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介護の現場を知りたくて。- ショートステイ&訪問介護編 –
2024年10月16日
photo: Naoto Date
illustration: LAZY PIZZA DELIVERY
text: Neo Iida
ショートステイを利用する高齢者一人ひとりのニーズに、沿ったケアを提供する。
プロフィール
関 隼汰朗
せき・しゅんたろう|2000年、埼玉県生まれ。立正大学社会福祉学部卒業後に福祉楽団に就職。埼玉県八潮市にある「杜の家やしお」に配属。副業としてランニングのコーチも。
介護と陸上。ダブルワークがやりがいに繋がる。
「もう少し自立している人が多いと思っていました。胃ろう(胃に穴を開け、チューブで栄養を補給する医療措置)の方もいるし、思ったより介助が大変だなと」
特別養護老人ホーム「杜の家やしお」で働いて3年目の関隼汰朗さんは、新人の頃の気持ちを正直に話してくれた。中学時代から陸上少年で、進学もスポーツ優先。大学でも走り続けたが、籍を置いた社会福祉学部で学ぶうち福祉に興味を持つようになった。さらに実習でホームレス状態にある人たちの支援を体験し、いつかこんな仕事ができたらと思うように。そんなとき、ゼミの先生が社会福祉法人福祉楽団のことを教えてくれた。
「『恋する豚研究所』という障害福祉サービスを行う就労継続支援A型の事業所をはじめ、いろんな事業を行っていて面白そうだなと。いつかホームレスについても扱うかもしれないし、それにどんな福祉の分野にも高齢者はいる。介護は福祉の基盤だから、ぜひ学びたいなと」
こうして福祉楽団に入職。配属された特別養護老人ホーム「杜の家やしお」には、利用者10人ごとの小さなコミュニティ「ユニット」が存在する。食事を共にし、テレビを見たり洗濯物を畳んだりしながら、暮らすように日々を送るのだ。関さんは、一時的に滞在するショートステイのユニットを担当することに。
「個室は10床で、日によって利用者さんが入れ替わります。契約をされている方は約50人で利用頻度もまちまち。最初は名前と特徴を覚えるのが大変でした」
慣れないことばかりで最初はくじけそうになったけれど、新入職員研修を受けるうち徐々に仕事に慣れていったという。
「認知機能や身体能力が落ちている方が多いのですが、チョコフォンデュ作りを企画したら、皆さん上手に作るし、おいしそうに食べてくれました。できないと決めつけずに促してみると結構参加してくれるんですよね。それも発見でした」
どう対応したらいいかわからないときは、迷わずチームに相談する。職場の風通しの良さも大きいと関さんは言う。
「スタッフは、早番、遅番、夜勤とシフト制でユニットに入ります。一人で利用者さんと向き合うのではなく、関わるスタッフ全員で考える。チームで話し合ったケアがうまくいくと嬉しくなります」
副業が認められている点も、関さんの人生に色濃い影響を与えている。
「陸上への恩返しというか『教えられる立場から教える立場に』と思ってきました。今は副業でランニングのコーチをしています。スタッフの個人的な挑戦を応援してくれるからすごくありがたいです」
介護には「大変そう」というイメージがあるし、関さんも最初はそう感じていた。でも今はそれを上回るやりがいがある。
「その人に合ったケアを考えられたときは、何とも言えない気持ちに。迷っている人はぜひ飛び込んでみてほしいです」
インフォメーション
杜の家やしお
2008年に開設した、社会福祉法人福祉楽団が手掛ける特別養護老人ホーム。定員は100人で全室個室。10人を1ユニットとして暮らしを営む「ユニット型ケア」を実践する。長期入所だけでなく、ショートステイや訪問介護、居宅介護支援も。保育施設も併設する。
◯埼玉県八潮市鶴ケ曽根567-1 ☎048·999·7667
Official Website
www.gakudan.org
利用者の自宅を訪ね、食事や入浴等をサポートする、生活に身近な訪問介護。
訪問介護のサービスの種類は、洗濯や掃除などの生活を支援する「生活援助」、有吉さんが担当した入浴や、食事、排泄など身体に直接触れる介助を行う「身体介護」、通院などの移動をサポートする「乗車・降車等の介助」の大きく分けて3つ。利用者が望む生活を送るために必要な介護サービスを、ケアマネジャーの支援を受けながら選択し、各事業所と契約。契約後は事業所と直接やりとりに。
プロフィール
有吉凛
