フード

FOREIGN RESTAURANT’S OWNER IN TOKYO Vol.7

🇪🇬『アブ・イーサム』イブラヒム・ジャーベルさん/インタビュー土井光

2022年6月27日

海外から来た方が日本でオープンした外国料理の店は、味はもちろんだけど、それと同じくらい店主の人柄や考え方が魅力的だったりする。各地のローカルな風を届けてくれる東京近郊の名店の店主を料理家の土井さんと巡るコラム!

知人から美味しいお店と聞いてはいたのですが、初めて訪れたのは緊急事態宣言の時期でした。白い壁の可愛らしいお店に人が集まっているので、目に留まります。お店の中での飲食が難しかったので、テイクアウトでの注文。美味しそうな香りに、車の中で平げてしまいました。パスタとお米が混ざったコシャリという初めての料理。元気のある味にトマトやソースの酸味が加わってとても食べやすい。歯ごたえもあり食べ応えがあって一気に完食。この味は何度もリピートしたくなります! 手作りデザートやコーヒーも美味しいので、是非フルコースで注文することをお勧めします。チャーミングな店員さんと暖かいお料理で幸せ満腹です!

 

今日はよろしくお願いします! 早速ですが、イブラヒムさんの出身地はどちらですか?

生まれも育ちもエジプトです。だから、この店で出しているアラブ料理もエジプトのやり方で作るものが多いです。

ファラフェルサンドのファラフェルにゴマが付いているのは珍しいですが、それもエジプトならではの作り方ですか?

ファラフェルサンド¥600

はい。潰したひよこ豆と、イタリアンパセリ、コリアンダー、ニラ、玉ねぎ、ニンニクを混ぜたものにゴマを付けて、油でカラッと揚げています。中が緑色なのもエジプトらしいです。ファラフェルはいろんな場所で食べられるけど、実はエジプトが発祥!

サクサクで美味しいですね! ワンプレートにお米と麺両方が入っているコシャリもエジプトの料理ですか?

コシャリのケバブのせ¥750

そうです。エジプトのソウルフード! コシャリは「混ぜる」という意味で、マカロニとかショートパスタ、お米、豆が入っていて、その上にオニオンとトマトソースがかかってます。エジプトには宗教上の理由などでお肉を食べない人が結構いるから、代わりに豆でプロテインを摂るためにお米と麺に豆を入れる料理が多い。でも、ケバブとかラム肉をトッピングすることもできます!

炭水化物ばかりで重いかな? と思ったけど、意外とさらっと食べられちゃいますね。

オニオンはドライオニオンで、揚げているのは特製のトマトソースに入れているニンニクだけだから、意外と油が少ないです。食べやすくて美味しいでしょ?

お料理は日本に来日される前からずっとしていたんですか?

はい。2000年から来日する2014年まではエジプトとクエートのホテルのシェフとして働いてました。クエートの時はアラブ料理、エジプトの時はエジプト料理とかお菓子を作ってました。

なぜ日本に来ることに決めたんですか?

奥さんが日本人なんです。それで日本に来ることになって、お店を出すまでの6年間は日本料理のお店でパティシエをやったり、自由が丘のチーズタルト屋さんで働いたり、エジプト料理のお店でアルバイトをしたり、いろいろ経験しました。日本にこの先ずっと住むんだ、とやっと決めて、2020年にこの『アブ・イーサム』をオープンしました。

アラブ料理ってキッチンカーなどで売っているイメージがあったのですが、ここは黄色が基調になっているカフェみたいな店内で可愛い。そんな場所で簡単にアラブの軽食を楽しめるのがいいですよね。

椅子やメニュー表にビビッドな黄色を使った店内。お店の看板や、メニューが載っている黒板にも描かれているファラフェルサンドのポップなロゴは、イブラヒムさんがデザイン。

前いたホテルはバンケット会場があったり、本当に規模の大きい場所だったからキッチンに1000人ほどいたんです。でも、このお店は小さいでしょ。だからテイクアウトとか、少しイートインもできて軽く食べられるファーストフードを作ろうと思いました。

今のお店は、前働いていた環境と比べるとかなりカジュアルにしているんですね。

でも、味とかクオリティは一緒ですよ。ピタパンとラップ以外は全部お店で手作りです。バケットもお店で焼くし、モロヘイヤやエジプト野菜などの日替わりスープも作ります。スパイスもナチュラルスパイスにこだわってインドから仕入れたり、ケミカルなものは好きじゃないんです。他の調味料も塩と胡椒とハーブくらいで、意外とシンプル。たまにレモンを使うくらいです。

お店にあるナチュラルスパイスを何種類か紹介してくれた。オレガノ、ターメリック、パプリカ、シナモン、ブラックペッパー、ソルト、クミン、コリアンダーなど、配分を決めて特製ミックススパイスを作るという。
店に入ってすぐ左側には大きなケバブが! もちろんこれも手作り。

だから見た目とは裏腹に、ジャンクな味がしないんですね! お菓子もくどい甘さがなくて食べやすいですよね。

はい。お菓子は、お店をオープンした時からマネージャーをしてくれてるローラさん(記事冒頭の写真の右側)が作ってくれてます。アラブのお菓子らしく甘いけど、砂糖の代わりに蜂蜜を使っています。

通りに面したショーケースには、フムス(¥400)などのテイクアウト専用デリの他、パイ生地にナッツを挟み蜂蜜に漬けたバグラヴァ(¥300)などのアラブのスイーツが並ぶ。

飲み物も種類が豊富で、アラビックコーヒーやノバコーヒーといった聞き慣れないメニューが気になりますね。

アラビックコーヒーは、サフランとカルダモンが入ったエジプトでポピュラーなスパイスコーヒです。濃厚で、エスプレッソのような感じ。日本にある他のエジプト料理店でも飲めると思いますけど、アラビックコーヒーを牛乳で煮出したノバコーヒーは、日本で飲めるのはこの店くらいじゃないかな。ノバはヌビア民族というエジプトの民族の名前が由来です。

複数名でシェアの際は、動画のようにイブラヒムさんがテーブルで注いでくれる。ノバコーヒ¥450

ミルクティーみたいなまろやかさと、チャイみたいな香ばしいコクがありますね! 少しチョコレートのような風味も感じられて美味しい!

今はラマダン中だから飲んだり食べたりができないけど、普段は休憩中にいつも飲んでます。ラマダンというのは、イスラム暦で9月にあたる1ヶ月間、日の出から日没まで何も食べないイスラム教特有の行事のことですね。

イブラヒムさんはイスラム教徒の方ということですね。

イスラム暦は月の満ち欠けに基づいているため毎年ラマダンの時期は変わる。今年は4/1〜5/1がラマダンの期間だったため、取材を行った4月にはイレギュラーな貼り紙があった。

はい。僕はイスラム教徒だからここの料理は全てイスラム教徒が宗教上食べも大丈夫な食材しか使わないハラールフードです。でも、ファラフェルサンドのようにベジタリアンの人も食べられる料理もあるし、イスラム教徒はもちろん、それ以外のいろいろな人も来てくれたら嬉しいです

インフォメーション

Arabic Restaurant & Cafe Abu Essam

◯東京都新宿区矢来町111-1 Y’s Kagurazaka 1F ☎︎03・5946・8014 11:00~15:00、16:00~22:00 無休

Official Website
https://abuessam.jp/