TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#2】古着貧乏、妻狂乱
執筆:春風亭昇羊
2025年6月18日
収入の大半を古着に費やしている甲斐あって、自室は古着で溢れており、さらに収まりきらない服、ラルフのハンティングジャケット、ラングラーのデニムシャツ、東ドイツ軍のブルメンターンと呼ばれる迷彩柄のジャケット、など10着ほどが自室と居間の間、長押に掛けてある。そのせいで部屋と部屋の往来に難儀し、ストレスが溜まり、時折半狂乱になりながら引っ越しを考えるが、古着で散財してしまうせいで資金不足が故引っ越すことができない。妻は狂乱している。それでもとどまることなく古着をもとめ続け、もはや首が回らなくなる寸前まできているのだが、そもそも古着にハマることになったきっかけは、一本のパンツだった。
神楽坂の蕎麦屋の落語会で手伝いをしてくれている従業員が古着好きで、話を聞くうち、久々に古着屋へ行ってみようか、と思い立った。10代の頃から、安いという理由で古着のTシャツばかり着ていたのだが、落語家になってすぐ、先輩から「穴の空いたTシャツは着るな」と小言をくらった。他にも「楽屋で髑髏はダメ」とも言われた。不満を抱きながら、しかし先輩にそう言われたならば仕方ない。心機一転古着を断とうと決めた。
古着屋へ行くのはそれ以来、およそ10年ぶりであった。
下調べして向かったのは、奥渋と呼ばれる一帯にある『AWASE』という古着屋。従業員の気さくで丁寧な接客に感動しながら、店内を物色していると、一本のパンツに目が留まった。
それは1950年代のGPO(General Post Office)と呼ばれるイギリスの郵便局員の制服で、赤い側章が施された紺色のパンツだった。
およそ70年前のイギリスの郵便局員の制服が傷ひとつない状態で残っており、しかもどこか洒落ている、ということに感興がわき、試着するとサイズはピッタリ。許可を得て着用した姿を写真に収め、帰宅して妻に相談すると、「もろ郵便局員じゃん。お勤めご苦労様です」と馬鹿にされた。それでも一晩悩んだ末、再び店を訪れ購入。それから『AWASE』をはじめ様々な古着屋に通い、見たことのないワークウェアやミリタリーウェアに魅了されたり、縫製や形状の良さに感嘆したり、またその希少性に興奮したりするうち益々古着の魅力に取り憑かれ、今では都内のみならず、仕事で遠方に向かう際は必ずその土地の古着屋を訪ねるなどして、暇さえあれば古着のことばかり考えている。ところが一方では「今後も芸道に精進します」などと立派なことを言って落語一筋みたいな顔をするのだから嫌なものである。
プロフィール
春風亭昇羊
しゅんぷうてい・しょうよう|1991年、神奈川県横浜市旭区出身。
2012年春風亭昇太に入門。
2016年二ツ目昇進。
2023年NHK新人落語大賞ファイナリスト。
10日間のヨーロッパ公演について綴った『ひつじ旅~落語家欧州紀行~』を2025年1月に出版。
Instagram
https://www.instagram.com/hitsujirakugo/
Official Website
https://lit.link/shoyorakugo
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