TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#3】インタビューとはなにか?
執筆:アッシャー・ペン(Sex Magazine)
2026年8月27日
インタビューをするようになる前は、文章を書こうとしていた。でも、どうもしっくりこなかった。何か意見や考えを持っていたとしても、それが大したことのようには思えなかったからだ。自分のことをそんなに面白い人間だとも思えなかった。だけれど、僕以外の人間のことは、自信を持って面白いと思えたのだ。僕は理論や意見やブログのエントリーよりも、インタビューのほうが好きだった。インタビューには気取ったところがなく、誰にでも開かれていて、わかりやすい。読んでいて「自分は馬鹿なんじゃないか」と思わされるのが嫌だった。
ここではっきりさせておきたいのは、ホストとゲストがただ自由に話を広げていくトークショーやポッドキャストのような「会話」を、僕はインタビューだとは考えていないということだ。ホストが魅力的でテーマとなる人物が面白ければ、素晴らしいものにはなる。でも、ここで話しているのはそういうものではない。インタビュアーが質問によって明確に会話を導き、インタビュイーがそれに答える、という形式のものこそが僕が考える「インタビュー」だ。この関係性において、良い結果を出すためにはどちらかが特別な人間である必要はないのだ。
僕が初めてインタビューしたのは、25歳のとき。相手はウィリアム・ギブスンだった。彼の出版社に連絡を取ったが、まず返事が来たこと自体にちょっと驚いた。さらには、彼が僕と会ってくれるということにも驚いた。インタビューされるということは、相手にとって好ましいことだと、当時の僕は知らなかった。実際には、彼らは自分のことを見てもらいたい、理解してもらいたいとも思っていて、そのためなら1時間という時間を僕らにくれるのだ。このことに気づいたとき、何かが一気に開けたような感覚があった。
最初のインタビューで本当に緊張していたのをよく覚えている。有名な作家に会うのは初めてだった。バンクーバーのコーヒーショップで、カセットテープに録音している間、ずっと音声がめちゃくちゃになって録れていないんじゃないかと怯えていて、全くインタビューに集中できなかった。他にも相手との会話の邪魔になるような考えばかりが頭の中に浮かび上がっていた。用意した質問のことや、この先の会話が流れのことをを考えていたし、そればかりか、ちゃんと笑えているか、頷けているかといったことまで気になっていた。
ウィリアム・ギブスンに会えたこと自体はとても刺激的だった。が、インタビュー後、僕はなぜかモヤモヤとしていた。あの1時間、自分は本当の意味で、ひとりの人間として存在していなかったように感じた。その“関係性”には、何かひどく尊厳を欠いたところがあったような気がするのだ。すべてはインタビュイーのためにある。僕自身についてはなんの重要性も持たない……。そもそも、そうでなければ僕たちはなぜ会っているんだろう? 自分自身を消すことは、必要な取引だったのだ。
その後、他人のインタビューを編集するようになり、インタビュイーの話に自分自身を差し込んでくるインタビュアーを見ては、うんざりすることもあった。でも、アンナ・ハチャヤンにインタビューしたときのこともよく覚えている。インタビューされる彼女自身が会話をもっと対等なものにしようと、僕にも質問をしてきたのだ。そのとき僕は、「これはあなたのためのものだから……僕が何を言うかなんて重要じゃない」というようなことを言った。その言葉を口にした瞬間、自分がどれほどダサいことを言っているのかに気づいた。その後、僕たちが会話をすることは二度となかった。
年月を重ねるなかで、僕は自分の自己肯定感の問題と向き合い、少しずつ解決できるようになっていった。以前、セラピストに話を聞いてもらっていたことがある。彼はセッション中、僕に対して100%集中し、注意を向けてくれていた。でも、セッションが終わった瞬間、疲れ切ったように完全に力が抜けるのだった。あるとき、それはどうしてかと尋ねてみると、彼は「こういうことにはものすごくエネルギーと集中力が必要なんだ」と教えてくれた。今の僕がこういうことをしている感覚もそれに近い。人の話に完全に入り込むことができる、と褒められることもある。でも、実際に自分が何をしているか、もうあの頃の幻想は全く抱いていない。むしろ、きちんと理解したことで、消えてしまわずにいられる自信が少しついたのだと思う。
断酒したとき、僕は12ステップミーティングに通い始めた。そこでは、「どんな状態だったか」「何が起きたか」「今はどんな状態か」という形式で話していく。その何がとんでもないかって、どれだけ多くの人が同じ形式で自分の話をしても、必ず面白いものになったのだ。何かを求める気持ちや変化や発見がある限り、必ず面白いものになるのだ。きっと、依存症から回復しようとしている人たちと、クリエイティブな人たちに共通する部分がそこにはあったのだ。
不思議なことに、僕がもともと惹かれていたのも、まさにそういう物語だった。自分自身の経験を思い起こさせてくれる、誰か別の人の物語。それこそが、僕が伝えたい物語なのだ。
Susan Cianciolo
Sarah Schulman
Nick Rochefort
Negative XP
Ivy Wolk
Genesis Evans
プロフィール
Asher Penn
アッシャー・ペン|アーティスト、映像作家、編集者。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで写真を学んだ後、ストーニーブルック大学で映画の修士号(MFA)を取得。2012年、オンラインメディア「Sex Magazine」を創刊。ニューヨークを拠点に、アーティストやデザイナー、写真家、音楽家など、ポストインターネット時代を彩る多様なクリエイターへのインタビューを通じて、アートやライフスタイルへの独自の価値観を伝える。2020年からはプリント版もスタート。最新号はIssue #16。
Instagram
https://www.instagram.com/ashermixtapehell/
Official Website
https://www.asherpenn.com/
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