FOOD

ENJOY COOKING! – カイルズ・グッド・ファインズのチェリーパイのつくりかた –

2021.05.11(Tue)

photo: Yosuke Suzuki
text: Ryoko Iino
2021年6月号 890号初出

パイが難しいなんて誰が言った? 実は簡単すぎたアメリカンサマースイーツ。

教えてくれた人 『カイルズ・グッド・ファインズ』のカイル・セクストンさん

「Cherry pie is very easy」と優しく話すのは、30年近くパイを焼き続ける東京・中野の名店『カイルズ・グッド・ファインズ』の店主カイル・セクストンさん。レシピを学ぶなら断然アメリカンクラシックな味が理想だと思って門を叩いたわけだが、「家庭料理だから手の込んだものは作らないんだよ」と本当にイージーな作り方を教えてくれた。しかも、お店で出しているものと同じ!

 材料は至ってシンプルだ。フィリング(具材)は缶詰(カルディなどで購入できる「ミシガンメイド」というブランド)を使うので煮詰める作業はなく、1分ほどで完成。生地だって寝かせる工程はなく、10分程度で出来上がってしまった。唯一気をつけるべきは、手の温度で温まらないようにクイックに生地をこねること。冷たい生地を高温のオーブンに入れて一気に熱することで、生焼けを防ぎ、サクサクに仕上がるのだとか。単純だが、フードプロセッサーを持たない僕らにはこれが一番難しい。そんなこんなでオーブンに入れて55分。あっと言う間に焼き上がり。サワーチェリーの甘酸っぱさは缶詰といえども初夏を感じる味で、日本では少し珍しいクッキーのようなパイ生地はフィリングの瑞々しい食感との差が楽しい。アメリカでは7月4日の独立記念日を祝う定番のデザートらしく、彼の地の夏の風物詩ってわけ。パイがこんなに手軽だなんて、“作らず嫌い”はとても損だ。『ツイン・ピークス』のクーパー捜査官のように毎日チェリーパイが食べたくなった次第。

<Ingredients ∅22㎝のパイ型1個分

生地
・薄力粉…190g
・無塩バター…115g
・塩…ティースプーン半分弱くらい
・水…40㎖
・薄力粉(打ち粉用)…ひとつかみ

フィリング
・チェリー缶…2缶
・コーンスターチ…45g
・上白糖…220g
・塩…ひとつまみ

(a) 日本では生のサワーチェリーが手に入りにくいから缶詰で。バター、薄力粉、水はキンキンに冷やそう。

<How To Cook

1. オーブンを170℃で予熱しつつ生地を作る。最初にして最大の難所。薄力粉と無塩バター、塩、水をフードプロセッサーに入れて混ぜる(b)。機械がない僕らは、ボウルに薄力粉とバターを入れてフォークで崩し、その後、塩と水を入れて手で混ぜる。「体温によって生地が温まらないように!」とカイル先生。

(b) 生地はフードプロセッサーを使えば一瞬。手でこねる場合は水を少しずつ加え、全部入れなくてもOK。

2. 天板に生地がくっつかないように薄力粉を振る。球状に成形した生地を置き、上から押して平たく潰す(c)。麺棒で厚さが3〜5㎜ほどになるまで均等に生地を延ばす(d)。その際に円形が崩れないよう、都度延ばす方向を変えること(e)。楕円形はダメ。正直、最初はなかなかうまくいかない。

(c) 多くの人がテーブルの上で作業することだろう。つるつるとしたクッキングシートを敷くと便利だ。
(d) 均一に生地を延ばすためには麺棒は必須。いつかうどんも打つかもしれないし、この際購入しよう。
(e) 「ときには自分の立つ方向も変えるとやりやすいよ」とカイルさん。服装は動きやすいほうがいいね。

3. 麺棒に生地の端を巻きつけて持ち上げ、パイ型の上に移す(f)。生地がビヨーンと延びないようにソロリソロリ。生地の縁を持ち上げながら、型に生地がピタッと沿うように、優しく押していく(g)。型からはみ出た生地はハサミでカットする。

(f) 軟らかい生地は持ち上げるのに一苦労。最悪生地を塊に戻して、冷蔵庫で少し冷やすのもありかも。
(g) 生地が気持ちいいからって強く押さないように。破けちゃうよ。手には都度打ち粉を付け直そう。

4. フィリング作り。ザルで水気を切ったチェリーに上白糖とコーンスターチ、塩をさっと混ぜる。パイの型にドバドバッと流し込む。

5. 余った生地を再び延ばし、2㎝幅のリボン状に切る(h)。

(h) 「みんなは包丁を使って」と先生は言うが、ギザギザにかわいく切れるパイ生地カッターは僕たちも欲しい!

6. の上に網掛けにする。まずは縦方向に置いていき、その後は60°の角度をつけてまた平行に生地をのせていく(i)。かわいくね。型からはみ出た部分はハサミで切る。

(i) 面倒な人は網掛けにせず、一枚の生地でどーんと蓋をしてもOK。簡単ゆえ、アメリカではそれが主流とか。

7. 焼き上がりの際にフィリングが溢れないように、底の生地と上に掛けた生地を親指と人さし指を使って、つまむように固定する(j)。写真で伝わるかな? ここ、美しく見せるポイントです。

(j) 個人的には内側に添えるのを左手にしたらやりやすかった。難しければ土台と上の生地をつまむだけで平気。

8. 170℃に予熱したオーブンで55分焼く(k)。環境によって時間は多少変わるよとカイル先生。冷ましたら完成だ(l)。

(k) しつこいようだが、生地が冷たい状態で焼くのが要。すぐに焼き始められるように予熱は最初にしよう! 
(l) 熱々を食べたいところだが、冷めないとフィリングがトロトロでカットしづらいんだとか。アイスのせたい!

<Editor's voice

カイルズ・グッド・ファインズ

ペンシルべニア出身のカイルさんが29年前に開いたケーキの店。ローカライズされていないクラシックなアメリカの家庭の味が並ぶ。キャロットケーキも最高。
東京都中野区新井2-7-10 ☎03·3385·8993 10:00〜18:00、日・祝12:00〜16:00 月不定休
料理特集 発売中!
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