各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の外国料理店の店主を、
料理家の土井光さんと巡るコラム。

土井光(以下、土井):ラッキーさんはナイジェリア出身ということですが、地元は首都のアブジャですか?
ラッキー・シーウエ(以下、ラッキー):アブジャはナイジェリアの中央に位置していますが、ボクの故郷は気候があたたかい南部の方。アブジャから車で約6時間ほどのギニア湾の近くで、日本に住むまでずっとそこに暮らしていました。
土井:ナイジェリアにいた頃から、今のようにお料理の仕事をされていたんですか?
ラッキー:料理の仕事に就いたことはなくて、当時はミュージシャンになりたくてライブとかしてました。でも、ボクは6人兄弟で家族が多いから、お母さんにあれやってこれやってとお願いされて子供の頃から家事のお手伝いをしていくうちに、自然と家庭料理の作り方を覚えていったかな。『エソギエ』で食べられるのもナイジェリアの素朴な家庭料理ですよ。


土井:まるでお母さんのアシスタントですね! 実は、ナイジェリア料理をいただくのは今回が初めてなのですが、辛い、甘い、さっぱりなど味わいの特徴はありますか?
ラッキー:全体的に味付けは濃く、香辛料に赤唐辛子を使っているのでピリ辛が多いですね。あと、ナイジェリアはキリスト教徒と合わせてイスラム教徒の数も多いので、イスラムの教えに沿って豚肉を使う料理が少ないです。だから、『エソギエ』でも豚肉料理はないんです。





土井:舌が痺れない程度のちょうどよいスパイシーさが美味しい! しかも、おつまみ系以外にも、お腹を満たせるボリューミーなものも揃っているのがいいですね。お酒を飲みながらガッツリご飯も食べられるバーは、新宿三丁目では貴重な気がします。
ラッキー:お酒もいろんな種類がありますよ。日本でも一般的なカクテルももちろん作りますし、ジンに木の皮や根っこを独自に漬ける「オゴゴロ」というナイジェリアならではのお酒や、ナイジェリア産のビールもあります。







土井:オゴゴロは木の香りがして爽快感がありますし、ノンアルコールビールは黒糖のような甘さで飲みやすいですね。ちなみに、ラッキーさんは日本語がとてもお上手ですが、もう来日されて長いのですか?
ラッキー:来日したのは2000年頃です。ナイジェリアでは日本製の車とか電気製品が人気で日本の名前をよく目にするので、なんとなく日本っていいなあって思って行くことにしたんです。東京にナイジェリア人の友達もいたしね。
土井:来日後はどんなお仕事を?
ラッキー:日本とナイジェリアを行ったり来たりしながら、西麻布や六本木ヒルズなどのハイエンドな街のレストランでいくつか働きました。日本語は全然ダメだったけど、語学学校に行く時間とお金はないから働きながらメモして覚えていって。4年間くらいそんな生活を続けたあと、『エソギエ』を2004年にオープンしました。


土井:開業までに4年間って、結構短い期間ですよね。日本語を覚えるのも、ビジネスのことを考えるのも大変じゃなかったですか……?
ラッキー:たしかに大変だったけど、お店をやりたいという目標はハッキリと持っていたから、大変なことがあっても一生懸命頑張れました。日本の文化や考え方が、ナイジェリアとは違うことで苦労するときもあったけど、決めたことは責任を持って成し遂げるのが男だから!
土井:日本人顔負けのサムライ魂……! そういう真面目な性格が、日本で暮らし、そしてお仕事をするのに合っていたのかもしれないですね。
ラッキー:お客さんからも、よく日本人ぽいねって言われます(笑)。気づけば、あっという間にお店は来年で20周年を迎えますが、これからもアフリカのことを知らない日本の人に来ていただいて、もっとナイジェリアを知ってもらえたら嬉しいです。

インフォメーション

アフリカンレストラン&バー エソギエ
◯東京都新宿区新宿3-11-2 村木ビル3F ☎︎03・3353・3334 17:00〜23:30(土・日のみ12:00〜15:00までのランチあり) 月休※月曜祝日の場合は営業、翌日が振替休み
今回取材したお店の国について

ナイジェリア連邦共和国
◯面積は日本の約2.4倍。
◯人口数は世界第7位で、なんと2億人超え。
◯民族は250以上、言語は500以上の多民族国家。
◯キリスト教徒とイスラム教徒が人口の半分を占める。
◯かつて英国の植民地だったことから、公用語は英語。
◯アフリカ最大の原油国で、天然ガスの埋蔵量も多い天然資源の宝庫。
◯実は年間2000本以上の映画が制作される、映画大国。インドに次いで世界第2位。
⇩場所はここ⇩
