カルチャー

今月発売されるポパイ映画特集の副読本にしたい3冊。

11月はこんな本を読もうかな。

2024年11月1日

text: Keisuke Kagiwada

『ミュージカル映画が《最高》であった頃』
喜志哲雄(著)

日本を代表する演劇研究家が、黄金時代のミュージカル映画について語り明かした一冊。ページを繰るごとに蒙を啓かれるが、とりわけ当時を代表するスターであるフレッド・アステアとジーン・ケリーについて、前者が「限定的な空間」を好んだのに対して、後者は「無限定の自由な空間」で踊ることを好んだという指摘には、目からウロコが1000枚くらい落ちた。『ストップ・メイキング・センス』でデヴィッド・バーンがアステアのダンスにオマージュを捧げた理由を、この線から考えてみるのも楽しいかも。¥3,300/国書刊行会

『日本映画の「働き方改革」 現場からの問題提起』
深田晃司(著)

映画を観ることは楽しい。しかし、その楽しさが、誰かの労働力の産物であることは忘れちゃいけない。今、ハリウッドで巻き起こった#metoo運動が邦画界にも波及し、様々な意味で問題含みの労働環境を見直す機運が高まっている。本書はその流れを率いる深田晃司監督が、自身の経験に立脚しつつ、よりよい映画業界を目指す上での提案を綴った一冊だ。誰かが言わなきゃ何も変わらない。そんな覚悟が滲む言葉の数々は、業界関係者だけでなく観客も受け止めるべし。ふたたび「映画って本当にいいものですね〜」と心の底から言うためにも、ね。¥1,210/平凡社

『黒帯の映画人 柔道と映画に捧げた人生』
ティエリー・フレモ―(著) 山本知子(訳)

ティエリー・フレモ―とは、2007年よりカンヌ国際映画祭総代表を務め、リュミエール研究所で“映画の父”ことリュミエール兄弟の作品の保存と初期のシネマトグラフ映画の復元に長年携わる生粋の映画人。近年はそんなリュミエール兄弟の多岐にわたる作品をひとつにまとめた『リュミエール!』シリーズの監督としてもお馴染みだ。しかし、その彼が幼少期に柔道に打ち込んだ黒帯保持者だったとは知らなかった。本書はそんな柔道をはじめとするスポーツと映画への愛が語られる自伝的エッセイ。故ゴダールはテニス好きとしても知られたが、映画と同時にスポーツも愛するという姿勢はフランスで定番なのか?¥3,960/カンゼン