カルチャー

世界の見え方が一変するかもしれない3冊。

11月はこんな本を読もうかな。

2025年11月1日

text: Keisuke Kagiwada

『都市のリズム 旅する音楽、人、街の物語』
石橋純、伊藤嘉章 (編著)

 異質な人やものが交差する都市では、さまざまな音楽が生まれてきた。本書はそんな都市と音楽文化の関係を掘り下げるエッセイ集。様々な書き手が世界各国の街を取り上げつつ、それぞれの個性を探求する。PARAKEET CINEMA CLASSでお馴染みの廣瀬純さんが担当した、フランスの港町ナントと映画監督ジャック・ドゥミの音楽をめぐるエッセイは必読だ。¥2,640/鹿島出版会

『ポスト68年のエチカ 哲学・政治著作集II』
市田良彦 (著)

 闘争的な社会思想史家の著者が、40年にわたって書き継いできたテクストの集成。刺激的な論考が盛りだくさんだが、中でも注目すべきは矢作俊彦&大友克洋による漫画『気分はもう戦争』を革命の書として読み抜いた「なにが「気分」か?」。自分には縁遠い話だと思うだろうか。しかし、この漫画のタイトルが70年代末のポパイの「気分はもう夏」特集のパロディだと知れば、読まずにはいられないはず。¥3,960/航思社

『ヒッチコックをさがせ! 
超近接的映画鑑賞(トゥークロース・ビューイング)のすすめ』
D・A・ミラー (著)佐藤元状(訳)

 ヒッチコックについての本は一生かかっても読みきれないほど巷に溢れているんだから、もう何か新しいことなんて言えるわけがない。そんな後ろ向きな発言に対し、著者は毅然とNOを突きつける。実際、DVD視聴によって、スクリーンで観ていたら見逃すしかない数々の細部を発見することで、全く新しい作品像を浮かび上がらせる手捌きは唖然茫然騒然。時代は、倍速視聴ではなく、倍”遅”視聴だ! ¥3,520/慶應義塾大学出版会