CULTURE

しまおまほのセクよろ/season2

第2回:セクシーチャーハン。

2021.07.14(Wed)

text & illustration: Maho Shimao

 15年ほど前「セクシーチャーハン」なるものを食べた。その存在を知ったきっかけはバッファロー吾郎とケンドーコバヤシのラジオ「スッごい! おとなの時間」(MBSラジオ)だった。当時吉本芸人が定宿にしていた六本木「ホテルアイビス」。「アメトーーク!」で「ホテルアイビス芸人」が取り上げられるずいぶん前からケンコバがことあるごとに番組でアイビスを話題にしていて、その周辺情報として出たのが、とある居酒屋のメニューにあるセクシーチャーハンだった。後輩芸人とフラリと入ったその店で目にした「セクシーチャーハン」。一体どんなものかと興味本位で注文したところ、今までに見たことのないとんでもない代物が運ばれてきたというのだ。ケンコバ曰く「セクシーなんてもんじゃない」。とにかくその場にいた全員の想像のはるか上をいくチャーハンが現れたと、いたく興奮していた。わたしはいてもたってもいられなくなり、友人5、6人と連れ立ってその店へ行くツアーを組んだのだった。

 店の名は『美豚(ビトン)』。そのネーミングセンスから、うっすらと嫌な予感を感じつつ、店に入った。とりあえずビールと他の料理を頼むことにした。焼き鳥……美味しい。唐揚げ、サラダ、煮物も好みの居酒屋テイストだ。これはケンコバもラジオで話していた。「普通にウマいねん」と。空の皿が増え、チャーハンの注文はそろそろじゃないのか、誰が頼むのか、人数的に2つ頼んだ方がいいんじゃないか? 視線でそんな駆け引きを交わした後、わたしから店員の女性に声をかけた。

「セクシーチャーハンひとつ」

「5番テーブルさん、セクチャーおひとついただきました〜!」

 店に響く「セクチャー」。恥ずい。恥ずすぎる。ケンコバがそうだったように、我々も何気なく入った体でいたい。セクシーチャーハン目がけてわざわざ電車を乗り継いで大人数で来たと思われたくない。

 そして運ばれてきたのは、大きめの皿にチャーハンがふた山。その山の頂上にはマヨネーズと明太子で作られた乳房。つまりチャーハンで作られたオッパイ。それだけではない。谷間に大きく反り上がったフランクフルトが挟まれている。そのフランクフルトの先に少しだけ切り込みが入れられており、そこからホワイトソースが垂れている。皿にも少し飛んだような演出の飛沫が足されていて、極め付きはフランクフルトの根本。細い刻み海苔がたっぷりかかっていた。そう、それは陰毛を表していた……。

 ケンコバの言う通りセクシーなんてもんじゃなかった。食べ物でこんなことしていいのか。陰毛って食べ物で表してはいけない1位だと思った。でも、美味しかった。乳房部分のマヨネーズと明太子が効いていた。六本木にもう「ホテルアイビス」はない。『美豚』はどうだろう。検索してみると、健在のようだ。セクシーチャーハンの画像も大量に見つかる。セクチャーには、キンタマを模したコロッケが有るバージョンと無いバージョンがあるらしい。

プロフィール

しまおまほ

しまお・まほ|漫画家、エッセイスト。1978年、東京都生まれ。最新エッセイ集『家族って』が好評発売中。
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