フード

FOREIGN RESTAURANT’S OWNER IN TOKYO Vol.9

🇮🇱『タイーム』ダン・ズッカーマンさん/インタビュー土井光

2022年8月26日

interview: Hikaru Doi
design: Shoko Yoshida

海外から来た方が日本でオープンした外国料理の店は、味はもちろんだけど、それと同じくらい店主の人柄や考え方が魅力的だったりする。各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の名店の店主を料理家の土井光さんと巡るコラム!

イスラエルは私にとって特別な国です。フランス時代の同級生にイスラエル人が多かったこともあり、訪れる機会がありました。2週間程度でしたが、本当に素晴らしい体験ばかりでした。彼らの食生活は良い意味で粗食で、良い素材から出来たお料理を家族や友人とゆっくりと楽しむ。その姿はとても知的で温かみがあったのを思い出します。そんな雰囲気を東京で感じられる唯一のお店ではないでしょうか。ダンさんの人懐っこいキャラクターで店内はとても明るく、ひっきりなしにくるお客さんからも愛されているのが伝わります。ケバブやファラフェルも素晴らしいスパイスが使われていて、料理のレベルもとても高いと思います。一人でも、友達とでも楽しめる、アットホームな雰囲気に何度でも通いたくなります!

 

今日はよろしくお願いします! 早速ですが、なぜ日本にいらっしゃったんですか?

若い頃に日本に旅行で来て好きになったからですね。もっとこの国を知りたいと思って3ヶ月留まった後、通っていたエルサレムの大学に戻って日本語を1年くらい勉強しました!

結婚や仕事がきっかけなどではないんですね。

まったく! 確かに妻も日本人だけど、妻とはもっと後に出合ってます。日本に来たのは本当にたまたま(笑)。大学を出た後、京都の日本語学校に通って、5年くらい住んで、もっと国際的な場所に行こうと思って東京に引っ越しました。

その時は仕事はされていたんですか?

初めは英会話の先生と、新宿のクリニックで指圧マッサージをしていました。

指圧マッサージ?! 免許も持っているってことですか?

イエス! ただ、当時は持ってなくて、日本で取ろうと思ってたけど、その頃は日本語がまだそこまで分からなかったので、一旦イギリスに行って4年間専門学校に通って免許を取りました。そこから故郷のイスラエルに戻って自分のクリニックも開いたんだけど、心の中でずっと日本に戻りたいって思い続けて、結局また戻ってきて飲食の道に進みました。

キッチンに立つダンさん。歌を口ずさむこともあり、いつ行っても陽気で楽しい空間。

その後すぐにこの店を開いたんですか?

ノーノー。初めはカフェで働いて、六本木、恵比寿、赤坂のカフェの店長をしたり、白金高輪にあるレストランでマネージャーをやったこともあります。

全部都心なんですね!

今の店がある広尾もだけど、都心が好きなので(笑)。他の店でもいろいろ働いて、50歳になった時に独立して今の店をオープンしました。今からちょうど11年前。福島県の震災があった2011年の6月でした。

恵比寿駅から徒歩8分。こぢんまりとした店構えで、カウンター席とテーブル席合わせて10席ほど。混み合っていることが多いので、予約しておくと安心。

そんな大変な時期に開いたのもパワフルだし、今61歳には見えないほどお若いですね。なんで広尾にしたんですか?

外国人が多く住んでいるところがいいなと思って。お客さんはほとんど外国人で、アメリカ人、フランス人、イタリア人の方が多いですね。

ディナータイムは特に、いろんな言語が飛び交ってますもんね。ダンさんは、もともと料理が好きだったんですか?

昔から興味はあったけど、お父さんは保険会社の社長だったので、職人になろうとは考えてもなかったです。でも、日本は職人の文化だし、やってみようと一歩踏み出せました。

イスラエル料理のレストランは、オープン当時はありましたか?

ノー。今でも数カ所しかないです。それに、オーナーはイスラエル人でも料理人が日本人だったりする。ここはイスラエル人の僕が作るから完全に本場の味ですよ。壁にもヘブライ語ばっかりだし(笑)。店名の『タイーム』もヘブライ語で、美味しいって意味です。

店内の壁は、ヘブライ語で書かれたお客さんの名前などでぎっしり埋め尽くされている。

私もイスラエルに旅行で行ったことがあるのですが、現地の雰囲気そのままですよね。営業はランチとディナーですか?

イエス! メニューは基本一緒だけど、ランチはプレートで、夜はシナモンケバブなどの単品メニューがあります。人気のファラフェルプレートは、動物性のものを一切使ってないヴィーガンです。

ポップなランチメニューのイラストは、ダンさんの奥さん作。

食材はイスラエルから仕入れるんですか?

日本では手に入らないデーツのシロップや、タヒニ(ゴマをペースト状にした調味料)などはインポーターから直接買ってます。日本産のタヒニはゴマの皮を剥かないんですが、イスラエル産のは皮を剥いて作っているのでサラサラしてて美味しいんです。タヒニにひよこ豆のペーストを入れたら、フムスが出来上がります。

ドリンクメニューも豊富。右から、体が温まるフレッシュミント入りのナナティー(¥780)、イスラエル産のデーツシロップで作る自家製レモネード(¥880)、イスラエルから直接仕入れるトルココーヒー(¥580)。他にも、イスラエル産のワインなども揃う。

ダンさんの陽気な雰囲気もそうですが、食材にもしっかりこだわっているからイスラエルらしさが出ているんですね。何を食べても本当にタイームだし、また遊びに行きます!

インフォメーション

Ta-im

◯東京都渋谷区恵比寿1-29-16 ☎︎03・5424・2990 11:30〜15:00・17:30〜21:30 水休

Official Website
https://www.ta-imebisu.com/