カルチャー

しまおまほのセクよろ/season2

第10回:だらしない下着。

2022年3月22日

text & illustration: Maho Shimao
2022年4月 900号初出

インスタグラムに表示される広告の話になって。ある人はプロテインの広告ばかり上がってくるといい、ある人は精力アップのサプリのものばかりが目につくという。そしてわたしのインスタには……でっかいパンツの広告ばかりが表示される!

 たしかに秋頃に「腹巻き 一体 パンツ」とか「下着 おへそ 隠れる」とか「パンツ 膝まで」とか「モモヒキ おしゃれ」で検索してはいたけれど……他にも調べていたものはあるはずで。なんでこうもパンツの広告ばかり? と不思議なのです。ブラジャーの広告も時々出てくるけどやはり「締め付けない」とか「ゆったり」などの謳い文句が並んでる。ああ、きっとわたしは下着にだらしなさしか求めていない40代女性だとAIに判断されているんだろう! 全部正解です。もはや下着の面積は、広ければ広いほど安心感しかない! 幸い、最近はでっかいパンツが逆にオシャレ、って傾向も出てきたので助かっています。キム・カーダシアン、Thank you.

 かつて実家に住んでいた頃。高校から大学にかけて逆に面積がどんどん狭くなっていった時期がありました。いや「どんどん」ではないな。親の目を気にしながら、徐々に、ジワジワと。実家暮らしはここが悩みどころで。親に色気づいているとは死んでも思われたくない。特に父親とは名ばかりの妖怪・ノーデリカシー男には。でも洗濯物を分けるのは面倒だし、パンツのために一人暮らしするのもなあ……。そんなわけで、独房の壁を少しずつ少しずつ掘っていくように、ミリ単位で下着の面積を狭めていく。ちょっと勘付かれたと思ったら、しばらくグンゼはいて、最近こっちに関心を向けていないなと思ったらピーチ・ジョンをカラーボックスから取り出す……そんな“だるまさんが転んだ”的な攻防を家の中で繰り広げてました。あの頃のジーンズは皆ローライズで、グンゼ期にはハミパンしないように丁寧にゴムを折りたたんでいたものです。

 最近、当時買ってそのままタンスに眠っていた下着が数枚出てきて。親に見つかりそうになって、隠してそのままになったやつ。それを見て、遠い目になってしまった。発色の良さ、生地の薄さ、柄の大胆さ! それに比べて今のわたしよ……モスグリーン、モスピンク、モスベージュ、モスグレー。

 とはいえ、発見された昔の自分セレクトの下着ははく気にもなれず、またそっとタンスの奥に。

 いつか、本当のモス(苔)が生えたらはけるかもしれません。

プロフィール

しまおまほ

漫画家、エッセイスト。1978年、東京都生まれ。最新著は子供にインタビューしたルポルタージュエッセイ『しまおまほのおしえてコドモNOW!』。