フード

FOREIGN RESTAURANT’S OWNER IN TOKYO Vol.5

🇨🇳 『蘭州清湯牛肉面 隴垣金城』侯献智さん/インタビュー土井光

2022年4月8日

海外から来た方が日本でオープンした外国料理の店は、味はもちろんだけど、それと同じくらい店主の人柄や考え方が魅力的だったりする。各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の名店の店主を料理家の土井光さんと巡るコラム!

土井光さんと『蘭州清湯牛肉面 隴垣金城』店員さん

早稲田に気になる牛肉面があると友人に聞き、『蘭州清湯牛肉面 隴垣金城』さんに出合いました。牛肉面は実際知らなかったのですが、食べた瞬間に本物だ! と確信しました。お父さんが麺を作るライヴ感、大きな器に入ったラー油。テンションが高まるものが小さなお店の中にぎゅっとつまっています。一口食べれば早稲田から蘭州にタイムスリップしちゃいます。夜に行ってお酒と一緒に楽しむのも最高だと思います! 自分のお気に入りの麺の種類を見つけて、早稲田の蘭州で楽しんでください!

 

今日はよろしくお願いします! このお店の看板メニューである牛肉面は、中国のどの地域の料理ですか?

黄河の上流にある甘粛省蘭州市の料理で、私の故郷の味です。牛肉を使っているので蘭州では「牛肉面」と呼びますが、蘭州から出ると「蘭州拉麺」といわれ、中国でラーメンといったらこの牛肉面のことを指します。起源は諸説あるんですけど、個人的には、中国の河南省の牛肉の煮込み料理と、かん水を使うモンゴルの製麺法がシルクロードを通して伝わり、それが交わってできたと思っています。歴史はたった100年ほどですが、日本のラーメンのもとになったのも、この牛肉面だと言われているんですよ。

ラーメンに牛肉を使うのは日本では珍しいですが、蘭州では牛肉の方が身近なんですか? 日本だと豚や鶏の方が一般的ですよね。

中国の西北部にある蘭州は回族という豚を食べないイスラム教の少数民族が多いので、宗教の影響もあります。それに、豚は脂も多いですし、少なくとも蘭州では豚で作るスープはないです。

牛肉麺
¥900

豚骨スープなどと比べて、牛肉面のスープはとても澄んでいますよね。

お店の名前にもなっている「蘭州清湯牛肉面」の「清」は澄んでいる、「湯」はスープという意味で、まさに名前の通り透き通ったスープなのが牛肉面の特徴です。さっぱりしているので、蘭州では大体朝と昼に食べて、私は中学校から今でもずっと朝と昼は牛肉面を食べています。

『蘭州清湯牛肉面 隴垣金城』外観

朝から! 蘭州人の日常なんですね。

人口400万人の蘭州の街に牛肉面の店は2,000軒ほどあって、1日100万杯も売れるんです! 大体朝6時から始まって、午後の2時とか3時には完売です。蘭州人の4人に1人が毎日牛肉面を食べてるから、値段が上がるとみんな文句を言うので政府が値段をコントロールして1杯200円とすごく安いです(笑)。

そんなに安く食べられるんですか!

安すぎて赤字になっちゃうから、1店舗で1日500〜600杯も売るんですよ。あとはコストを下げるために完全にセルフサービス。自分で取りに行って、席を探して、例えるならマックのような店内です(笑)。

すごく忙しそうですね。

蘭州だと厨房の中に大体5人いるから何杯も作れるんです。生地を作る人、麺を手打ちする人、茹でる人、盛り付ける人、トッピングの牛肉とかを切る人。全部流れ作業になっていてみんな慣れています。麺の形は十種類くらいあるんですけど、このお店でも代表的な4種類の細麺、丸い中細、ニラの葉のような形をした韮麺、平べったい太麺が選べますよ。

すべて手作業ですか?

はい。もちろんこのお店でも一から手作りしています。ただ、手作業だから職人がいないと店も成り立たなくて、それで長い間、蘭州人は蘭州以外でお店を出すことはあまりなかったです。

注文が入ってからひとつひとつ手延べし、手打ちする。
店内に響き渡る手打ちの音が気持ちいい。
面の形を整え、茹でる。
最後に自家製ラー油を。ラー油は自由に注ぎ足し可能。

材料なども蘭州独自のものがあるんですか?

そうですね。牛肉面には専用の小麦粉が使われます。甘粛省と隣の寧夏省の小麦で、乾燥した高原で、周りは砂漠とか草原とかの乾燥地域のものだけと決まっています。かん水も黄河の水を使って作らなければ牛肉面とは言えないっていう自負が蘭州人にあるんです。

なんだか、蘭州以外で牛肉面を作るのは難しそうですね…。

そうなんです。私は1998年に日本に留学で来ているんですけど、その時に日本のラーメン屋でバイトして、でもあまり自分の口には合わなかったので日本にも牛肉面があればなと思っていました。でも蘭州以外で出店するのはやっぱり難しくて、しばらくは夢見てるだけでした。

いつこのお店をスタートできたんですか?

2019年です。というのも、蘭州がある甘粛省の隣にある青海省に政府が補助金を出して貧しい人たちに技術訓練して、”蘭州拉麺“の名前で中国全土に4万件も出し始めたんです。でもこれは蘭州人からすれば本当の味ではないから、ちゃんと知ってもらおうと、牛肉面の技術を学ぶ学校も蘭州にできたりして、2010年くらいから蘭州人も外の地域でも出店するようになりました。だからこうやって日本でもお店ができるし、今では蘭州以外でも蘭州人の作る牛肉面が食べられるんです。

蘭州清湯牛肉面 隴垣金城 店内

日本で蘭州出身の方が作る牛肉面が食べられるのはありがたいことなんですね! 材料などは現地から取り寄せているんですか?

ラー油は3種類の唐辛子で手作りです。辛いというより、工夫して香ばしい味にしています。小麦粉は日本のものですが、これは決めるのにすごく苦労しました。蘭州の小麦粉の成分を調べ、似た成分のものがないか日本のメーカー何社かに聞いて、それで調べてくれたものを蘭州に持って帰り、牛肉面のプロ中のプロに判断してもらって今の小麦粉を選んでいます。小麦粉は本当に大事なんです。

すごい…。本場の味そのものなんですね。

おそらくうちが蘭州の味と一番近い味だと思います。蘭州の味を知ってもらって、美味しいと思ってもらえたら嬉しいですね。

インフォメーション

蘭州清湯牛肉面 隴垣金城

◯東京都新宿区西早稲田1-9-10 ☎︎03・6233・8278 11:30〜14:30、16:30〜20:00 土休