カルチャー

11月はこんな映画を観ようかな。

言いたいことも言えないこんな世の中だからこそ観たい4作。

2022年11月1日

『ドント・ウォーリー・ダーリン』
オリヴィア・ワイルド(監)

(C)2022 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

青春映画の新しいマスターピース『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のオリヴィア・ワイルドによる待望の長編監督第二作なのだが、これは驚いた。なんせ50年代と思しきアメリカ西海岸の街を舞台に、夫ジャックと何も不自由のない暮らしを営むアリスが、この街の秘密を知ってしまうというスリラーなんだから(コメディアンのリチャード・アイオアディが青春映画『サブマリン』の後にスリラー『嗤う分身』を撮ったのを思い出した)。ただし、そこは物語には社会が押し付ける女性の役割分担への批判も織り込まれている。さすがオリヴィア! 11月11日より公開。

『パラレル・マザーズ』
ペドロ・アルモドバル(監)

(C)Remotamente Films AIE & El Deseo DASLU

写真家のジャニスは不倫の末に妊娠し、シングルマザーになることを選ぶ。しかし、不倫相手は生まれてきた赤ん坊を見た瞬間、「肌の色が違う。自分の娘とは思えない」と言い放つ始末。どんだけ最低男なんだと思うかもしれないが、実はそういうわけでもない。実際、DNAテストをしてみれば、不倫相手はおろかジャニスとも一致しないのだ。どうやら入院中の隣のベッドにいたアナの子供と取り違えられてしまったらしい。見逃せないのは、1930年代の軍事政権下のスペインにおいて行われた大量虐殺という史実を組み入れることで、その物語に重たい膨らみを持たせている点。そんな事件があったことを知らなかった人こそ観るべし。11月3日より公開。

『ブラック・イナフ?!? -アメリカ黒人映画史-』
エルヴィス・ミッチェル(監)

1970年代のアメリカ映画において、アフリカ系アメリカ人の果たした役割は計り知れない。本作は、これまであまり顧みられることがなかったその視点に立脚して、映画史をひもといたドキュメンタリー。サミュエル・L・ジャクソン、ウーピー・ゴールドバーグ、ローレンス・フィッシュバーン、ゼンデイヤなどの錚々たる面々がインタビューに答えているのもすごいが、なにより傑作『キラー・オブ・シープ』のチャールズ・バーネット監督が登場している点がファンとしては大変に嬉しい。11月11日よりNetflixにて独占配信。

『フォーリング・フォー・クリスマス』
ジャニーン・ダミアン(監)

主人公はホテルを相続したシエラ。しかし、彼女は婚約後間もなくスキー事故で記憶喪失となってしまい、ハンサムなロッジオーナーとその娘に世話をされることに。そんな中、目と鼻の先にはクリスマスが迫ってきて……という超ストレートなロマンチックコメディであり、人によってはスルーしてしまうかもしれない。しかし、シエラを演じているのは、あのリンジー・ローハンだ。かつて青春映画のスターとして一世を風靡しながら、プライベートでいろいろな問題を抱えて久しく一線から遠ざかっていた彼女の帰還を、祝福せずになどいられるだろうか。いや無理だ。というわけで、まだちょっと気が早いが、本作でクリスマスの心の準備をするしかない。11月10日よりNetflixにて独占配信。