カルチャー

しまおまほのセクよろ/season2

第3回:海外旅行と捨てられないパンツ。

2021年8月6日

text & illustration: Maho Shimao

セクよろ

1年半以上続くコロナ禍で意外なところに弊害が出てきた。捨てられないパンツが溜まってきてしまったのだ。コロナ以前、パンツは旅先で捨てるものと決めていた。しかもなるべく遠い場所で。熊本、沖縄、台湾、香港、ベトナム、インド、イギリス、フランス、スウェーデン、カナダ……。あらゆる場所で捨ててきた。

 地元の、いつものゴミ捨て場に捨てる気にはどうもなれない。もし、カラスが袋を破って咥えていたら。もし、時々現われるゴミチェック&持ち帰りオジサンに見つかってしまったら。捨ててからすぐに収集車が来てくれるのならまだ良いのだけれど、自宅からほど近い路上に2時間3時間と自分のパンツが放置されることになるのは落ち着かない。また、旅の荷物に持って帰ってくる前提で下着を用意すると使用済のものを帰ってから洗わなければならない。長旅だとバスルームで洗ったりもするけれど、帰国日が近づくとどうしても生乾き状態or未洗濯のものを持って帰らざるを得ない。

 そこで、旅には穿き古したパンツと生地がうっすくなったTシャツを持っていき、旅の最終日に捨てて帰る、と言うのが恒例だった。ほんの少しだけれど、トランクのスペースも空く。捨てる場所のオススメは空港の保安検査場直前のダストボックス。「楽しかったよ、また来るね! バイバイ!」と心の中で唱えてダストボックスに思い切りボスッ! っとパンツの入ったビニール袋を捨てる。もちろん二重で、口もかたく絞ってある。そのくらいのマナーは持ち合わせてる。

 帰国日に穿いて帰るパンツのことをちゃんと考えてローテーションを組まないと、うっかり捨てるつもりだったパンツを穿いて帰る羽目になるので、そこは注意。

 で、コロナ禍で旅に出ることができなくなって、本来なら捨てられるべきパンツがいつまでも家に居座っている。もう鼠蹊部がスカスカなパンツ。腰のゴムでかろうじてぶら下がっている暖簾状態のパンツが現役ヅラして新米パンツと肩を並べている。ああ、許せない。コロナさえなければオマエらは今ごろ異国の空港で言葉の通じないゴミたちと処分されているはずなのに……。さー日本に帰るぞーと思いきや、保安検査場手前で置いていかれる運命だったのに!

 と、いうわけで……早くコロナが終わりますよーに♡

プロフィール

しまおまほ

漫画家、エッセイスト。1978年、東京都生まれ。最新エッセイ集『家族って』が好評発売中。