あんこ/KYOTO EAT-UP GUIDE
京都イートアップガイド
2022.11.20(Sun)
photo: Noriko Yoshimura
text: Mako Yamato
2022年12月 908号初出
小豆と砂糖と水だけで作るのに、味は店それぞれ。
ハシゴしてさ、京都のマイ・あんこを見つけてみない?
1. かさぎ屋

街歩きの休憩はコーヒースタンドもいいけれど、甘味処もおさえておきたいね。清水寺へ向かう二寧坂にある『かさぎ屋』は、大正時代の画家・竹久夢二も通っていたという老舗(こういうのがさすが京都)。ここで頼みたいのは、関西ならではの甘味・亀山。ってなんだ? とドキドキして席で待ち、出てきたのは汁気のないぜんざいだった。香ばしく焼いた餅の上に、竃で炊き上げた丹波大納言小豆をたっぷりかけた姿はつやつやで、ビジュアルもたまらない。初めて食べたけど、甘すぎずボリュームはたっぷり。あんこ最高と言いたくなる密かな名物だ。

2. 今西軒

※12月から価格改定
おはぎなら『今西軒』。そんな具合に京都の人に“贔屓の店”があるのって憧れる。創業は明治30(1897)年。3代目が一度店を閉めたものの、現在のご主人・今西正蔵さんが一念発起。祖父である3代目におはぎづくりを一から習い、2002年に再開した。そんな物語がある小さな専門店では、効率は悪くてもひとつひとつの手作業を丁寧にやっているから地元に愛され、コロナ禍でも売り上げが落ちないっていうのがグッとくる。あんこ多めな餅米との絶妙なバランスにはしみじみと満足しちゃうし、その味わいが日々安定しているっていう職人技、すごいぜ。

※12月から価格改定
3. 菓子屋のな

右/クリームチーズを使った洋梨あんチャバタ(¥520)は季節限定。
外したくない老舗や定番店に、気になる新店がいくつもあって、時間も胃袋も足りない! と嬉しい悲鳴をあげることになるハシゴあんこの旅。2020年に和菓子職人・名主川千恵さんが開いた『菓子屋のな』も、絶対行きたいと思っていた一軒。マンゴートロピカルあんのあんこ玉なんて具合に、柑橘を使った上生菓子も新鮮だけど、目を奪われたのはラフに紙に包んで並べられたチャバタの姿。チャバタは元はイタリア料理人だったご主人の作。滑らかに炊き上げたこしあんと厚めのバター、そしてラムレーズン。和菓子職人の作るあんバター、絶妙だ。

インフォメーション
菓子屋のな
下京区醒ヶ井通万寿寺角篠屋町75 ☎なし 12:00~18:00(売り切れ次第終了) 日・月休
4. 出町ふたば

豆餅で知られる名店にして人気店。店の前の行列はもやは京都の景色だし、オンシーズンには鴨川近くまで延びることもあるという。驚くのは京都の友人も「行列が短かったらラッキーと思って買うよ」というところ。観光客にも地元の人にも等しく愛される店って、そうあるもんじゃない。秋に京都を旅するなら、行列覚悟で食べたいのが季節ものの栗餅だ。なんといっても蒸した大粒の丹波栗が、ごろっと入っているのが最高。ほくほくの栗、ほんのり塩気のある餅、こしあん。買ったらすぐに鴨川デルタへGO。できたてを頬張るのが何よりの贅沢だ。