ありよし・りん|1999年、埼玉県生まれ。日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科を卒業後、でぃぐにてぃに就職。訪問介護に従事する他、1年目の冬より採用担当も兼務。
人生にお邪魔しながら、何が必要かを考え続ける。
電動自転車に乗って颯爽と高田馬場を走る、有吉凜さん。行き先は近隣に暮らす介護を必要とする方々の自宅だ。有吉さんが勤める「でぃぐにてぃ」では、訪問介護等、家に暮らす方の支援を行っている。
「お客さまのご自宅に伺うと、その方の人生にお邪魔しているような気持ちになります。掃除の仕方も洗濯物の畳み方も、一人ひとりやり方が違うんだなと改めて実感する。好みに合わせられるとやりがいを感じます」
父親が働く社会福祉法人に手伝いに行ったこともあるし、学校に特別支援学級もあった。だから助けを必要としている人がいて、サポートする仕事があるという認識は幼い頃から持っていた。大学は社会福祉学部を選んだが、その時は将来を見据えてはいなかったという。意識したのは、就職活動を始めた頃だ。
「一般企業も検討したんですが、ちょうどコロナが流行した年で、募集をストップしている企業が多くて。でも、福祉業界からはずっと求人が出ていたんです。せっかく勉強したんだし、1回くらい仕事してもいいかなと思って応募しました」
募集はあれど、感染対策で見学はできず。やむなくオンラインで情報を探した。
「そのうち、医療機関や特別養護老人ホームもいいけれど、施設側の都合で動かざるを得ないこともあるのかな、訪問のほうがフィットするかも、と思うように。そこで『でぃぐにてぃ』を知り、飛び込みました。資格はなかったし、訪問の現場を見たのも入職してから。未経験の新卒を受け入れてくれて、ありがたかったです」
訪問介護とひと口に言っても、ケアの内容は多岐にわたる。シフトは1週間単位で決められ、誰がどこへ行き、どんな介助をするかが割り当てられている。
「食事、洗濯、入浴など、お客さまの『これをしてほしい』というご希望に応じたケアをするのが私たちの仕事です。今日のお客さまはお風呂が大好きで、うちでは週5日ほど入浴介助を担当しています。家のお風呂に入りたいという思いを叶えられるのが訪問のいいところです」
有吉さんの入浴介助は、なんともテキパキ、手際がいい。しかし大人をお風呂に入れるって、相当難しいことなのでは?
「私も未経験で、遠い昔に妹を入れたことがあるくらい(笑)。でも研修を経て、徐々にコツを覚えました。面白いのが、皆さん好みの力加減が違うこと。ゴシゴシお願いねとか、泡でふんわりとか。洗い方ひとつに生活が見えるんです」
本日訪れたのは、定年間際に事故に遭い、首から下の身体機能が麻痺してしまった利用者のお宅。ベッドから離れて温まる、お風呂の時間が楽しみなんだそう。有吉さんは到着すると、濡れてもOKな介助服にお着替え。訪問先ごとに身体の状態も部屋の構造も異なり、こちらの寝室では電動リフトを利用し、車椅子で浴室へ移動する。頭を洗い、背中を流して浴室のリフトで浴槽へ。温まっている間にベッドメイクを行い、戻って足をマッサージ。「血流が悪くなってもご自身では不快感を感じられないので、こうしてほぐすようにしています」。入浴後は着替えて再びベッドへ。奥様ともお話をし、概ね1時間ほどで介助終了。
訪問介護で大事なのは考えることだと有吉さんは言う。
「置かれている状況は徐々に変わりますし、痛みや辛さは深いところまではわかり合えない。だからこそ、今何がいちばん大切なのか考え続けないといけない仕事です。大変だけど、ケアが繋がると達成感がある。お客さまにもきっとプラスになると思うんです」
インフォメーション
でぃぐにてぃ
「世界いち気持ちいい介護」を掲げ、訪問介護サービスを提供する事業所を運営。2014年設立。対象エリアは事業所から自転車で30分以内の新宿区および豊島区の一部。代表の吉田真一さんは四肢麻痺がある介護の当事者。質の高いケアを目指す。
◯東京都新宿区高田馬場1-29-7 スカイパレスビル504 ☎03·6265·9048
Officail Website
https://digunity.co.jp/
ananの記事はこちら。
https://ananweb.jp/anan/571833/
こここの記事はこちら。
https://co-coco.jp/series/nursing/
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