将棋ファイル

高見修平&髙嶋海/将棋ウォーズ1級

スケートボードをテーマに、路上の自由を輝きを、さまざまな角度で表現する実験的な写真誌『川』。今年6月に発表した9号目「ふろう」は記憶に新しいだろうけど、さておき、主宰するフォトグラファー関川徳之さんによると、意外にも将棋を指すスケーターが多いのだとか。過度なルールはなんのその、我が道を貫く彼らは一体どんなスタンスで楽しんでいるのだろう。石川県金沢市に住む2人に聞いた。

2026年8月20日


photo: Noriyuki Sekikawa
text: Fuya Uto
edit: Masaru Tatsuki

ーーお互い将棋は何歳ぐらいから触れたのですか?

(高見)小学生のときに動かし方を覚えましたね。大人になるまで全然やっていなかったんですが、スケーターの友達が指していて、それでまたやり始めました。誰かが車に将棋盤を積んでいて、スケートしている合間の休憩中に指すこともよくありましたよ。

(髙嶋)自分も小学校の低学年だったと思います。同じく当時は周りの友達と遊びでやる程度で、やっていない時期も。大人になってから、先輩のスケーターに将棋が強い人がいて、当時、家でチルしているときなんかに指すようになりました。今は仕事の昼休憩で、アプリの将棋ウォーズで2、3局やるのが日課になっています。

ーー2人とも大人になってから再び始められていますよね。どんなところに魅了されたからなのでしょうか?

(高見)暇つぶしですね(笑)。単純にちょっと暇なときに将棋ウォーズでパッと指す、みたいな感じでハマっていったんです。正直、頭の運動という感覚はないけれど、強かったらカッコいいというのはあるかもしれません。考えるのは好きなので、棋士の羽生善治さんや藤井聡太さんの対局は見ますし、手詰の本を解いたりもしています。対局して負けたくねえなっていう気持ちがありますね。

(髙嶋)負けたらめっちゃ悔しいんですよ。将棋って運の要素がないゲームなので、負けたほうがシンプルに弱い。それがハッキリしているところが面白さですね。その先輩が、小さいころから将棋クラブに通っていた人で、いろいろ教えてもらったんです。例えば、「『棒銀(ぼうぎん)』っていう戦法を一度覚えてみれば」と言われ、調べて指すようになったら、わかりやすく勝てるようになって。そうなると、一気にハマると思います。

(高見)勝つとやっぱり嬉しい。なんなら勝った後も「ここであの手を指してたら、そっちが勝ってたね」みたいな感想戦をよくするくらいです。「ここで俺、迷ったんだけど」って盤を戻して、相手とゆっくり会話をするので、コミュニケーションとしても良いものかもしれません。大体、周りの人たちは将棋ウォーズをやっていて、級や段が近い相手と指すことが多く、県外に行ったときでも現地のスケーターと一局したりもします。

左側にいるのが高見修平さんで、右側の白Tシャツを着ているのが髙嶋海さん。

ーースケートと将棋に共通点を感じますか?

(高見)似てなくはないかもしれません。将棋って基本は2人で指すけれども、オンラインでコンピューターを相手にしたり、一人で盤を置いて検討したりもできる。そういう「自分一人で楽しめる」のはスケボーと似てるんかなと。だから、ある意味で、スケーターに将棋は向いている感じはあります。けん玉をやるのと同じ感覚で、スケボーをしてないときの暇つぶしとして丁度いい。囲碁だと石が重くて外ではできなかったりすると思うけど、将棋盤は軽くて楽に持ち運べるので、スケーターで指している人は多いと思いますね。

(髙嶋)やっているときに、ものすごく集中するところ、没頭する感じが似ているのかなと。将棋を指しているとき、81マスの盤の世界にグッと吸い込まれるような感覚があるんですよ。スケボーも「あのスポットでこのトリックをやるか、もっと良いトリックがないか?」と常に夢中で考える。技の選択と、盤面での駒の選択は、似ている部分があるなと思います。ただ、スケートと違うのは相性があること。例えば、とある先輩も将棋にハマっていて一緒に指しますけど、俺はその先輩が苦手なんですよ、なんか勝てない。戦法や定跡ではなく、「この人には勝てるけど、この人にはどうしても勝てない」という相手との相性があるのも面白いですね。

――将棋を通して自身の人生や生活のなかで役に立っている、あるいは何か学んだことはありますか?

(髙嶋)将棋から何を学んでいるか……、自分は大工として仕事をしていますが、物事を順序立てて、段取り良くやっていく考え方は共通するところがあるかもしれない。

(高見)ない……って言ったらアレですけど、あんまり深く考えて将棋をやってないですね。将棋ウォーズは無課金で1日3回まで指せるので、毎日必ずしています。でも、外で対局していると「あいつの盤、カッコいいな」って思ったりもしますよ。やっぱり折り畳みじゃなくて、脚付きのちょい分厚い将棋盤は羨ましい。まだ自分は折り畳み式なんですけどね。

プロフィール

高見修平

たかみ・しゅうへい|1986年、石川県生まれ。金沢市にあるスケートショップ『CASPER』で働いたのち、2017年より同市でバー兼ギャラリー『819(ハイク)』を営む。スケートボードを通じた出合いを大切に、写真家やグラフィティアーティストなど気鋭の作家の展示を行う。将棋ウォーズ1級。

Instagram
https://www.instagram.com/819_haiku/

プロフィール

髙嶋海

たかしま・かい|1988年、石川県生まれ。大工として8年ほど経験を積み、2023年に独立。能登町の神社の補修をはじめとする伝統的な建築に携わる。将棋ウォーズ1級。

インフォメーション

kawa

2016年よりフォトグラファーの荒川晋作と関川徳之により始まったスケートボードを起点とする実験的プロジェクト。チーム名は2人の姓に共通する「川」に由来する。路上で輝くスケーターたちを被写体に、スポットを求めて全国津々浦々を流れる。同年に和綴じで「川の本」を制作し、’20年からは約半年に一冊のペースでオークラ出版より雑誌を発行。今年6月4日より、9号目「ふろう」が発売中!

Official Website
https://kawa-img.shop/

Instagram
https://www.instagram.com/kawa_img/