カルチャー
ジア・マーガレットが教えてくれた夏に聴きたい30曲。
POPEYE MUSIC FORUM Vol.21
これDOW!?
cover design: Ken Kagami(DOW!?)
jingle: Metoronori(MUSIC FORUM)
special thanks: Gia Margaret
coordination & text: Miu Nakamura
edit: Yu Kokubu
2026年7月2日
photo: Graham Tolbert
今回の「MUSIC FORUM」は、シカゴ拠点のシンガーソングライターでレコード・プロデューサーのジア・マーガレットさんが登場! デビュー作以来となるボーカルアルバム『Singing』をリリースした彼女が、近年刺激を受けたボーカル曲〜ティーンエイジャー時代に夢中になった作品などなど、これから本格的に始まる夏に合わせてスペシャルな30曲をシェアしてくれました。日本の楽曲もたくさん挙げてくれて。おまけのポッドキャストでは、POPEYE Webチームの音楽好きメンバーらが選曲の一部をカフェタイムに視聴中。ということで、本日のBGMに迷ったら“これDOW!?”ぞー!
↓ ポッドキャストの視聴はこちらから! ↓
※ポッドキャスト内で楽曲は流れません。サブスクにもあるけどもしも素敵な出合いがあったらレコードやCDで探してみてね!
選曲者
Gia Margaret
01-今日の気分に合う一曲を教えて。
Sparklehorseの「Sad and Beautiful World」ですね。タイトルがすべてを物語っているように思います。最近は自分にとって、この世界の美しさに目を向けたり、内面や外の世界に意識を向けているような時期なんです。ツアーに出ることでたくさんの素敵な経験を得ましたし、感謝をする機会も増えました。リアルな世界の二面的な部分を、以前よりも受け入れようとしているところなんです。
02- 新アルバム『Singing』の中で、まず聴いてほしい曲は?
難しい質問ですね。まず挙げるなら 「Cellular Reverse」 です。今回のアルバムでは、自分の中で失われてしまったと思っていたものを取り戻していくことが制作中の大きな試みだったのですが、この曲は特にその感覚が反映されていると思います。
「E-Motion」は、個人的にもっとも誇りに思っている1曲です。アルバムを制作する中で学んだことがぎっしりと詰まっています。本当の意味で歌うには、自由で、素直な感情が不可欠なんです。ぜひ1番最初に聞いてほしい楽曲ですね。
03- 今回のアルバムもサウンドメイキングが最高でした。特に柔らかなピアノサウンドと緻密なアンビエントサウンドは心地よくてずっと聴いていられます。音響やサウンドメイキングが素晴らしいと思うアーティストは?
ありがとうございます! ここでは言い切れませんが、今思い浮かぶのは、Jon Brion、Stina Nordenstam、Dntel、高木正勝、Björk、The Books、Guy Sigsworth、Imogen Heapです。型にはまらない方法でサウンドデザインを行うアーティストが特に好きで、洗練されている部分と、どこか未完成な部分が同居しているような音に惹かれます。その絶妙なバランスこそ、自分が目指しているものでもあります。
04- ボーカルサウンドのメイキングでもさまざまな挑戦があったとか。刺激を受けたボーカル曲はありますか?
ここ数年はボーカル中心の音楽をほとんど録音していなかったので、自分がボーカルサウンドに何を求めているのか分からなくなっていましたし、試してみたいことが多すぎて圧倒されてもいました。その中でも、Siaの「Breathe Me」とStina Nordenstamの「Little Star」には特に思い入れがあります。 StinaやSiaの歌声は、まるで頭蓋骨の内側で鳴っているかのように近く感じられて、その距離感が大好きなんです。『Singing』では、録ったものをそのまま使ったような、余計な加工を感じさせないボーカルにしたいと思っていたので、その指針になったような気がします。
一方で、私は昔からボコーダーにも興味があって。エフェクトが持つ感情表現の豊かさって、本当に素晴らしいなと感じるんです。ハーモニーが加わることで、メロディーがよりドラマチックで感情的になると思います。Imogen Heapの「Hide and Seek」 や Bon Iverの「715 CREEKS」 は間違いなく今回のアルバム制作に深く関わる楽曲だと思います。もちろん、Daft Punkも!
05- 散歩中によく聴く曲は?
昔から散歩をするときにはよくDavid Gray を聴きます。『White Ladder』は特によく聞くし、最近は『Skellig』も! 何度聴いても飽きませんし、自分の人生が映画になったような気分になるんです。
とはいえ、本当になんでも聴きます。最近は、日本で買ったウォークマンとカセットテープを持って散歩することが増えました。カセット特有のヒスノイズや、スマホから切り離される感覚のおかげで、音楽にもっと深く入り込めるようになった気がします。直近のお気に入りのカセットは、Michael Cormier-O’Learyの『Proof Enough』。美しくて心を落ち着かせてくれるフォークソング集です。ノイズキャンセリングヘッドホンも以前ほど使わないようにしています。自然の音が音楽に混ざり込んでくる感じが特に好きで、楽しむようにしています。
06- 今一番聴いている曲は?
最近よく聴いているのは Idahoの「Skyscrape」 です。この曲を聴くと、ある人との間にあった葛藤を思い出すんです。こういう曲って、ティーンエイジャーの頃の感覚が蘇ってくるし、ある種の怒りの感情を抱くことも許してくれる気がします。今はなかなか表には出せませんけどね。それとは別に、この曲の楽器のアレンジも大好きです。この世界への好奇心がかきたてられます。こういう探究心は数年前からあったのですが、声帯の怪我もあって、しばらく歩みが止まっていたように感じます。
07- お気に入りのライブ盤は?
