FOOD

FOREIGN RESTAURANT’S OWNER IN TOKYO Vol.13

🇰🇭『バイヨン』レスマイさん/インタビュー土井光

2022.12.26(Mon)

interview: Hikaru Doi
design: Shoko Yoshida

海外から来た方が日本でオープンした外国料理の店は、味はもちろんだけど、それと同じくらい店主の人柄や考え方が魅力的だったりする。各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の名店の店主を料理家の土井光さんと巡るコラム!

 一度カンボジアに行った時、優しさに包まれている国だ! とあらゆるシーンで感じたのを覚えています。食べ物も私の身体にかなり合っていたので、東京でも食べられたらいいなあと思っていた時、見つけたのが神楽坂にある『バイヨン』でした。カンボジア人シェフのレスマイさんは、最初は少しシャイな雰囲気の方でしたが、いざ彼のお話を聞くとお料理への愛と一生懸命さ、情熱家で向上心溢れる姿勢にとても感動しました。お店はとてもアットホームですがお料理はかなり本格派。中国やタイ料理と少し似た雰囲気はあるものの、私が食べ慣れている味とは全く別物の香りや香ばしさに驚きました。レスマイさんのお料理は、すべてに愛と優しさが溢れていて、ちょっと疲れているときに一人でも、楽しく家族とでも、色んな使い方ができるレストランです!

今日はよろしくお願いします! ここは日本ではなかなか馴染みのないカンボジア料理レストランですが、カンボジア料理にはどんな特徴がありますか?

辛い味付けも一部ありますが、基本的にマイルドな味わいなのが特徴です。すごーく簡単に言ってしまえば、辛くないタイ料理のような感じです(笑)。

10年前にカンボジアに旅行したことがあるのですが、海外旅行では毎回胃もたれするのに、カンボジア料理は優しい味付けだったので、いくら食べても大丈夫だったのを覚えています。

日本の味噌や醤油のように、カンボジアにも発酵調味料が多いんです。小魚を塩漬けにして発酵させ、ペースト状にした「プラホック」や、カンボジアの魚醤「トゥック・トレイ」などをほとんどの料理に使っているので、その旨味成分がたっぷりと含まれています。だからか、旨味を感じる日本料理と少し似た部分があると思います。

こちらはプロホックを使った肉味噌の生野菜ディップ。ココナッツも入っているので、日本のそれとは違い、マイルドな味わい。¥950

タイの魚醤であるナンプラーはよく聞きますが、カンボジアの調味料名は初めて聞きました! 魚料理、肉料理問わず使うんですか?

はい。プラホックはそのまま嗅ぐと匂いがキツめなのですが(笑)、料理に加えると魚臭さはあまり感じません。ちなみに、カンボジアは海に面している部分が少ないので、魚料理は基本的に川や池の淡水魚をよく使います! プラホックとトゥック・トレイの原料の小魚も淡水魚です。

カンボジアの調味料といえば、胡椒もすごく美味しいですよね? カンボジアにはなかなか行けないので、仕事でフランスに行った時などに毎回カンボジア産の胡椒を買って帰るんです。

そうですね。フランスの植民地だった時代に胡椒が栽培されるようになって、今でも胡椒が多く生産されています。

生胡椒を塩漬けにしたものを粒ごと食べるのが現地でポピュラーな食べ方。お酒のつまみにぴったり。

カンボジアは調味料が充実しているからか、街の普通のご飯屋さんで食べるものでもすごく美味しかった記憶があります。レスマイさんは小さい頃から料理人になりたいと思っていたんですか?

歌手になりたかった時期もあったのですが、昔から食べるのが好きで、美味しいものを食べたあとはいつも作りたいなと思っていました。料理に対する興味があったので、飲食店の道に進みました。

カンボジアではどんな場所で働いていたんですか?

日本に来る直前まで、首都・プノンペンにあった高級レストラン『ロムデン』で働いていました。今はもう閉店しているのですが、レストランだけでなく、若いシェフの育成も行っている学校のような場所でもあったので、僕は自分で実際に作ることよりも、若いシェフに料理を教えたり、彼らが作った料理をお客さんに提供する前に食べて、味のチェックをすることが多かったです。トータルで200人近く教えたと思います!

『ロムデン』のシェフたちの集合写真。一段目の右から5番目で笑顔を見せているのがレスマイさん。レスマイさんのように、他のレストランに引き抜かれていったシェフも多いという。

レスマイさんは先生だったんですね! 日本に来るきっかけはなんだったのですか?

『バイヨン』はもともと、日本人のオーナーが経営していたカンボジア料理店なのですが、カンボジア人のシェフを募集して、そのオーディションに参加しないか? と声をかけられたのがきっかけです。カンボジア人やアメリカ人の審査員の前で料理を作って、無事合格して日本に来ました。あとから知ったのですが、オーディションを受けていたのは85人もいて、そのうち2人しか合格しなかったみたいです!

すごい! スカウトされただけじゃなくて、試験を潜り抜けて来たんですね。このお店で働き始めて何年経つんですか?

2012年にシェフとしてこの店で働き始めたので、今年で11年目です。2019年からは僕がオーナーを引き継いで営業しています!

日本に来た時から、いつかは自分のお店を持ちたいという夢があったのですか?

自分のお店を持つという目標は考えていなくて、日本はどんな国なのか? とか、いつか行ってみたい、働きたいという純粋な気持ちだけでしたね。でも、日本語も全く喋れなかったし、物価も違うので最初は苦労しました。持っていたわずかなお金でテレホンカードを買って、カンボジアにいる家族に国際電話していたのは今となってはいい思い出ですね。

きっといろんなご苦労があったんですね……。カンボジアにいた頃とは生活も職場環境もかなり違うでしょうし、料理を教えることやカンボジアが恋しくなりそうですね……。

懐かしくはなりますが、寂しくはないですね。常に勉強していたいと思うので、ずっと同じ環境で同じことだけやっているよりは、刺激的な異国で頑張っていきたいです!

向上心を忘れない姿勢が素敵です。普段はお一人でお店を切り盛りされているんですか?

日本で結婚したカンボジア人の奥さん(冒頭写真・左)と一緒にお店に立っています。

綺麗で優しそうな奥様ですね。カンボジアの方は穏やかな方が多い印象で、日本人の国民性とすごく合いそうな感じがします。

1970年に始まったカンボジア内戦の頃に難民として日本に移り住んだ人も多いので、日本にはカンボジア人が意外と多いんです。在日二世もいます。でも、カンボジア料理店は少なくて、都内だとこの店も含めて3店舗しかないんです! 日本全国でも10軒ほどしかないみたいです。

確かにタイ料理やベトナム料理に比べてなかなか見かけませんね。でも、日本人好みの味わいで、一度食べたらみんなハマっちゃうと思います。このお店は1人でも入りやすい雰囲気ですし、私もまた遊びに行きますね! 今日はありがとうございました!

インフォメーション

カンボジア料理 バイヨン

◯東京都新宿区袋町26 ☎︎03・5261・3534 11:30〜14:30・17:30〜22:30 月休

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