TOWN TALK / 1か月限定の週1寄稿コラム

【#4】繊維の研究者×古着屋

執筆:Dumb Store

2026年7月4日

DUMB STORE


text: Mare Fukui, Kohei Kuwada
edit: Koji Teramoto

東大で出会った面白い教授を世に出したいと思い、ポッドキャスト「ファッションを東大する」を始めた。

東大では、理系の学生であっても文系の授業をとらないと進級することができない。

当時の僕は勉強に疲れていて、マジメな授業よりも心から聞きたいと思える授業を求めていた。

桑田教授の美術論がそれだった。

彼は今までの学びを一旦忘れてみることが大事だと教えてくれた。
「娘が学校の宿題で書く詩が年を経るごとにつまらなくなっていった」という教授の話はなぜか人ごとには思えなかった。
こんなことを言う教授がいるんだと嬉しくなったことを覚えている。

期末テストが近づいてきた1月のある日、教授は東大出身のファッションディレクターを授業に呼んできた。
「哲学をやりたいなら哲学者研究ではなくて哲学をしろ。
ファッションがやりたいならファッション研究ではなくファッションをしろ。」

すごく腑に落ちた。

大学の授業で初めて質問をした。
「自分はアパレル業界に関わっていきたいんですけど、、繊維の研究者とかどうかなって、、、」
「何が好きなの?」
「古着屋に行くのが好きです」
「いいね、どっちもやればいいじゃん」

この簡単な会話で繊維の研究者兼、古着屋をやろうと思った。
ITじゃなくたって起業しても良いはずだ。
古着屋をやっている東大生が一人でもいれば、『東大を出てもこんな生き方があるんだ』と思って、単純に自分の好きなことを仕事にする人が増えるかもしれない。

たくさんの頑張っている人と出会い、日々刺激をもらっている。
桑田教授、東大出身のデザイナー、同い年の古着屋オーナー、服を作っている友達、雑誌を作っている先輩たち。
次は自分が周りに元気をあげる番である。

あと、自分は将来繊維の研究者として環境に良い繊維を作ろうと考えている。
これは理系として、自分にできることだと思う。
ファッション産業は環境を破壊している産業として名高い。
アフリカには宇宙から見えるゴミの山があると聞く。
安い服の裏には犠牲になっている地球がある。

自分、友達、地球、服。
全部大切にしたい。

文・福井磨亜怜

教授の研究室


なんと嬉しいお話でしょう。私がマーレ君に言わせたわけではありません。
そして、娘の名誉のために言えば、のちに彼女は作文で賞をとるほど文章を書くことが得意になりました。でも、幼い頃、ひとふで書きのようにオノマトペを駆使して自由に詩を書いていた彼女が--その詩は本当に大らかで気持ちのよいものでした--、数年後には、形式を気にし、どんなテーマがよいかを考えるようになったのを見て、少し寂しくなったのを確かに覚えています。それが「学校」というものなのでしょうけれど……

さておき、研究者ではなく大学外のさまざまな現場から人を連れてくることは、以前より意識的にやっていて、それがこういう思いもよらない形で、若い人に影響を与えたことに感動している。すぐれた専門家は学校の外にもたくさんいるので、私の役割は、「ダムフォン」のように、ただ学外と学内とを、人と人とをつなぐこと。もちろん、学内の教育や研究もがんばります。

みなさん、今後のDumb Storeとマーレくんをどうぞよろしく!

文・桑田光平

インフォメーション

【#4】繊維の研究者×古着屋

ファッションって、何なの?

東大の授業でファッションを学んだ学生たちが、疑問をぶつける夜。デザイナーの大月壮士・村上亮太、フォトグラファーのローカルアーティスト(河原)を迎えたトークイベント「ファッションって、何なの?」が、7月15日(水)に東京大学駒場キャンパスで開催される。入場無料・予約不要で、東大生以外も大歓迎。18時30分スタート。

プロフィール

【#4】繊維の研究者×古着屋

福井磨亜怜

ふくいまあれ|2004年生まれ。東京大学在学中。2025年「東大をオシャレにする」というコンセプトのもと古着屋Dumb Storeをオンラインでスタート。これまでに2回のポップアップを開催している。桑田光平教授とのPodcast”ファッションを東大する”は毎週金曜日配信中。

instagram
https://www.instagram.com/dumbstore_tokyo/

podcast
https://open.spotify.com/show/4khnhqdmn5bR1qmQRCYEgk?si=16857fc19c204da3


【#4】繊維の研究者×古着屋

桑田光平

くわだこうへい|1974年生まれ。東京大学教授。パリ・ソルボンヌ大学大学院博士課程修了。フランス語圏の近現代文芸が専門。教育や建築文化に関する官民との共同研究にも従事。文化庁・建築文化フェロー。興味のおもむくまま研究しながら、ヒトやモノとの出会いに巻き込まれ、身を任せながら漂流する日々。2025年4月からPARTNERS STUDIOにエディター/アドバイザーとしてジョイン

Official Website
https://www.partners.studio