TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム
【#4】沖縄食だより 郷土菓子
執筆:アンダーソン夏代
2026年8月2日
沖縄食だより、最終回は郷土菓子です。日本津々浦々、地方ごとにローカルのお菓子があり、中でも私は仏壇菓子が大好きです。仏壇菓子とは、仏壇にお供えする常温保存のお菓子を私が勝手にそう呼んでいるものです。
沖縄は先祖崇拝をとても大事にする土地柄なため仏壇は非常に大きく、 行事のたびに親族が集まってお供え物をし、皆でお参りをします。
そのときに欠かせない仏壇菓子は沖縄独特のものが多めです。では、どんなものが登場するのかごく一部ですがご紹介したいと思います。
「くんぺん」
これは漢字で薫餅と書き、こんぺんとも呼びます。元は中国菓子の光餅の字を使っていたようで、半擦りにしたピーナッツやごま、刻んだ柑橘の砂糖漬けなどのペーストを小麦粉ベースの生地で包んで焼き上げた琉球王朝時代から続く伝統菓子です。非常に素朴ながらも香り高く美味しいのですが、口の中の水分をがっつり持っていかれるので飲み物必須です。日常使いだけでなく、旧盆やお墓参りにも使われます。
「かるかん」
なぜ突然、鹿児島銘菓が登場するのか、と疑問に思われるかもしれません。これには歴史的なつながりがあります。薩摩藩の侵攻により琉球は薩摩の支配下となり、人や物だけでなく、食文化にも深い影響が及びました。かるかんも、薩摩との交流を通じて江戸時代後期から明治時代頃には奄美経由で沖縄に伝わり、現在では法事や清明祭(シーミー)などに欠かせないお供え菓子として親しまれています。一方で琉球から薩摩に伝わった食文化もあります。沖縄では魚のすり身を揚げたものを「チキアギー」と呼びますが、これが薩摩に伝わり「薩摩揚げ(つけあげ)」の由来になったといわれています。こうした食の往来からも、両地域が互いに影響を与え合ってきたことがうかがえます。
「タンナファクルー」
重曹入りの小麦粉生地に黒糖のシロップを練り込んだ焼き菓子です。初めて食べた時は、ひよこのような焼きまんじゅうや、くんぺんの外側だけみたいな印象を受けました。事実、くんぺんが高価で庶民には手が届かなかった時代に、玉那覇二郎という方が餡を入れずに考案したお菓子という説があります。名前の由来は考案者のあだ名である「色黒の玉那覇さん(タンナファ・クルー)」と知った時は、「本当にその商品名でいいの?」と目が点になってしまいました。玉那覇姓のお子さんがからかわれていなければいいのですが。普段のお供え物として使われ、ロイヤルミルクティーやチャイによく合います。
ちなみに内地の方に知名度が高いちんすこうは、地元の方が自宅用に買う機会は今やあまり多くなく、観光客向けのお土産という印象が強くなっています。
他には、レモンケーキや小さなタルト型で焼いたマドレーヌも人気があります。
沖縄では伝統行事の時期になると、こういったお供え物に使うお菓子がスーパーなどのお菓子売り場にセットで並ぶので、ご自宅用にも、ご先祖様へのお供え用にもおすすめです。初めて見たときは、興奮して思わず写真を撮ってしまいました。
と4回にわたり駆け足でお送りしましたが、お楽しみいただけたでしょうか。
こういうエッセイを書いていると、つくづく私は食べることと調べることが好きなんだなあと実感しますし、これからも面白いものを見つけたら皆さんにお届けしたいと考えています。
興味を持っていただけたなら、ぜひ沖縄へ遊びにいらしてくださいね。
ではまた、いつかお会いしましょう!
おまけ
プロフィール
アンダーソン夏代
あんだーそん・なつよ|1974年、福岡県福岡市生まれ。アメリカ南部料理研究家。ノースキャロライナ州出身の夫との結婚を機にアメリカ南部料理に興味を持ち、研究を始める。20年間のアメリカ暮らしを終えて現在は沖縄在住。
著書に『アメリカ南部の家庭料理 』、『アメリカン・アペタイザー』(ともにアノニマスタジオ/グルマン世界料理本大賞準グランプリ) 、『アメリカ南部の野菜料理 』 (誠文堂新光社/グルマン世界料理本大賞グランプリ)がある。最新刊は初のエッセイ『アメリカ南部の台所から』(アノニマスタジオ)
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