カルチャー

机の上のサイエンス。Vol.53

ルース

2025年11月3日

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机の上のサイエンス。


photo: Akira Yamaguchi
text & edit: Shogo Kawabata 
2025年11月 943号初出

鉱物の美しさを最大限に愛でるコレクション。

クオリティやカットの美しさに加え、フォスフォフィライトのような軟らかい石や、ローレントーマサイトのような新鉱物もルースにはあり、バラエティが豊か。(すべて優美堂 www.yubido.co.jp

1. Bi-color Euclase、2. Gold Sheen Sapphire、3. Bi-color Imperial Topaz、4. Sphene、5. Pink Euclase、6. Laurentthomasite、7. Red Topaz、8. Taaffeite、9. Bi-color Emerald、10. Paraiba Tourmaline、11. Padparadscha Sapphire、12. Blue Zircon、13. Phosphophyllite、14. Rhodochrosite、15. Musgravite、16. Vayrynenite

 宝石の世界における「ルース」は、単にジュエリーとして加工される前の過程の石をコレクションするわけではない。

 ルースとは、鉱物の中でも最も美しい部分を選び抜き、精緻なカットによって最大限の輝きを引き出したものを指す。鉱物の美しさを純粋に追求するコレクションだ。もちろん、ルースをジュエリーに仕立てるケースもあるが、それは副次的なこと。「ルースコレクション」は、宝石を身につけるためではなく、その鉱物が持つ色彩、透明感、「テリ」と呼ばれる輝きの妙を堪能する文化だ。愛好家たちは鉱物ごとの個性や希少性はもちろん、カットの精度や研磨のクオリティに徹底してこだわり、その輝きの美しさに価値を見いだす。また、ジュエリーとは違い身につけることが前提ではないので、破損しづらい硬度基準を下回る軟らかい石もルースの対象となっていて、鉱物の種類もバラエティに富んでいるのも面白い。

 ルースは台座に収められずとも完成された美の結晶であり、多彩な鉱物の「最高の瞬間」を封じ込めた芸術作品だ。