ライフスタイル
まだ見ぬ逸材や文化を伝えるサーフィンショップ「スタニングフォイル」がオープン。
東京五十音散策 下丸子④
2024年10月20日
photo: Keisuke Fukamizu
text: Toromatsu
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「し」は下丸子へ。
懐かしさが残る商店街があり、洗濯の歴史資料館もあり、昭和のくらし博物館もある。そんな古き良き街・下丸子を歩いていると、違う角度でクラシックな雰囲気を放つショップが目に留まる。レンガ造りのマンションテナントのショーウインドウに映るのは〈ハーマンミラー〉のシェルチェアに、ヴィンテージ・サーフボード、古着のTシャツやシャツも。
中に入ると、アースカラーのピカピカのサーフボードが大量にラインナップしている。本場カリフォルニアから届いたばかりの新作たちのようだ。「海外のナウなサーフカルチャーに詳しい人でも、意外と知らなかったり、見たことがないボードが多いんじゃないかと思います」と教えてくれたのは店主の藤本浩一さん。尋ねるとお店は今年の4月にひっそりとオープンしたばかりで、まだまだこのあたりのサーファーにさえ存在を知られていないという印象だった。
藤本さんは、約30年もアパレルの企画・生産業を仕事にしてきたが、長年趣味だったサーフィンにもっと浸りたいとこの店をスタート。店を始めるまでは身を潜めたサーフボード・コレクターで(本数は差し控えるが倉庫を要していたほど)、新旧問わず国内外のあらゆるサーフボードビルダーの特性を研究する日々に明け暮れていたという。周りに見られるから、と所有している自慢の‘70年式アルファロメオ・ジュリアにボードを積むことはなく、海に向かうときは違う車でいつも人っけのないスポットへ。いくら凄い趣味人でも“目立ちたがらない側の人間”の開業となれば、普及も簡単ではなさそうだ……。
「まあじっくり浸透していけばいいと思っています」と笑っていたが、はっきり言ってサーフィン業界はめちゃくちゃレッドオーシャンだ。でも藤本さんいわく、これだけの情報社会でもまだ日本に伝わっていないボードビルダーのユニークなシェイピングがあるし、そんなサーフボードが味わわせてくれるまだ見ぬ乗り味や景色があるのだそう。ちなみに扱っているサーフボードレーベルは〈マスト〉に〈ワイアット・ペンダー〉、〈ミカベイツ〉、〈メスレス〉など。無論、これらは日本初の取り扱いゆえ、国内での認知度は極めて少ない。
サーフボードは言わずもがな大枚を覚悟しなくてはいけないが、藤本さんの長年集めてきたユーズド・サーフボードが良心的な価格で売られているから、日頃からリーズナブルかつ上質なオルタナティブボードを探している人はかなり狙い目。〈マスト〉のハンドシェイプスケートボードや、アメリカ買い付けの古着、現地の様々なステッカーも販売されていて、サーフィンと関係なく気になるものがいっぱいあるのも嬉しい。
巷で顔の知れた存在でもなければ、何かを発信してきた人物でもない。しかし世の中には、知られていないけど凄い人のほうがむしろ多いのかもしれない。それを代弁するかのような隠れたマニアが、これまた意外と知られていない凄い人を発掘してくるこのショップ。視界に入りやすい情報だけがすべてじゃない、と考えるエッジィなサーフボーイにこそぜひ訪れてもらいたい。
インフォメーション
STUNNING FOIL
’60~’70年代のショートボードレボリューション期に生まれたサーフボードデザインを探求する2024年誕生のサーフショップ。その文化から派生したオルタナティブカルチャーのハンドシェイプボードを中心に輸入し販売。珍しさよりも、理論が伴っているサーフボードであることを条件に取り扱う。前述したレーベルの他、有名どころでは〈キャンベルブラザーズ〉もラインナップ。凄腕ビルダーのサーフボードが常備100本ほど揃う。
◯東京都大田区下丸子1-6-20 月・火休
Instagram
https://www.instagram.com/stunning_foil/
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