ひと目見たら忘れない〈VILLAGE PM〉のデザインの裏側。
2026年9月14日
photo: Kazuharu Igarashi
text: Neo Iida
2025年、パリを拠点にスタートしたスケートシューズブランド〈VILLAGE PM〉。ひと目見たら忘れられないグッドルッキングなデザインには、スケートボードのために再構築したアウトドアフットウェアの開発で培った技術と機能性が詰め込まれている。 ファッションシーンからも注目を集めていて、今年から日本での正式展開もスタートしたばかりのホットなシューズだけれど、ブランドを手掛けるBasile Lapray(バジル・ラプレ)とBram De Cleen(ブラム・デ・クリーン)は口を揃えて言う。「あくまで僕たちが作っているのはスケートシューズなんだ」。二人の出会いからシューズづくりの思想、日本への思いまでを聞いた。
スケボーを通じて出会い、スケシューを作り始めた
──お二人はどうやって出会ったんですか?
Basile 僕は南フランス・プロヴァンス地方の小さな村で育ちました。子どもの頃からずっとスケートボードをやってきて、大人になって色々な仕事を経験し、ブリュッセルに住んでいたときに、ブラムの友達と仲良くなったんです。
Bram 僕はベルギーのメヘレンというアントワープとブリュッセルのちょうど中間にある街の出身で、12歳のときにスケートボードを始めてからはスケートボード漬けでした。滑ることで新しい技術を覚え、たくさんの友人ができ、文章を書いて音楽に興じ、興味もうんと広がって。それくらい人生の中心にはずっとスケートボードがありました。その後はロッテルダム、アントワープ、ブリュッセルを行き来する生活をしていて。10年前くらいかな、ブリュッセルに戻ったら、僕の友達とすっかり仲良くなっているバジルがいて。僕の昔からの友人グループに「新しい友だち」っていうセットができた感じ(笑)。僕も広場で一緒にスケートをするようになって、ブリュッセルを離れたあとも親しい関係が続いたんです。
Basile その後は二人とも別々の街へ移ったけど、連絡は取り続けていて。コロナ禍のあと偶然パリで再会して、そこからブランドの話が本格的に動き始めたんです。
──ブランドを始める前は、それぞれどんな仕事をされていたんでしょう?
Basile 僕はフットウェア業界にいました。最初は〈Salomon〉で働いて、その後は元同僚たちと立ち上げた会社でアウトドアシューズの研究開発をしていました。登山靴やトレイルランニングシューズ、クライミングシューズなど、スポーツの限界を押し広げるための靴ですね。
Bram 僕はいろいろな仕事をしてきましたが、共通しているのは「スケートボード」と「書くこと」だと思います。コンクリートのスケートパークを作る仕事もしていたし、スケートブランドやメディアで記事を書いたり、インタビューをしたり、ブランドのコピーを書いたりもしました。ほかにもウェブサイトやアプリのコピーライティングとか、主に言葉に関わる仕事ですね。
──お二人の経験が、そのままブランドのなかでの役割にもなっているんですね。
Bram そうですね。Basileはシューズそのものを設計する側の経験があったし、僕はカルチャーやコミュニケーションの仕事をしてきた。その二つが合わさったのが〈VILLAGE PM〉なんだと思います。
──そもそも、昔からブランドを立ち上げたいと思っていたんですか?
Basile 「いつかシューズブランドをやりたい」という気持ちはありました。ただ、どうすれば実現できるのかわからなくて、どこか遠い世界の話だと思っていました。でもBramと靴の話をするようになって、話せば話すほど「やれるかもしれない」と思えるようになっていきましたね。
Bram 僕ら自身のタイミングも大きかったよね。キャリアを積んで、自分たちの名前で勝負できる準備が整ってきたんです。それと同時に、マーケットにも「こういうブランドが必要なんじゃないか」というサインが見え始めていた。「今ならスケートシューズに新しい価値を提案できる」そう思えたことが大きかった気がします。
Basile 僕はずっとヒマラヤで使われるブーツや、フランス代表クライマー向けのシューズを作ってきて、ずっとフットウェアイノベーションの世界にいたんですよね。そこにいてわかったのは、アウトドアの世界はスケートボードよりも技術革新がずっと進んでいるということ。最先端の機能開発を見ながら、「この技術をスケートボードにも応用できるんじゃないか」と考えるようになっていきました。
──なるほど。その開発経験は、具体的にどんなふうにスケートシューズに生きているんでしょう?
