フード

FOREIGN RESTAURANT’S OWNER IN TOKYO Vol.10

🇵🇪『ALDO』浦田アルドさん/インタビュー土井光

2022年9月27日

interview: Hikaru Doi
design: Shoko Yoshida

海外から来た方が日本でオープンした外国料理の店は、味はもちろんだけど、それと同じくらい店主の人柄や考え方が魅力的だったりする。各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の名店の店主を料理家の土井光さんと巡るコラム!

アジアとヨーロッパには慣れていた自分でしたが、ペルーに一度旅行に行った時に衝撃を受けたのを覚えています。文化や街並みも全然違うし、なにより温かい人柄の人たちが多いことに感動しました。家族を大事にし、自分の国を誇りに思い、丁寧に生きている人たちが多かったのです。そんな素晴らしい体験をした後に日本でアルドさんのお料理を食べて、全く同じ感情が湧きました。丁寧に作った故郷のお料理はどれも品があり、本当に美味しい。アルドさんのお客様への思い、料理への貪欲な精神にとても刺激を受けました。レモンがしっかり効いたセビーチェ、アジア的な味付けのロモサルタード。距離的には遠い国ペルーですが、これらの料理を通して身近に感じ、気になる国になること間違いないと思います!

  

今日はよろしくお願いします! 早速ですが、アルドさんは日系の方だそうですね。

日系3世です。でも、ペルー生まれペルー育ちなので、昔は日本とのつながりもなかったし、日本語も話せなかったです。

来日されたのはいつ頃ですか?

ペルーの大学に1年半通った後に来日したので、30年くらい前ですね。日本語学校にも通わず、仕事をしながら日本語を覚えました。日本人の奥さんはスペイン語が話せるので、今でも家ではスペイン語です。

大学では何を専攻されていたんですか?

医療系の勉強をしていたので、日本に行く時に「なんで?」ってお母さんは怒ってました(笑)。周りの友達は今では医者ばかりで、みんなエリートです。

大きく方向転換をしたんですね! 来日してすぐに飲食系の仕事に就いたんですか?

ペルーにいた両親の知り合いの日本人が紹介してくれた会社に入って、はじめは福島県のショッピングモールで1年ほど仕事をしました。その時にラーメンを作ったりもしてたけど、そこには外国人もいなくて、僕は日本語も喋れないし、すごくチャレンジングな時間でした。でもすごく楽しかったです。

知らない土地の、しかも地方で働かれていたなんて、初めから刺激的ですね! 東京に来られたのはいつだったんですか?

その後に自動車工場で組み立ての仕事をしたんですけど、そこからはずっと東京です。お金のためと思って仕事をしていたけど、奥さんと東京で知り合って、結婚して、この先ずっと日本に住むと決めた時に、好きな仕事をしたいと思って飲食の道に進みました。

休むことなく毎日店に立ち、厨房で料理を作るアルドさん。仕事熱心なアルドさんは、来日してからの30年間で故郷に帰省したのは3回のみだそう。

その当時、ペルー料理は日本で知られていましたか? ペルー料理のレストランがあったりとか。

全然なかったです。ほとんどメキシコ、スペイン、イタリアだったので、はじめの20年間はメキシカンレストランで働いていました。いつかチャンスがあればペルー料理のお店をやりたいと思いながら、勉強のためにいろんなお店で働きましたね。

20年も! どんな料理を作られてたんですか?

本当に色々作りましたね。どのレストランも、ミッドタウンとか素敵な場所ばかりで、家賃は高いけどチャンスがある街で自分のお店をやりたいっていうイメージが付きました。だからこのお店も青山でオープンしたんです。

それで青山にお店があるんですね。メキシカンレストラン以外には、どんなお店に勤めていたんですか?

トルコ料理屋でケバブを作ったり、休みの日にさらに他のお店でバイトもしていました。自分のお店をオープンしたら他店で勉強する時間はなくなってしまうので、それまでに経験できてよかったと思いますね。

すごい勉強熱心……! そういう下積みを経て、今の店をオープンしたんですね。

当時はいいポジションで仕事をしていたし、物件もなかなか見つからなくて、自分のお店を持つことを諦めていた時期もありました。でも、実家が飲食店を経営している奥さんがペルー料理屋を出して欲しいといつも言ってくれていたので、表参道駅からすぐ近くの小さな場所で6年前にオープンできました。そこはテーブルが3つだけですごく狭かったけど、いつも混んでましたね。

一度移転されているんですね。青山に移動したのはいつ頃ですか?

3年ほど前です。最近は、大使館からケータリングやデリバリーの注文も入るようになったんです。つい先日はエクアドルの大使館でアレンジしたペルー料理を振る舞いました。準備で2、3時間しか寝れない日もあってプレッシャーでしたが、貴重なチャンスをいただけてありがたいですね。

元々ペルーにいた頃にも料理をされていたんですか?

全くないです! お母さんが経営していたお店でその手伝いをしていた程度で、勉強をしたことは本当にないです(笑)。料理が上手なお母さんの作り方を見て覚えましたね。あとは、故郷のトルヒーリョという場所が食材も豊富で美食の街なので、美味しいものに囲まれて生活してました。教会や海もあって綺麗な街ですよ。

ペルー料理は日本には馴染みはないけれど、少し甘味があって日本人が好きな味ですよね。一度食べるとハマってしまいます!

見たことのない食べ物ばかりなので、お客さんはメニューを見てすごい迷ってますね。でも一回食べるとすごく喜んでくれるし、将来は人気になると思う。ロモサルタードは、一回食べたら毎回それしか頼まない方もいて、他のメニューも食べて欲しいって思いますけどね(笑)。

セビーチェなど、他の料理もほんと美味しいですもんね。カクテルメニューも充実しているし!

フレッシュな真鯛をレモン、唐辛子、ニンニク、玉ねぎ、コリアンダーなどでマリネした前菜・セビーチェ。ペルーではセビーチェ専門店もあるほど国民に愛されているという。¥2,080

セビーチェは中南米各国で作られていて、国によって味はまったく違います。ペルーの場合はレモンの酸味が効いた味付けが特徴的ですね。ただ、ペルーのレモンは緑色だからライムだと勘違いして、日本ではライムでセビーチェを作るお店も多いらしくて。だからペルー本来のものとは全然違います。

なるほど……! それは全然知らなかったです!

ペルー料理は知られていないことが多いと思うので、いつかこのお店でペルー料理教室をやってみたいです。お客さんも覚えたいと言ってくれてるし、みんなで一緒に作って食べる楽しいクラスをやってみたいと思います。

忙しい中でも、やりたいことが尽きない貪欲さが素敵です。今日はありがとうございました。また遊びに行きます!

インフォメーション

ALDO

◯東京都港区南青山3-3-23 ☎︎03・6427・7223 11:30〜14:30・18:00〜23:00、日11:30〜22:00 月休