ライフスタイル
【#3】大宇宙と木屑の山
執筆: OKI
2023年4月4日
photo & text: OKI
edit: Yukako Kazuno
バラバラとヒョウが降り雷が空を駆け巡る。スノボは〈DEATH LABEL〉のKinton61シリーズ。板のデザインをやらせてもらった。近頃ではアイヌ文様をスキャンしてコンピューターでサクサク作ったようなデザインが世の中に溢れかえっている。だったら自分はオリジナルデザインしかしないと決め原画は筆で書いた。僕はスキーだけどね。
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遊び道具を横目で見ながらここ1週間は遊びに行きたいのを我慢してトンコリを作っている。カヌーを彫るようにくり抜いていくので材料のほとんどは木屑となる。何かもったいないような気もするが木屑の山を見ると充足感が湧いてくる。木屑すらいとおしい。
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掘り進めていくとだんだんと音のイメージが浮かび上がってくる。イメージに沿って削っていくその音を聞いてるうちに彫刻ハイみたいになる。しかし気がつくと脳内に混沌とした大宇宙が広がり削りすぎて我に返るのだ。YouTubeとかに一切の無駄なくモノを作り上げていく優等生動画があるけど僕のはNGシーンの多発となる。そのNGシーンこそが個性、良い音の秘訣なのだ、と信じている。完成間際のトンコリはまるで孵化したてのセミのように白い。
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ここまではひーこら山を登ってる段階だ。弦を張って音が出るまでこいつの個性はわからない。最後は神頼みなのだ。
プロフィール
OKI
旭川アイヌのOKIは1993年に樺太アイヌの弦楽器トンコリを手にする。トンコリは自ら作り、Made in aynu「アイヌの伝統はアイヌ自身が発展させ楽しむ」をモットーに斬新なサウンドで独自の音楽スタイルを追求している。プロジェクトの一つ「OKI DUB AINU BAND」ではアフリカ、ヨーロッパ、アジアなどで開催される海外音楽フェスに多数出演している。2022年は22枚目のアルバム『East Of Kunashiri / Oki Dub Ainu Band』、2023年3月LPレコード『Amamiaynu』をリリース。
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