Basile 一番大きいのはクライミングシューズから着想を得たラスト(木型)で、足をしっかり包み込む形状をしています。さらに新しいアッパーとソールの接合方法として、独自の「Rubber Glove Construction」を開発しました。これによりフィット感やボードフィールを高めているんです。
──あっ、ソールからアッパーまで継ぎがない一枚のラバーなんですね!
Basile そうです。あとシューレースを前方まで伸ばしているのも、細かくフィット感を調整するためなんですよ。
──構造すべてに意味があって面白いです。
Basile シューレースの配置が斜めなのも、オーリーやキックフリップで一番擦れる場所からシューレースを守るため。僕たちの中心にあるのは、「自分たちが本当に誇れるものを作りたい」「スケートボードで性能を発揮するシューズを作りたい」という思いです。アウトドアの要素は参照元ではありますがコピーではなく、スケートボードのために最適したもの。僕たちがやりたいのはスケートブランドであって、カルチャーのルーツはずっとスケートボードにあるんです。
Bram 参考にしたのは、耐摩耗性やフィット感、精度といった機能だけ。ブランドのDNAやカルチャーという意味では、〈VILLAGE PM〉はあくまでスケートボードブランドです。
機能美を追った結果、ファッションに接続した
──スケートボードのためのシューズでありながら、ファッションシーンからも強く支持されていますよね。そういった声についてはどう捉えていますか?
Bram 僕らは「ファッションのためのシューズを作ろう」と考えたことはありません。でも快適さや精度、頑丈さ、そういう機能的な価値は、見た目にも現れてくるものだと思うし、それが結果としてファッションの文脈でも評価されているんじゃないかな。
Basile もちろん見た目も気に入っていますよ(笑)。でも、例えば有名ブランドも似たようなデザインをたくさん作っていますけど、半年後には別の形に置き換わってしまうことが多いですよね。その点僕たちの靴は「なぜこの形なのか」という理由がちゃんとある。そこを評価してもらっているんじゃないでしょうか。
──VILLAGE PMのスタイルはファッションのトレンドから生まれたわけではなく、あくまで機能や目的から実直に生まれたものなんですね。ブランドはどうやって広まっていったんですか?
Basile 最初はサンプルを持って、自分たちでパリのショップを一軒一軒回りました。最初に訪ねたのは『The Broken Arm』。そこでもらった反応が本当に大きな自信になりましたね。それからパリ・ファッションウィークではトラックを使ったポップアップを行い、世界中のバイヤーやクリエイターと出会うことができました。
──今年から日本でも正式に展開が始まっています。お二人は日本についてはどんな印象を持っていますか?
Basile とてもワクワクしています。というのも、日本はヨーロッパ以外で最初の展開先なんです。ブランドは2025年3月末にスタートして、現在が3シーズン目。市場に出てまだ1年しか経っていないんですけど、このタイミングで初めてヨーロッパの外へ出られることがとても嬉しくて。それに、最初の進出先が日本だったことはとても自然な流れでした。ブランドを始めた当初から、日本からたくさんの問い合わせや反応をもらっていたから。それに、僕は家族旅行で来たことがあるんですよ。そのときは母と姉と一緒だったんですけど、今回姉もブランドメンバーとして一緒に来れて嬉しいです。
Bram 僕も一度だけ日本に来たことがあります。〈ÖCTAGON〉のみんなとスケートトリップで。確か2016年頃だったかな? いいところだよね。
──日本のスケートカルチャーのことはどう見ていますか?
Bram それはビッグクエスチョンだね(笑)。ひとつ確実に言えるのは、日本のスケートボードには独自の視点とアイデンティティがあるということ。世界にはカリフォルニアの影響を強く受けている国がたくさんあるけど、その中で日本は日本らしいスケートカルチャーを持っている。そこが本当に魅力的だと思います。
インフォメーション
〈VILLAGE PM〉
ヴィレッジ ピーエム
2025年、フランス出身のBasile Laprayとベルギー出身のBram De Cleenがパリで設立したスケートシューズブランド。アウトドア由来の技術をスケートボードへ応用した独自のフットウェアを展開し、機能性に裏打ちされたデザインで注目を集める。2026年より日本での展開をスタート。
Official Website
village-pm.com
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