ライフスタイル
【#2】春山と仕事
執筆: OKI
2023年3月23日
photo: the_day_photograhy / OKI
text: OKI
edit: Yukako Kazuno
![](https://popeyemagazine.jp/wp-content/uploads/2023/03/image1.jpeg)
ほんの1週間で人間界は完全に春になってしまった。工場での仕事はもう寒くない。新作のトンコリを作り始めた。
トンコリというのは樺太アイヌが主に愛用していたハープ系の楽器だ。一家に一台はあったという。これが不思議な楽器で、村々を荒らし火を放つなどした二人組の男の正体がトンコリだったり、人間の血管を弦がわりにして魔物をやっつける話などが残っている。
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そんなデスメタルなトンコリだが、丸木舟を彫るように作っていく。弦を通す糸巻きの穴は耳、へそもあれば、お尻もある。魂の代わりになる石も入っている。これなら化けて出てくるはずだ。昔のトンコリには黒曜石に矢尻を砕いたものが入っているものがある。特殊なケースだけどどのような意図で入れたのだろうか?
女の体だという説もあるが僕は男トンコリを作ってるつもりだ。毎日弾いているので女だと辛い。美しい音を目指しているけど凍てつく深夜に凍った樹木が張り裂けるような音にしたい。
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30年ほど前にトンコリをライフワークにすると決め今に至ってるが、実はそのトンコリというものは音が小さい、弦が5〜6本しかない、つまりそれだけの音階しかないのでいろんなことができない、細長いのでよく転倒する。突然音が悪くなるなど厄介な楽器でもある。楽器としては欠点だらけだが昔の人の演奏はとんでもなくDOPEだ。
あらゆる意味で先祖には敵わないけど僕のトンコリは武道館も楽勝なくらいの音量を出せる。昔にはなかった新しい技術を使って。今作ってるのは赤エゾマツだ。今回はどんな音になるのだろうか? 妖しい執念をたぎらせながら彫り進める。
プロフィール
OKI
旭川アイヌのOKIは1993年に樺太アイヌの弦楽器トンコリを手にする。トンコリは自ら作り、Made in aynu「アイヌの伝統はアイヌ自身が発展させ楽しむ」をモットーに斬新なサウンドで独自の音楽スタイルを追求している。プロジェクトの一つ「OKI DUB AINU BAND」ではアフリカ、ヨーロッパ、アジアなどで開催される海外音楽フェスに多数出演している。2022年は22枚目のアルバム『East Of Kunashiri / Oki Dub Ainu Band』、2023年3月LPレコード『Amamiaynu』をリリース。
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