トリップ

古き良きレコード屋と同じ空気を感じる喫茶店。

京都と鎌倉には何度でも行こう。

2026年6月26日

WHOLE CITY BOY CATALOG


illustration: Hattaro Shinano
text: Ku Ishikawa
2026年7月 951号初出

 やっぱりみんな、京都と鎌倉が好きなのだと思う。何度も語られてきた街なのに、あらたまって誰かの話を聞くと、また別の入り口が見えてくる。喫茶店で何もしない時間、昔からある甘いもの、旅の終わりに食べる洋食、賑やかな街の中にある静けさ。名所や新店を巡るだけでなく、その人がどこで立ち止まるのかに、街との付き合い方は表れる。音楽ライターの松永良平さんに聞いた、京都と鎌倉の好きな場所。この週末にでも行きたい。

茶の間

タイル調の床やソファが残るレトロな空間で、11時から提供されるカレーが名物だ。先代の時代にスリランカ出身のアルバイトと作ったレシピが原点とされスパイシーでなかなか辛め。ご飯にコーンフレークがのるのも『茶の間』流。京都府京都市上京区西鷹司町14 ☎075·441·7615 7:30~17:00、水〜16:00 土・日・祝休

 旅先でレコード屋を探すのが、楽しみだったんです。でも最近は、レコード屋と同じくらい、喫茶店に行ってるかも。あんまり味にこだわりはなくて。アメリカの古いレコード屋と、日本の喫茶店って景色が近いんです。朝から地元の人が来て、なんてことない話をしている。そういう場所が好きです。京都なら、KBS京都の近くにある『茶の間』。ラジオの収録前にカレーを食べに行く。女主人の方も気さくで、映画『タンポポ』の頃の宮本信子さんみたいな雰囲気。クラシックっぽい音楽が薄く流れているのもいいんです。

バール カフェジーニョ

北大路通り沿い、下鴨西本町にある喫茶店。店内ではブラジル国旗やポスターが目を引く。BGMにはブラジルの古い大衆音楽が静かに流れ、世間話をする常連さんとのギャップがいいのだとか。ブラジルコーヒーを気軽に味わえる。京都府京都市左京区下鴨西本町37 ☎075·712·5477 8:30~17:00 火休

 北大路の『バール カフェジーニョ』も最近気に入っている店。店主はブラジルと深い関係があるようで、ブラジルで有名なコーヒー豆・サントスは砂糖をどばどば入れて飲むんだよ、と教えてくれる。まだ行ったことのないブラジルの街場のカフェはこんな感じかもな、と思えるんです。

カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ

1994年に鎌倉・小町でオープンした、鎌倉、いや日本のカフェ文化を語るうえで欠かせない一軒。店主の堀内隆志さんは、ブラジル音楽への造詣が深いことでも知られる。2009年からはロースターも兼ね、自ら焙煎した豆を一杯ずつ提供している。神奈川県鎌倉市小町2-1-5 ☎0467·23·9952 11:00~18:00 水・木休

 鎌倉の『カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ』は、京都の2軒とは少し違う存在ですね。久しく伺えてないし、僕が紹介するまでもないですが、小町通りに変わらずにディモンシュがあること自体が、鎌倉の文化を支えている感じがします。旅先の喫茶店に求めているのは、特別な歓迎ではないんですよね。僕みたいな通行人が、少しだけ宿り木するようにそこにいて、また次の場所へ行く。そういう時間が15分、20分でも持てたらそれでいい。何もしないために行く場所なんです。

プロフィール

古き良きレコード屋と同じ空気を感じる喫茶店。

松永良平

音楽ライター

まつなが・りょうへい|1968年、熊本県生まれ。雑誌を中心に記事執筆、インタビューなどを行う。著書に『20世紀グレーテスト・ヒッツ』(音楽出版社)、『ぼくの平成パンツ・ソックス・シューズ・ソングブック』(晶文社)など。POP
EYEで「ONGAKU三題噺」を連載中。

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