カルチャー

若きクラフツマンはどのように作り、売っているのか。

蜂屋うちわ職店

2022年12月1日

photo: Kazufumi Shimoyashiki
text: Tamio Ogasawara
2022年12月 908号初出

蜂屋佑季
蜂屋佑季 はちや・ゆうき|1990年、山形県生まれ。蜂屋うちわ職店の店主。2012年から京都に。作業は落語を聴きながら。持ち込みの紙や布でも作ってくれる。

 京の特性なのか、ものは多く集まってはいるけれど、用と美と楽しさのある、暮らしの中の工芸的ものづくりに少しの物足りなさを感じていたのが僕の京都だ。でも、久しぶりに訪れた京都の特に若い人たちは、地のものを使い、工夫して面白いものを作り、それらを自分の店で売っていた。5年前の特集の際に偶然見つけた、創業は優に300年超えの京うちわの『阿以波』という店があったのだが、そんな名門で修業した蜂屋佑季さんは、分業制だといううちわ作りをひとりでこなし、家のようなお店で売る。住んでいるので家ではあるが、お客さんが来れば店となり、作業をすれば工房となる自由な空間を謳歌していた。浄土寺で出会った『Ren』の中根嶺さんは、鍛造という技法を使い、銅を使った鍋やドリップポットを作り出す金工だ。店の前まで来るとトントントントン、銅を叩く気持ちのいい音が聞こえてくる。北区にある『ものや』には何度か行ったことがあった。これはどう飾るのだろうという謎いものと、デザイン力高めの実用品が陳列されている。店主の櫻井仁紀さんは古いものに新機軸の価値を付けていく一方で、現代社会では需要がないという京都の北山杉の丸太を使いテーブルなどを作り始めていた。作業場は店よりさらに北の山の中にあった。京都は中心部を離れれば家賃は安い。まずは住みながら店を始める人も多いが、作りながら店を営むという原初的なスタイルがしっくりくる街でもある。もうこれは東京にはない。

市松模様のうちわ
まるで桂離宮の襖絵のような市松模様のうちわを見よ!

インフォメーション

蜂屋うちわ職店

「いつ辞めてもいいってくらい気軽にやってきました(笑)」。鹿ヶ谷の長屋に2019年に作った『蜂屋うちわ職店』で、京うちわを作り、そのままお店に並べているのが蜂屋さん。職人歴は『阿以波』での修業時代もあわせて早10年。「竹の骨を作る作業はやっては失敗の繰り返し。でも、いい竹と出合えると骨を並べて貼る作業も楽しくて」。シグネチャーは桂離宮の襖絵の比率をいただいて作ったという市松模様が描かれた一枚。格好よすぎでしょ。

◯左京区鹿ヶ谷法然院西町40 なし 10:00〜17:00 土・日・祝営業

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https://www.instagram.com/hachiya_uchiwa/