TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#2】マクドナルドは味がしない

執筆:宇津木陽多

2026年8月19日

車を停めやすいので、ときどき桜上水の「あぶら〜めん」に行く。

あの店には謎の企業文化がある。人気店で混雑するので、5分でも並ぶと店員さんから丁寧に謝られ、餃子までサービスしてもらえる。食べ終えて店を出ると、「ありがとうございました」ではなく、勢いよく「申し訳ありませんでした」と送り出される。

美味しいラーメンと餃子まで食べたのに、感謝ではなく謝罪を抱えて帰ることになる。なんなのだろう。

マクドナルドと同じように空腹は満たされる。それでも「あぶら〜めん」を出たあとは、腹だけではなく何か妙なもので満たされている。僕の胃には、味と一緒に人に触れた謎の体温が残っている。

僕は今まで空腹を終わらせることが食事だと思っていた。

人間が生きていくだけなら、水とパンで足りる。でも、そういうことではないだろうと誰かが言っていた。

そういえば、その通りだ。

おいしいと思うこと。誰かと食べること。今日の昼飯は何にしようかと考えること。

人生で何度も繰り返すことほど、簡単に済ませてしまいやすい。でもたぶん人生は、その繰り返しの中にある。

死なないでいることと、生きていると感じること。

空腹を満たすことと、食事を楽しむこと。

んん、これは何か、まったく違うぞ?

プロフィール

宇津木陽多

うつぎ・ようた|東京都生まれ。文化服装学院出身。在学時に第92回「装苑賞」で佳作1位を受賞。その後渡英し、ロンドン芸術大学(UAL)でアートとデザインを学ぶ。帰国後は自身のブランド準備を進め、株式会社ウツギヤでメンズライン「UTGY」を2024年よりスタート。母は「フラボア(FRABOIS)」「メルシーボークー(mercibeaucoup,)」を手掛けてきたデザイナーの宇津木えり。

https://www.instagram.com/utgyofficial/