ライフスタイル

やっぱり名デザイナーの椅子が欲しい。今は買いやすいものが増えている。

2024年2月21日

世界のかっこいい部屋と、その秘密。


photo: Reiko Toyama, Kazuhiro Kobayashi
styling: Yusuke Takeuchi
text: Ryota Mukai, Neo Iida
2024年3月 923号初出

決して安価とは言えないけれど手が届きそうな名作は少なくない。ご存じイームズのシェルサイドチェアなら6万円ちょっとで買えてしまう。日々使うものだし一生モノであることを思えば安いくらい。価格にばかり注目するのも野暮だけど、でも実はその裏にイームズならではのチープ・シックな素材選びの妙も潜んでいるのだ。

1. Eames Plastic Shell Side Chair by Charles & Ray Eames

イームズのシェルチェア
1948年にデザイン、’50年に発売したイームズのシェルチェア。特徴的な脚や座面の滑らかなフォルムなどは変わらない、スタンダードな一品だけど、実は着実に進化を遂げている。ほんの2年前には、シェルの素材が100%ポストインダストリアル再生プラスチックになった。環境に優しくソフトな肌あたりで座り心地もしなやかに。初期の素材では作ることができなかったカラーも登場。こちらのブリックレッドも含め、現在は11色から選べるのだ。その上価格も少し下がった。素材選びまでチープ・シックでしょう? ¥63,800(ハーマンミラーストア丸の内

2. Bell Chair by Konstantin Grcic

Bell Chair by Konstantin Grcic
ベルリンを拠点に活動するコンスタンチン・グルチッチがデザインしたベルチェア。その名のとおりの丸みあるフォルムが特徴的で、座ると包まれるようなホールド感もある。構造的に強固で安定感は抜群。とはいえ重さは2.7㎏と持ち上げてみると案外軽くて、スタッキングも楽々できちゃうのだ。¥25,300(マジス ジャパン

3. Tip Ton by Edward Barber & Jay Osgerby

ティプ トン
「ティプ トン」はダブルミーニング。ひとつは座面が先端(Tip)へ傾くことから。もうひとつはイギリスの街の名前だ。ここの学校のためにデザイナーデュオが手掛けた一脚。前傾する座り方は集中力を高めるという研究結果を反映した、現代の学ぶための椅子なのだ。スタッキング可能。¥42,900(ヴィトラ

4. Mariolina by Enzo Mari

マリオリナ
「世界は富裕層のみのために設計されたのではない」とは、イタリアの巨匠エンツォ・マーリの言葉。無駄を削ぎ落としたフォルムに細身のフレームと、コンパクトに設計された本作「マリオリナ」がこの価格で手に入るのはこのビジョンがあってこそ。差し色のオレンジが映えるポップな一脚は誕生20周年記念品だ。¥34,100(マジス ジャパン

5. ELEMENTAIRE CHAIR by Ronan & Erwan Bouroullec

パリを拠点に共同でデザインを手掛けるブルレック兄弟の「エレメンターレ チェア」。座面や背もたれの微妙な湾曲を感じれば、単にシンプルというよりは必要なデザインが詰まっていることがわかるはず。表面は柔らかな手触りがあるマットな仕上がりで、紫外線にも強いから屋外使用もOK。¥33,000(HAY JAPAN

6. Riki Stool by Riki Watanabe

リキスツール
戦後日本のデザイン黎明期から活躍を続けた渡辺力。主宰した事務所「Qデザイナーズ」が1965年に発表したのがリキスツールだ。素材は段ボールで超軽量だが、耐荷重はなんと650㎏(!)。発売当時「4つのスツールで象の体重を支えられる」と話題になったという。これぞ日本のチープ・シック。¥4,620(メトロクス☎03·5777·5866)

7. Hinoki Stool Single by Jasper Morrison+Wataru Kumano

ヒノキスツール
組み立て式のヒノキスツール。プロダクトデザイナーの熊野亘と共同製作した、ジャスパー・モリソンのらしさがある“スーパーノーマル”な一品だ。坂本龍一の呼びかけで生まれた森林保全団体more treesが植林支援を行う、岐阜のヒノキを現地の職人がハンドメイド。¥14,300(MoMAデザインストア 表参道