カルチャー

しまおまほのセクよろ/season2

第5回:放屁と鈴木義司。

2021年10月24日

text & illustration: Maho Shimao

 我が家では、寝室が狭いので大人用のベッドと子ども用ロフトベッドをT字に交差させ、オリジナル2段ベッドを作った。子ども用ロフトベッドにはトンネル状のテントの屋根がついていて、ちょっとした個室のようになっている。これはさぞ子どもが喜ぶだろうと思いきや……1度か2度寝て、それ以降は下の大人用ベッドで寝るようになってしまった。梯子の登り下りが面倒だし、ひとりで寝るのは寂しいと言う。結局、大人用でわたしが子どもを寝かしつけ、寝た後にわたしがロフトベッドで寝る、という逆転現象が起きてしまった。ロフトベッドなんて子ども時代の憧れだったし、わたしはちょっと嬉しかった。壊れないか、心配だったけれど枕元にペットボトル、ラジオ、雑誌、iPad……。完全に自分の城としてロフトベッドを楽しむように。

 ロフトベッドが自分のものになって1週間ほど経った夜。いつものように子どもを寝かしつけ、自分は梯子を登ってロフトベッドに滑り込むと、夜中にひどい臭いで目が覚めた。家のすぐ外で誰かがウンコをしたのか、それとも自分がウンコを漏らしているのか……とにかくそんな臭い。どちらも違った。ちょうどロフトベッドの下あたりに息子の尻があり、どうやら放屁したらしい。テントが張られたロフトベッド内には臭いが籠りに籠って、オナラ部屋が完成していた。息をするのも辛くなり、プハーッ! と、トンネルの先から頭を出した。まるで土管から頭を出した鈴木義司のように……。以来、何度も息子の寝屁で眠りから覚めるように。野菜嫌いで肉と魚、納豆ばかり食べている息子の屁は強烈なのだ。

 しかし、ある夜。またもや臭いで目が覚めたのだが、どうも息子の臭いとは違う。母にもなれば、息子のオナラか否かはちょっと嗅げばすぐわかる。しばらくもんどりうちながら嗅覚を澄ましてみると……そういえば。ここ数日煮卵作りにハマっていて、毎日煮卵を食べている。そう……自分の寝屁だった。今もロフトベッドに寝ているが、あれ以来頭は外に出した鈴木義司スタイルにしている。

プロフィール

しまおまほ

漫画家、エッセイスト。1978年、東京都生まれ。最新エッセイ集『家族って』が好評発売中。