものか説明していただいてもいいですか?

インジェラは、世界で一番小さい穀物と言われるテフを挽いて製粉して、自然発酵させた酸味のある生地のことで、ワット(煮込み料理の総称)と一緒に手で食べるエチオピアの伝統料理です。インジェラは塩も小麦粉も入っていないけど、焼いて蒸すだけでものすごくもちもちになります。


現地では、朝昼晩インジェラ料理を食べるのですか?

昔はそうですね。今はエチオピアにもマンションやアパートが増えてきて、一人暮らしをする人たちが多くなってきたので、インジェラ料理は実家に帰った時にお母さんが作ってくれるものに変わっていますが……。ワットの具材は家庭によっても様々で、朝は軽め、夜は重ためになったり。宗教上の理由から豚肉は食べませんが、それ以外のお肉は基本何でも使いますよ。

ワットの種類は各家庭で無限にありそうですね! 色んなものを試してみたいです。ちなみに、手で食べるのがエチオピアにおける食事のマナーなのでしょうか?

そうです! みんなでインジェラを囲みながら、手がベタベタになるのもお構いなしに食べるのがエチオピアのマナーです。手が汚れないと食べた気がしないですよ(笑)。食事は人と一緒に楽しむものなので、隣の人の口の中に入れてあげたりすることもあります(笑)。

味付けがどれもしっかりしていて、お酒のつまみにもなりそうですね。永遠に飲めちゃいそう(笑)。

日本はつまみ文化があるけど、エチオピアではゆっくり食べることは行儀が悪いと怒られてしまうんです。食事中はお酒も飲まず、会話もせず、目の前のご飯に集中。お腹いっぱいになったら、90度くらいの強いお酒やコーヒーを飲んだりしながら、周りの音も聞こえなくなるくらい喋り倒す。これがエチオピアの日常です! だけど、僕は日本にいる時間が長すぎて、つまみながら飲む方がしっくりくるようになりましたが(笑)。

なるほど。お酒とご飯は別で、けじめをつけてどちらも楽しまれるんですね。勉強になります。レストランでも、インジェラをみんなで囲んで食べるスタイルなんですか?

そうですね。でも、レストランは若い子たちがデートする時に使う場所というイメージが強いですし、外食よりも家の料理の方が断然おいしいと思うんです。油が多かったりして、あとからお腹が痛くなることもよくありましたね(笑)。

でも、このお店のインジェラ料理は油分が少なそうですよね。

基本はオリーブオイルやハーブで味付けをしてるので、油分は少なめです。バターも、自分でスパイスの味を染み込ませたものを使っています。インジェラ料理は、自然発酵のインジェラとスパイスたっぷりのワットが合わさっているので、見た目のインパクト以上に意外とヘルシーなんですよ!









エチオピアでは、女男関係なく家で料理をするんですか?

今は男性も家事・育児を手伝いますが、僕がエチオピアにいた頃は男性がキッチンに入ることはすごく珍しかったです。「男性は外で働き、女性は家事をする」というのが固定観念としてあったし、兄弟の数が最低でも5、6人と多いので、女性は子育てに専念するのが自然の流れだったと思います。

では、ヨナスさんはどのように料理ができるようになったのですか?

昔から興味があって、お母さんが料理をしている様子を近くでじっと見てたからだと思います。たまに手伝わせてくれたり、教えてくれたりしていく中で覚えていきましたね。このインジェラ料理もお母さんの味です。

スパイシーだけど、優しさを感じるのはお母さんから教わったレシピだからなんですね。今日はありがとうございました! 今度は大勢で食べに来ます!
インフォメーション
de’ Afrique
◯東京都世田谷区奥沢6-33-14 ☎️03・6432・1914 18:00〜4:00 日休
Instagram: @de_afrique
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