カルチャー

しまおまほのセクよろ/season2

第6回:だから、食べ物に例えないで。

2021年11月19日

text & illustration: Maho Shimao
2021年12月 896号初出

 2、3ヶ月に1度渋谷でプロ書評家の吉田豪さん、ビデオ考古学者コンバットREC、そしてわたしというメンツでトークイベントをレギュラー開催している。テーマは時事ネタだったり、理想のラジオ番組表を作る……など、その時の3人のノリで適当なのだけれど、最近毎回必ず話題になるのが「ウォシュレット」。コンバットRECはウォシュレットヘビーユーザーで、自宅の作業部屋からラジオのスタジオ、仕事場、イベント会場……全ての椅子にウォシュレットがつけばいいのにと思っている、と、ひょんなことからそんな話題になった。お尻に温水が当たる心地良さがたまらないらしい。まるで温泉に入っているかのような気持ち良さだ、とのこと。一方、豪さんとわたしは特にウォシュレットを必要と感じていないウォシュレットNOユーザー。使うことはほぼない。用を足した後に毎度尻を洗うなんて時間のロスだと思っている。水飛沫をティッシュで拭かなきゃいけないし……温風で乾かす便器もあるらしいけど、便器から出る生温かい風ってなんか抵抗ない? って思っちゃう。そう言うと、RECさんに「お前ら何にもわかっていない」と反撃される。ウォシュレットで綺麗に洗う時の爽快感を知らないなんて可哀想に、と。毎度エンドレスでこのやりとりをしているのだけど、豪さんとわたしは一向にウォシュレットユーザーになる兆しはない。ちなみに、RECさんオススメのウォシュレットは新宿伊勢丹のトイレに設置されているものらしい。これを聞いて、いくら綺麗だとはいえ公衆トイレでウォシュレットなんて……と、論争はさらに続く。

 そういえば、子どもが生まれる直前に痔になった。妊婦あるあるらしい。検診の時に医師が「うわー」と言ってから何やら肛門のあたりをツンツンしている。直接尻に触れられている感触はなく、肛門とツンツンの間に何かの塊があって、それをツンツンされると肛門近くの皮が引っ張られている感覚がある。それが痔だった。「プチトマトくらいだね」と。食べ物で例えないで! と心の中で叫びつつ、帰りに処方箋薬局で痔の薬をもらったのだけれど、それがチューブとかでなく、浣腸みたいな形で、明らかに「尻の薬でっす!」というビジュアルで、それを14本くらい渡されて赤面しながら大雨の中を帰った。家について、クリーム色のそれを取り出し「イチジク浣腸みたい……」としげしげと眺めたものだ。イチジク……だから食べ物に例えないで! その時くらいかな、ウォシュレットが必要だったのは。

プロフィール

しまおまほ

漫画家、エッセイスト。1978年、東京都生まれ。最新エッセイ集『家族って』が好評発売中。