CULTURE

しまおまほのセクよろ/season2

第4回:あれは一体なんだったんだろう!

2021.09.19(Sun)

text & illustration: Maho Shimao

腕にきのこが生えたことがある。たぶん、きのこ。右の上腕あたりに小さいエノキみたいなのがヒョロヒョロ〜ッと。傘もちゃんとあった。高校生の時のことで、特にそれを話したい相手もいなかったので(今考えたら親とか友達のユキちゃんとかいただろうと思うのだけど)人知れず育てることにした。服の脱ぎ着や風呂に入っても抜けることなく、軽く引っ張ると皮膚も一緒に引っ張られた。しかし1ヶ月程経ち、6〜7ミリくらいまで伸びたところであっけなくポロッと落ちてしまった。あれは一体なんだったんだろう!

 そんな記憶が他にもあって。20年くらい前、ある有名なキャラクターを取り扱う事務所へ仕事の打ち合わせで行った時のこと。メインキャラクターのお友達が新登場することが決まったということで、彼女の性格や口グセなどを考えて欲しいという依頼だった。

 会社に着いて、通された部屋で担当の人を待った。最新のおもちゃやキャラが並ぶ棚を眺めていると若い女性が部屋に入って来た。メニュー表を持っている。その会社は客にメニュー表から飲み物を選んでもらうシステムになっているという。コーヒー、カフェラテ、抹茶ラテ……メニューが決まり、フッと視線を座っているわたしの横に立つ彼女の方へ向けた時、途中で……何か……岩のりのような……黒いものが視界に入った。違和感があったわたしは、彼女の顔からゆっくりとメニューに視線を戻し、気づかれないようにその岩のりを探した。顔……胸……すごくピタピタで丈の短いTシャツだ。おへそが出ている……おへそ……岩のり!

 ピタTとローライズのジーンズの間に、岩のり! そう……アンダーヘアーが出ている。わりとガッツリ。マジで?

 頭が真っ白になり、何を頼むのかすっかり忘れて、メニューの一番上のコーヒーを頼んだ。飲みたいのはコレじゃなかったのに……。

 彼女が部屋から出て、担当者の男女2名がやって来た。名刺交換、世間話……もうすぐ来る。彼女がコーヒーを持って。直してくるか? それとも……そのままだった! 岩のりを出したままやって来た! そして、担当者にもメニューを渡す! 担当者、涼しい顔でそれを受け取る! 普通に頼んだ!

 気づいていないのか、朝から出っ放しだから慣れちゃったのか……。

 その後、彼女はやっぱり岩のりを出したまま飲み物を2つ、お盆に乗せて部屋に入って、お辞儀をして出て行った。

 あれは、一体、なんだったんだ!

プロフィール

しまおまほ

漫画家、エッセイスト。1978年、東京都生まれ。最新エッセイ集『家族って』が好評発売中。
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