フード

FOREIGN RESTAURANT’S OWNER IN TOKYO Vol.17

🇺🇿ウズベキスタン料理店『サマルカンド・テラス』アクマルさん/インタビュー・土井光

2023年4月27日

interview: Hikaru Doi
text: Shoko Yoshida

各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の外国料理店の店主を、料理家の土井光さんと巡るコラム!

今回はウズベキスタン料理! 皆さんご存じですか? 私はこちらのお店が初体験でした。お店の扉を開けるとお洒落な異国感漂う気持ちのよい空間が広がります。清潔にされた店内で、どことなく甘いプロフのいい香り。本場のプロフ鍋で作られるプロフは、日本でいう最高の炊き込みご飯です。お客さんはウズベキスタンやカザフスタンの方々もいらしてすぐに旅行気分。真面目な雰囲気のオーナー、アクマルさんは、お話ししてみるととても気さくで、インテリジェンスなお方。ウズベキスタンの魅力を流暢な日本語で教えてくださりました。味付けは思ったよりもシンプルですが、日本人に好まれる味です。そしてお好きなお料理と共に手作りデザートと特製ジュースも忘れずに! ウズベキスタンの旅行の前は、『サマルカンド・テラス』で予習をして行きましょう!

今回取材したお店の国

ウズベキスタン

・面積は日本の約1.2倍。
・宗教は8割以上がイスラム教。
・旧ソビエト連邦の共和国であり、かつてのシルクロードの東西交易の中心地。そのため、金髪ヨーロッパ系から黒髪アジア系まで容姿の系統はさまざま。ひと目見ただけじゃ、ウズベキスタン人かどうかウズベキスタン人ですらわからない。
・公用語はウズベク語だが、地域によってロシア語やタジク語も話す。ウズベク語で「美味しい」はmazali(マザリ)。

ウズベキスタン料理(以下、ウズベク料理)のお店は私がフランスにいた頃によく見かけたんですけど、日本では珍しいですよね。

そうですね。辛い? とよく聞かれるのですが、基本は素材の味を活かした塩ベースの味付けで、プロフなども見た目の想像以上にナチュラルな甘味があります。

たしかに、大人だけでなく子供でも食べられる優しい味ですね。毎日でも食べられちゃいそう!

プロフは、一週間に少なくても一度は家庭でも作る代表的なウズベク料理なんです。それに、どの街にも「プロフセンター」というプロフ専門店があって、人が入るほど大きな釜で500人分ほどのプロフを炊いています。大量に作る方が素材の味が滲み出てより美味しくなるんですよ。大人気なので、昼にはもうほとんど売り切れちゃいますね。

本場のプロフセンターで使われる、ご飯を混ぜたりお皿に取り分けたりするための巨大なしゃもじ。これでも、本場のものと比べたら小さい方らしい。下の動画は、本場のプロフセンターの様子。想像以上のスケールで作られるプロフの全貌を覗いてみよう。

ウズベキスタンに旅行するときには、プロフセンターは必須の目的地ですね!

僕の出身地でもあり店名の由来でもある都市、サマルカンドは、青色のタイルで彩られた建物が連なり、「青の都」とも呼ばれるポピュラーな観光地なので、旅行場所としてもぴったりですよ。街によってもプロフの材料や作り方が微妙に違うのですが、サマルカンドではお肉や野菜を混ぜずに最後に上にのせるだけなのが特徴ですね。

ご飯の上に具材を載せるスタイルは、日本だと受け入れられやすい気がします。カレーなども混ぜない人が多いですし、カツ丼とか親子丼のような混ぜずに食べる料理を日本人は好みますからね。

僕もそう思います。ただ、ウズベク料理自体まだまだ日本で浸透していないので、お店を作る上で入りやすい内装を意識しました。100%ウズベキスタン全開! みたいな異国感もいいですけど、馴染みのないウズベキスタン要素は抑えめにして、モダンでカフェのような雰囲気にしたんです。

ショーケースで料理やケーキが見えるのもいいですよね。名前だけ聞いてもわからないけれど、ビジュアルを知ることで選びやすくなりますもんね。

それに、ティーとケーキを頼んでカフェとしても利用できるので、意外と女性のお客さんが多いです。お酒は宗教上の理由から扱っていないので、夜も無理して飲む必要もなく、ゆっくり話せるからいいのかなと思います。ミーティングをしている人たちもたまに見かけますよ(笑)。

トルコスイーツのバクラヴァと名前は似ているが、ピスタチオではなくドライフルーツとくるみが入ったパフラヴァ(左)と、はちみつが生地に練りこまれたふわふわのメドヴィー(右)。どちらも甘ったるさはなく、軽い食べ心地。ホールでの注文も可能。ウズベキスタンから輸入しているグリーンティやアールグレイティは、ぽてっとしたティーポットにたっぷり注いでくれる。各¥500

高田馬場の駅チカにこんなスタイリッシュで落ち着ける外国料理店があるなんて、ほんとびっくりしました! お店はちょうど1周年を迎えた頃だそうですが、アクマルさんはいつから日本にいらっしゃるのですか?

来日したそもそもの理由は、大学院に通うためだったんです。ウズベキスタンの大学でエコノミーを勉強して、卒業後はアジアに行こうと思って。日本語も全くできず、日本についてほとんど何も知らなかったのですが、何人か友人がいたので来日を決めました。でも、いざ来てみると、イスラム教徒が食べられるハラルフードも、ウズベク料理も何もなかったんですよ……。

故郷の味が恋しいですよね。ウズベキスタンに帰ることも度々あったんですか?

それが、韓国にはウズベキスタン人が多く住んでいて、特にソウルの東大門という街にはウズベク料理店もたくさんあるので、故郷の味を求めて年に2、3回韓国へ行ってました(笑)。実はウズベキスタンと韓国の交流は深く、お互いの国に向かう飛行機も1日に数便あるほどなんですよ。

韓国でウズベク料理が食べられるとは予想外でした……! 

でも、日本でも食べられたらなあと思って、自分でお店をはじめようと決めましたね。

大学院卒業後にすぐお店をオープンされたんですか?

すぐではないです。一年ほど日本の会社に就職して、退職して、日本のウズベキスタン人留学生をサポートする会社を自分で立ち上げたりもしましたよ。お店を作ったのはそのあとですね。留学生も増えてきましたし、日本人もあまり癖のないウズベク料理をきっと気に入ってくれるんじゃないかと思って。

がっつりお腹を満たしたいときでも、甘いものを食べながらお茶をしたいときでも行けるのがいいですよね。テラスもあって今みたいな暖かい季節は気持ちいいですし、また遊びに行かせてください! 今日はありがとうございました!

インフォメーション

サマルカンド・テラス

東京都新宿区高田馬場3-5-5 3F ☎︎03・6908・9922 11:00〜16:00・17:00〜21:00、金14:00〜21:00 火休

Instagram: @samarkand_terrace