Jeff Buckleyの『Live at Sin-é』 。甘美で、生々しくて、まるでその時代を閉じ込めたタイムカプセルのような作品です。
08- おすすめのジャズソングをいくつか教えてください。
Bill Evans版の「Skating in Central Park」、Nina Simoneの「Who Knows Where the Time Goes」、Chet Bakerの「I Get Along Without You Very Well」はいかがでしょう?
9- ティーン時代に夢中になった曲は?
Starsの「Your Ex-Lover Is Dead」 です。というより、アルバム『Set Yourself on Fire』全体に夢中でした。学校をさぼって車を走らせながら、このアルバムをずっと聴いていたんです。今でも聴き返して楽しんでいる作品です。
10- 好きな映画のサウンドトラックは?
『エターナル・サンシャイン』の『Eternal Sunshine of the Spotless Mind』。まるで自分の記憶の中にあるかのように感じるんです。その空気感が映画とよく合っていますよね。
11- センスが合うと思う人に出会ったときにシェアしたい曲は?
音楽の趣味が合う相手なら、よりパーソナルで繊細な曲もためらわずに勧められる気がします。今日なら Mandalayの「Not Seventeen」 を送るかな。
12- 制作についてインタビューしてみたいと思うアーティストとその曲は?
Björkです。説明は不要かもしれませんが、本当に魅力的なアーティストですし、今なお進化し続けています。何が彼女を探求し続けさせるのか、そのことについて話を聞いてみたいです。
13- 自身の制作のルーツとなったのは?
“もっと深く理解したい”という欲求が私の活動の大きな力になっていると思います。自分自身のことだけでなく、自分がなぜこれほど音や音楽に惹かれているのかや、自分の周りの環境が作品にどう関わるかに興味があるんです。挑戦したいことを見つけたときはすごくワクワクするし、制作中に起きたランダムな出来事や発見は、他では味わえない醍醐味ですよね。
14- 寝る前に温かい飲み物を飲みながら聴きたい一曲は?
Arthi Meeraの「Silty Sea」のセルフタイトルアルバム収録バージョンです。聴くたびに、お茶を飲み、月を眺め、窓辺に座る猫を撫でながらこの曲を流したときを思い出すんです。本当に美しい曲で、18歳の頃からずっとお気に入りです。彼女の音楽はもっと広く知られるべきだと思うし、特にこのアルバムは本当に素晴らしいと思います。
15- ニューカマーや新曲で気になる楽曲を教えてください!
この間、ロンドン出身の8人組バンドのCarolineをシカゴで観ました。ここ最近で一番クリエイティブなショーで、彼らが次に何を作るのかが楽しみで待ちきれません!
16- あなたにとっての「名盤」は?
Stina Nordenstamの「And Then She Closed Her Eyes」。
17- 最近感動したインストゥルメンタル曲は?
水辺を眺めながら、レイ・ハラカミの「chromatic cliff」 を聴いたときのことは忘れられません。無感覚になるような、不思議な曲なんです。そういう心地をちょうど欲していたので、心に沁みました。
18- 昨年10月には来日公演もされていましたね。日本に来たら聴きたくなる曲は?
高木正勝の『Journal For People』というアルバムをリピートしてました。それまで彼のピアノ作品を主に聴いていたのですが、このアルバムは忙しない東京の雰囲気にぴったりでした。街を行き交う人々が整然と横断歩道を渡っている景色が、このグリッチ感のあるサウンドと同期しているみたいで、とても面白い体験でした。
19- この春よく聴いた曲は?
Linda Smithの「I So Liked Spring」です。
20- お別れに一曲。
Maggie Rocheの「Malachy’s」。数週間前から、ツアーの移動中に聴くようになった曲です。
POPEYEのSpotifyページに全曲まとめておきましたので、こちらも良かったら聴いてみてね!
今回の選曲者
Gia Margaret
ジア・マーガレット|1987年、シカゴ生まれ。シンガーソングライター、プロデューサー。2018年に本格的に音楽活動を開始。デビューアルバム『There’s Always Glimmer』では、繊細な歌声を素朴なアコースティックや幻想的なエレクトロニカで彩った私小説的な作りが高い評価を得る。その後声帯の怪我により数年にわたって歌うことができなかったが、その間もアンビエント・アルバム『Mia Gargaret』(2020)やピアノ・インストゥルメンタルの特色を強めた『Romantic Piano』(2023)を発表。2026年4月にボーカル作『Singing』をリリースした。
Instagram
https://www.instagram.com/giamargaret/
インフォメーション
Singing
デビュー作以来となるボーカルアルバム。ポップスとしての魅了も強く感じさせる生命力に満ち溢れたボーカルと、過去数年で磨き上げたアットホームで叙情的なアンビエントミュージックが融合した、ジアの原点回帰的一作。デイビット・バサン、カート・ヴァイル、ショーン・キャリーら錚々たるゲストらと共にロンドン、オークレア、シカゴでレコーディング。ジャズやテクノ、ヒップホップからのサンプリングなど、多様なジャンルを横断したサウンドメイキングにも注目。
アルバムの詳細はこちら!
https://bignothing.net/giamargaret.html
番組概要
これDOW!?
POPEYE Webの記事を眺めながら聴く『これDOW!?』は、モノをきっかけに編集者らがエデュケーションしていく番組。街をぶらぶらして偶然見つけたモノや取材時に出合ったモノを考察してみたり、タイトル通り「これDOWなんだろう?」といった価値のよくわからないモノなどを囲んで雑談中です。ときにはゲストと一緒にモノを作ってみたりもね(更新は不定期です)。メインチャンネル『POP-EYE MEETING 編集会議』もよろしくお願いいたします。
📩 メールアドレス
popeyeweb@magazine.co.jp
POPEYE Web制作の他番組は以下より。
ピーター・バラカンのプロテスト・ソングあたりから始める政治の話。
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