カルチャー

いろんな意味でキマること間違いなしの3冊。

9月はこんな本を読もうかな。

2025年9月1日

text: Keisuke Kagiwada

『アントカインド』
チャーリー・カウフマン(著) 木原善彦(訳)

『マルコヴィッチの穴』『エターナル・サンシャイン』の脚本家として知られるチャーリー・カウフマンの小説家デビュー作。だが、ページ数は半端ないし要約は不可能。映画評論家のB・ローゼンバーガー・ローゼンバーグは、ひょんなことから老いた黒人と知り合い、彼が90年かけて制作した上映時間90日の完全自主映画を観る。この時点で「おお……」って感じだが、そこから大量増殖するドナルド・トランプのロボットがファストフードチェーンとおっ始めた内戦などが絡まり合い、事態はえげつない方向へ。とはいえ、小難しいわけではなく、終始笑えるのはBが呟く以下の言葉からも明らかだろう。「スターバックスはお馬鹿な人のためのお利口なコーヒーだ。いわばコーヒー界のクリストファー・ノーランだ」。 ¥15,400/河出書房新社

『7』
トリスタン・ガルシア(著)高橋啓(訳)

 著者は昨今話題の思弁的実在論の地平を開拓したカンタン・メイヤスーらのもとで学び、『激しい生――近代の強迫観念』が翻訳されているフランスの哲学者とのこと。本書はそんな彼が書いた小説……というか、哲学書と同じくらい小説も発表しているらしいのだが、驚くべきことに読みやすい。実際、ドラッグの売人、元ロック・スター、トップモデル、革命家、UFO研究者などを主人公に据えた6つの短編が、やがて不死身の男をめぐる物語へと繋がっていくSF的な小説で、モチーフもポップだし、なんだったらエモ

『スヌープ・ドッグとE-40のお料理教室』
スヌープ・ドッグ、E-40(著)加藤輝美(訳)

『スヌープ・ドッグのお料理教室』の記憶も新しい御大が、ザ・クリックの創設メンバーであり、フィリピンの食などにまつわる会社「Lumpia」を経営するE-40を相方に従えた、ギャングスタレシピ集の第二弾。御大の愛する”ハッパ”にまつわる言及をそこかしこに挿入しつつ展開される料理の数々は、どれもうまそう。特に気になったのは、コニャック入りマッシュポテト。「さあ、デカいサングラスをかけて、エプロンをつけたら、遠慮はいらねぇ、どんどん食おうぜ!」。¥3,630/晶文社